戦場の暗黙の了解

平安末期、武士の戦場での暗黙の了解として、
“非戦闘員には手を出さず”
というガイドラインがあったと聞く。

戦場に非戦闘員がいるわけがないと考えがちだが、実際はかなりの数の非戦闘員がいたのだ。

例えば、海戦における舟の漕ぎ手は、その日の為に金で雇われた地元漁師であったり、
陸戦であれば、馬から下りての白兵戦になった場合、馬を引いて後方に下げる役割は、やはりその日の為に金で雇われた地元民であったという。

関東以西の戦場では、“彼等は戦闘員に非ず”という事で、攻撃対象にはなり得ないのが当たり前だった。

しかし、奥州で特別待遇で育った義経は、それを知っていながら大して気にしなかったのか、本当に知らなかったのかは解らないが、平家との戦いでは非戦闘員を次々に狙ったという。

海戦で漕ぎ手を狙えば、舟足は落ちる。
陸戦で馬引きを狙えば、鎧武者が下りた後の馬が暴走し大混乱になるだろう。

きっと戦場でそんな事をしている義経を見た人々は、敵･味方を問わず、
『アイツ、何やってんだ！？』
と、驚愕したに違いない。

これは連戦連勝して当然である。
おそらく、源･平問わず、皆、固まったのではなかろうか。
そんな中、義経一人が悠々と非戦闘員を斬り倒して行く…。

有ること無いこと告げ口ばかりするというイメージが定着している梶原景時は、もしかしたら事実をありのまま鎌倉に伝えただけなのかも知れない。

アナタは通説以外の可能性を想像した事があるだろうか？


歴史は常に動いている。