閑話休題 長めのひとりごとだよ | 婦人科備忘録

婦人科備忘録

ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ウェルカムですが
最近ご質問内容が
すでに記事になっていることが多くなってきました。
お手数ですが、まずはブログ内をご検索ください。

大学時代、私の先輩が

「まるぽこ。ちゃん、ムンテラって知ってる?」

「知ってますよ、患者さんへの説明でしょ」

「違う違う、語源のほう。ムンテラって

 ドイツ語でムーンテラピー、つまり口(ムーン)での

 治療(テラピー)なんだよ」

と教えてくださった。

 

あれから30年・・・(きみまろ風に言ってみて)

 

その先輩は整形外科に

行ってしまわれたがお元気であろうか。

日本の医療は英語とドイツ語が

入り乱れております。歴史だね。

 

さてなぜだかわからないが

最近、主治医や執刀医に酷い目にあった、的な

マダムの怨嗟のお声をよくいただく。

 

ギョーカイの舞台裏を隅々まで知っている私は

マダムの辛さもさりながら

どこがどう誤解であったのか

どうすれ違っていたのか

医療側の都合や事情もある程度、わかっちゃうため

ああ、ここでしくったな、ここが分岐点だ!

的なバーチャル体験をし、身に染みて地味につらいです。

振り返ると、わたしも試行錯誤の連続だったし

今もそう。ずっと修行。

 

マダムたちに恨まれているタイプの医者を考察するに

そういった不逞な輩が持つ傲慢な考え方に

「手術さえうまけりゃ患者が治る」・・てのがある。

 

確かに手術はできた方がいいし

うまけりゃうまいにこしたことはないんだけど

電化製品と違って

ニンゲンはその部分だけ治したところで

元気にはならない。無念

 

例えば糸結び

縫合に使う糸を結ぶ時間が短いと

それだけ手術時間が短くなるので

せっせと皆、それだけ練習しちゃう。

特に駆け出しのひよこたちは

糸結び、うま~い!イコール手術がうまくなった

と錯覚する。

 

ところが、私の師匠に関して言えば

糸結びがあんまうまくないしそう早くもない。

(本人に言ったらマジでキレそうだが)

でも、確実にきちっと結んで決して緩まないうえ

術中の判断が的確で迷いがないので、

結果的に手術時間はチョー短い。

で、患者さんが治る。←ここ大事。

どんなに手術が上手でも

どんなに傷跡がきれいでも

もともとの目的

(=患者さんがその症状から解放される)が

達成できていなければ、

なんのための手術かわからんじゃん。ね?

 

もちろん、手術が手順通りにきちんとできる、ってのは

最低限の要件なんで、ここらへんができていない人は

それ以前の問題ですけどね。

でも、たぶん、マリオカートがうまい高校生なんかに

そういう手技を教えたらきっと

私なんかよりすぐに上手になること請け合い。

令和の時代、新人類しか勝たん。

 

手術の手技なんて、所詮、そんなもんです。

あくまで、単なる手段。

 

ほんとうは、医者を医者たらしめているのは

ムンテラですYO!

 

持論を展開すれば

人と人とのつながりは

テニスのラリーによく似ている、と思います。

いやま、卓球でもバトミントンでもいいんだけど。

ちょっと想像してみそ?

 

相手とラリーを続けたければ

変なコースや微妙なラインに球を打ってはいけない。

スマッシュを打ったら

打ち返されたときこちらのコートに

強い球が来るかもしれない。

不意打ちをしたらラリーが

終わってしまうかもしれない。

愛のラリーを続けたければ、相手が取りやすく

そして心地よいボールでなくてはならない。

 

そして、何より大事なのが

 

相手のコートにある球を

自分が打ちに行ってはいけない

 

うっかり笑っちゃった人がいると思う。

 

でも、リアルな医療の最前線では、

頭がいいと自認しているはずの人こそ

相手が球を打ち返すことを待たずに

コートを乗り越えて自分で打ちに行っちゃう。

で、自分の番のボールに間に合わない、というね。

不親切で不届きな医者にはこのタイプが圧倒的に多い。

相手の反応(=ボール)を待たずに

マダムの行動を

「読んで」「勝手に解釈して」

「決めてかかって」るんだYO

だから腹が立つんだYO

 

若いころ、術後のマダムが痛い、治りが悪い、言うたら

まるで「手術がへたくそだったから」

と言われているみたいに落ち込んで

たぶん、自分を守るために

そんなはずない、ちゃんとできた、

マダムの体の問題や!

と過度に反論してたような気がする。ダメなこ。

だってマダムはまだ「へたくそ」言うてませんやん。まだ

ボールがこちらのコートに帰ってきてないのに

スマッシュ打ちに走ったケースね、つまり。

 

違うんだよーマダムは責めてんじゃないの。

痛いっていう事実を言っているだけなの。

助けてほしいだけなの。

痛いんだね、不安だね、でも治るよって

言ってほしいだけなんだよ、今。

生き物だからねえ、ニンゲンは。

描いたシナリオ通りいかないこともあって

そこが生きてるってことなんじゃん?

よって

「そっかー痛いんだ?

 治るまで一緒にがんばろうね!」

が正解。

 

・・・ってことが、

随分おとなになるまでわからなかった。

件のマダムを苦しめている

某医者たちはそこらへんがまだ

体得できていない、それだけなのかもな

…と感じております。

だからといって

マダムをひどい目に遭わせていることに対しては

なんの言い訳にもなりません。お許しを。


ただ、このギョーカイに長く棲息していると

実感することが一つあって

不思議なことにムンテラを十分重ね、

このマダムの気持ち、しとめた!ハートわしづかみ!!

と確信したマダムは治りが早いし、

後々何事か異常な経過になったときも

こちらを心底信頼してくださっているので

いち早く治療に取り掛かれて、

よって改善も早く後遺症も残りづらい。

最終的にありがとう、言えた人は最も予後が良くなる。

 

なぜか?

 

心に響く言葉は人を動かす。

ついでに免疫のシステムも動かす。

これよ。これが理由よ。

 

どんな名医もマダムの免疫システムが

正常に作動していなければ

ちっこい創の一つも治せない。

きっと信頼関係が揺らいだ時点で

その手術は失敗に終わる。

だって敵はマダムの免疫システムよ?

勝てるはずないじゃん、たかが人間なのにさー。

おこがましいよ。自分が治してやった!だなんて。

マダムの免疫システムが治すんだYO

 

そして

すでに耳タコでしょうが

人生は捨てたもんじゃなく

マダムが思い込むほど悪くない。

 

一時、不運にも意地悪で不届き千万!な

医者にあたったかもしれないが

それは長く続くマダムの人生の

たった一コマに過ぎない。

そやつを叩きのめして土下座させた後、何が残るの?

すかっとするかしら。

相手が死んだら、胸がすくかしら。

 

ちがう、と思う。

 

心優しいマダムのことだから

きっと後味が悪くなるだけ。

ちょっとだけしてやった!て思うかもだが

その後しまったなーって思うよ、きっと。

 

それに掛け違えたボタンをはずして

最初から止めなおせたとしても、

時間は誰にも巻き戻せない。

よってマダム、あなたの尊厳も元通りにはならない。

 

できれば、恨みつらみに身を任せるより

高潔な方、いじらしい方、美しくそして光ある方へ

そのエネルギーを向けることが

実は世のためひとのため

ひいては自分のためになるんじゃないかな。違うかな。

 

ご機嫌な方が免疫システムもよく働くことは確かなので

いっちょ挑戦してみてください。

不届きな医者に尊厳回復を任せてないで

マダムご自身でマダムの尊厳を取り戻すことを。

自分で自分の免疫システム、いい方に動かすことを。

 

あんなひどい医者を野放しにするんか?て

またクレームが来そうですけど

このギョーカイも捨てたもんじゃなくて

ある程度の自浄作用がある、と信じる。・・・信じて?

心ない医者も確かにいますが

心ある医者も割といる・・・よ?

ところでなにこの自信なさげ。がんばれ自分

 

私も心にいつも死ね死ねノートがある女なんで

人に偉そうに言える立場じゃないが

私の師匠のように

一生許さん!

といった相手の名前をなんだったっけ?あれ?とか

うっかり忘れちゃうくらいのボケ具合の方が

これからの人生が実り豊かになる気がしてなりません。

 よかったら、一意見として参考にされてくださいね。

お気に召さない場合はスルーでOK牧場。

 

 

*この文章、めちゃくちゃ推敲して

 時間がかかり、なのに上げるかどうか迷いに迷って

 でももったいないのでUPしちゃいます。

 場合によっては消しちゃうかも。

 なので急に削除されてても

 驚かないでくださいませませ。

 お辞儀