塚原卜伝三回目の修行の旅が終わりに近付きつつある時、
一つの事件の報が届いた。

1565年5月19日
“一の太刀”以外の卜伝の剣技全てを吸収した室町幕府将軍・足利義輝が、
松永久秀に討たれたというのだ。

三好長慶の死後、幕府権力の独占を目論んだ松永久秀の謀叛、世に言う
“永録の変”
である。

足利義輝は、千余りの軍勢に対し、
僅か十数名の供回りと共に戦い、
たった一人になっても卜伝から学んだ剣を存分に振るい、奮戦したという。

なかなか義輝を討ち取れなかった松永勢は、足軽の槍衾を押し出しつつ、弓や伝来したばかりの鉄砲まで持ち出して、
ようやく仕留めたと言われている。

目の前の敵を倒す剣技にのみ目を奪われたが為に、“一の太刀”伝授までは到らなかった弟子・足利義輝の壮絶な最期を聞いた塚原卜伝は、
何を思ったのだろうか…。


歴史は常に動いている。



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