婦人科便り165 麻酔で何か変なことを口走ることってありますか? | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

さて面白いネタ提供ありがとうございます。

こういうネタを中心に

展開していきたいですなー辰年。

多忙な外来では聞くのが憚られますもんね。

面白いけど

 

 

Q.手術のとき麻酔で意識を失う寸前に、

 何かを言ってしまう(深層心理の本音っぽい)

 という話は本当でしょうか?

 

A.最近は麻酔導入剤の切れ味が鋭いせいか

 みんなす〜ぐ寝ちまうだよ。安心してくだせい。

 

泉鏡花「外科室」

恋しい人の名前をうっかり口にしてしまわぬよう

無麻酔で手術を受ける貴婦人・・・!エロすぎて鼻血。

文章が格調高く文語体なのがまた、たまらん。

しっかし源氏物語といい、この「外科室」といい

ある意味エロ小説が堂々と教科書に載ってしまうのは

古語・文語のなせる技なのかのー

かの与謝野晶子氏は源氏物語を

官能小説と評しておられたようで

私も激しく同意であります。

乱れ髪が破廉恥なら源氏物語はもっと破廉恥。

 

おっと興奮して話がそれた

(いつものことだが)

興味があられる方は読んでみてたもれ。

まあ、TSUTAYAで培った破廉恥に慣れている人は

あまりエロく感じないかもしれないが

エロさを感じるためには想像力を

駆使する必要があることを付け加えておく。

モザイクかかってる時も必要でしょ、想像力。

ちなみに津田塾創設者の

津田梅子氏はこの源氏物語を

エロ小説認定してたらしいYO。

 

こんな妖しくも美しい

小説のようなことは起きたらいかんし

プロとしてはできるだけ

術中の内容は知らないでいてほしいところ。

ありがたいことに、大抵は麻酔科のセンセが

「今からお薬入りますよ〜」

という号令直後、秒でマダムは

眠っておられるようです。

そもそも術中に真面目な話などしておらんし

私が黙って作業している時は大出血している時か

もしくは何か怖いホラーなことが起きている時。断言。

和やかに馬鹿話をしているのが一番平和です→術中

たまに「私、麻酔が効きにくいらしくて」

と言うマダムおられるが

大丈夫、ゾウでもすぐ寝る。

 

私が好きだなあと思うのは

麻酔から覚醒して一番初めの

マダムたちの言葉が大抵

「・・ありがとう、ございまし、た・・・(絶え絶え)」のところ。

麻酔冷めやらぬ時に言う言葉に嘘はあるまい。

なんて美しい感謝の言葉。

どんなに出血しても

どんなにど癒着していても

どんなに術前、無礼千万、嫌味なマダムで

性格も顔面も悪くても

全てを許しちゃうYO。

魔法の言葉、「ありがとう」

 

冗談はさておき

麻酔薬で秘密を口走っちゃったらどうしよう

と手術をためらう美しい貴婦人たちよ

きっと麻酔科の手練れがものの数秒で

ガッチリ寝かせてくれます。まるで麻酔銃。

あんな破廉恥もこんな破廉恥も

口走る隙は与えないので

心配ご無用、ってことで。