さて、明日はいよいよ
医師国家試験が開催される。
どれくらいたまごが読んでくれているか知らないが
応援メッセージを送りたいと思います。
なぜ医者になるのか?
という質問に明確な回答がある医師は少ないと思う。
人は何もドラマチックな理由がなくても
実に即物的な理由でもちゃんと道を選べる。
医者になったら給料や身分が保証されると信じて
医者になることを志したものもいるだろうし
親が医者だから、後継ぎだからと選ぶ人もいるだろう。
単純に白衣を着た姿がかっこいいから、も「あり」だと思う。
私の同級生なんか小首をかしげて
「・・・ん?偏差値が合ったから?」
とか抜かしていたし
ついうっかり医学部に入っちゃったYO、
な~んて人もいるだろう。
医者になる理由は実はどうでもい~んである。
高い志があれば幸いだけど
なくてもちゃんと医者にはなれる。
ふつーのことをふつーにこなせれば
ある程度お役に立てるセンセになるだろう。
が、しかし
どんなに俗な理由で医者になろうとも
きっとあなたたちは大きな倫理の壁にぶつかる。
助けたいのに助けられなかったり
受け入れられない理不尽なことや
神様が意外に不親切で、しかも悪平等であることも
健康や命にもお金がかかる現実も
あなたたちの行く手に立ちふさがるだろう。
もしかしたら今まで触れたことのない、
この国の闇を覗くこともあるかもしれない。
他の職業と同じように
辞めたい、つらいと思うことも
きっときっとあると思う。
セクハラパワハラ上司も
ずるい先輩や同僚も
性格の悪い患者も
仕事をしないで邪魔してばかりのコメディカルも
一定数、この世には存在する。
人間だものbyみつを。仕方ない。
でもでも
世のため人のため医者になる!
目指せブラックジャック!
な~んて強い意志がないあなたが
そんな理不尽に負けずに医者であろうとする理由にも
きっと出会えると保証する。
私が自分が医者であると痛烈に自覚したのは
実は医者になって1年目の終わりくらいだった。
産婦人科の医者は会陰縫合が
ある程度できるようになったら
お産のバイトに駆り出されることになっていたので
その日は「初めての産直(分娩当直)」だった。
お産ですよ~と呼ばれて、内診したら
先進部が頭じゃなくて、
むっちりしたおちりだったんですよ。
つまり骨盤位ね。
それまで頭位の分娩しか取り上げたことがなくて
めっちゃ動揺しちゃってですね
緊張のあまり半分べそかいてたら
一緒についてくれていた
ベテランのおばちゃん助産師さんが
「せんせ、しっかりして!
今、この病院には先生しか医者がおらんけん!」
って一喝したの。
はっとしちゃったね。
そうか、ここで自分は唯一の司令塔で
誰かの命をはっきり預かってんだ!!って。
分娩台の後ろの古い木机の上に
「エッセンシャル産科学」という教科書の
骨盤位の分娩介助というページを開けて
それを見ながらイメージトレーニングして
さっき電話で呼んだ、指導医のせんせ、
はよこーーーいとか念じながら
取り上げましたよ
生まれて初めての逆子ちゃんを・・・
ベテランの助産師さんが、
「せんせ、思いっきり引っ張って~
いくよ~~~はい、気合いれて~~今引く!
力いっぱい!!」
無我夢中ですよ、こっちはね。
力いっぱい引く、とか無理難題もあったもんじゃない
運よく赤ちゃんもお母さんも無事で
指導医はあとから大丈夫だった~?とか
間抜けな感じでやってきましたけど
そりゃもう、大変で、強烈で、
しかも幸福な経験でした。
あの日、命を預けてくれたお母さんも
すごく不安だったと思う。
今考えると無茶苦茶な医療で、
許せない!とすら、思いますけどね。
遠回りかなと思った道が、実は一番の近道で
外せない梯子の一段だったってことは
それからずっと繰り返しやってきました。
でも想像してみて。
誰かのお役にきっと立てるという、
そのめまいを覚えるような幸福を。
誰かを助けた!という達成感の明るさを。
その倍くらい、
無力感や脱力や理不尽も経験すると思うけど
100回に一回くらい
大ホームランをすかっと打てるよ!
誰かの人生のドラマにあなたは颯爽と主治医役で登場し
主人公のピンチを鮮やかに救う。約束する。
とりあえず明日の試験、がんばって!
いつかどこかで同じ目線でおめもじできますように。
来たれ若人、(特に産婦人科で)よろしく頼む。
婦人科 まるぽこうさぎ。拝