婦人科便り177 ベッドコントロール | 婦人科備忘録

婦人科備忘録

ある婦人科医の独り言です

悲痛なお便り来た。

先に全国の産婦人科医を勝手に代表して

心からの謝罪をしておく。すんません。

 

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Q.

40代前半、独身、子なしで子宮全摘しました。
産後の患者さんと二人で同室になりました。
子宮全摘と産後の人が同室ってよくあることですか?
病院は個人のお気持ちになんて

構ってられないものでしょうか?

 

A.

ごめん、構ってられない。丁寧に土下座。

クレーム入れずにえらかったね!

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言い訳を言わせてもらうと

お部屋決め、つまりベッドコントロールは

その病棟の師長さんが行うことが多い。

すなわちナイチンゲールの仕業である。

 

ナイチンゲールなら配慮するやろ思うでしょ?

ちがう

ナイチンゲールの同情と敬意は

基本的には「弱きもの、か弱きもの」

に捧げられておる。

赤子、妊婦・褥婦、がん患者などなどが

そのカテゴリであり

未婚女子で子なしがんじゃないマダムなど

弱いうちに入ってない。

社会的には成功している人も多いし

税金も滞納していないうえ礼儀正しく

清くただしく美しく、姿勢もたぶんよく

これっぽっちもクレームをつけず

若いナースにも笑顔で対応。なんの問題があろうか?

よって、「ちょっとくらい、ええやろ。大人やし。」

と押しのけられがち。

 

かつて私の同僚で、

独身未婚女子で子なしのハイパー女医が

子育て真っ盛りのふわふわ女医に

「児童手当もらってんじゃねえよ」と暴言を吐き

ふわふわ女医が

「子育て大変なんだよ

 児童手当はわが子貯金にしたってええやんー」と号泣

仲裁が大変だったことがある。ちっさい事件

おまえら仲間割れすんな的な。

 

隣の芝生は常に真っ青であるため

いちいち他人の「すん」ってなってる状況なんて

考えやしない人が多いんである。

 

ただ、私がその後「すん」ってなったのは

くだんの独身未婚女子で子なしのハイパー女医

めでたくご結婚後即、懐妊し玉のような赤子を産んで

もれなく児童手当を懐に入れていたからだ。おまえ~怒

 

言っとることと

やっとることが

ちがうやないか~い!!絶叫

 

まあ、得てして世の中は理不尽で

勧善懲悪などは

きちんとシステムとして整っていないので

ある意味

「ごねたもんがち、言ったもんがち」になりやすい。

 

ほんとは何にもクレームをつけず

理不尽に耐えている人にこそ

配慮や思いやりを向けるべきなんだけど

かつて去っていった元カレが

「あの子は俺の支えが必要だけど

 君は一人でも大丈夫でしょ」

と捨て台詞を言ってきたように

世間というものは我々優良納税者の立場など

ちいとも考えてくれやしないのである。

んなはずあるか、と心底腹が立つ。

誰しも弱い人間であり、広く温かい膝にすがって

よよと泣き崩れたいときもあるだろう、ということが

ちょっと考えてみれば

たやすくわかるというに。

 

・・・んが、私調べでは

そういった高潔な我慢や人へのリスペクト

「あの人もきっと事情があるんだろうし」

という奥ゆかしさは

人生をトータルで見てプラスになっていく。

どうしてもつらい時は立ち向かうことも必要だが

見ている人は見ている。

気が付く人は気が付いている。

あなたのその頑張りが

次の誰かの頑張りを支えるはずなので

もうひと踏ん張り社会貢献を頼みたい。

 

ただ一言添えるならば

産後のおかーさんからは

幸せホルモン・セロトニンが全開で出ており

同室になったマダムにも多少のご利益はあったはず。

少しでもセロトニンを嗅ぎ、吸収し

次なるステップに活用してほしいところであります。拝

 

私も嗅ぎたいよ、セロトニン。くんくん