さて、ここまで“天璽瑞宝十種(あまつしるしみずたからとくさ)”について考えてきたが、
ここで話をニギハヤヒに戻そう。

僅か八柱の随伴神と共に九州の辺境に降臨した“弟”ニニギと、
大軍勢を従えて最初から畿内・大和に降臨した“兄”ニギハヤヒ。

おそらくは、ニギハヤヒがアマテラス~アメノオシホミミの嫡流だったのだろう。

この二つの勢力は、時を経て相間見える事となる。

“弟”ニニギの曾孫・カムヤマトイワレビコ(神武天皇)と、
“兄”ニギハヤヒの義兄・ナガスネヒコという形で。
律令国家の認める正史たる日本書紀では、
この時、お互いに御神宝を見せあい、相手が本当に高天原から降臨した勢力であると認めあっている。
故に、どちらも少なくとも“偽者”では無かったと判断して良いだろう。

そして、ニギハヤヒの義兄・ナガスネヒコは、戦闘に於いてはカムヤマトイワレビコを完全に圧倒し、一切負けてはいなかった。

にもかかわらず、ナガスネヒコは、
日本書紀ではニギハヤヒに、
先代旧事本紀ではニギハヤヒの息子・ウマシマヂに斬られてしまう。
まるでニギハヤヒやウマシマヂに裏切られるような形となっている。

問題は、この時、何故ニギハヤヒ或いはウマシマヂは
カムヤマトイワレビコに神宝十種を差し出して臣下の礼を採ろうと判断したのかだ…。



歴史は常に動いている。