朝豚屋に行くと、上田くんがニヤニヤしながら寄ってきて言った。
「和也わかったぞ。」
「何が?」
「何がって、あのじいさんとばあさんや!」
あの謎の老夫婦の素性がわかったと言うのだ。僕も興味津々で聞いた。
「何者なん?」
上田くんは、周りに誰もいないのに急にひそひそ声になり、勿体ぶったように言った。
「あのじいさん詐欺師やぞ。」
「詐欺師!?」
「せや、詐欺師や。企業に税金を節約するマニュアルを買うてもらう詐欺師や。」
「??」
中学生の僕には、詐欺師が実際に何をしてるのかも、税金を節約できるということも、何が何だかちんぷんかんぷんだ。
「じいさん京都で顔がわれてるから、今は三重県まで行って詐欺しとんねん。」
「へー」と言ったものの、僕にはあのじいさんがそんな悪いことをしている人にはとても思えなかった。
しばらくすると、あの優しそうなおじいさんが出てきて、にっこり「おはようございます。」と言うと、車で出かけていった。
今日も腰の低い丁寧な話し方で会社を騙し、お金をまきあげるのかぁ、と僕はおじいさんの車を見送った。
おばあさんはいつものように、黙々とつなぎ姿で豚の世話をしていた。
