変化観音の中で、千手観音は

特にポピュラーな観音さまです。

 

元々は、人間と同様な姿をしていた観音菩薩ですが、

それに満足できず、仏教徒がより多くの現世利益を

求めた結果、多くの顔や腕を有した多面多臂の尊格が

生まれました。

 

千手観音は、その中の一菩薩ですが、

中国で漢訳された経典には

多く場合、「千手千眼」とされているように

千の手の各々に一つずつ眼があるのです。

 

千手はあらゆる衆生の救済のためで、

千眼はあらゆる衆生を見守るためであると

経典では説かれています。

 

また、千手観音の姿は、三種類のタイプに

分類できるといいます。

 1.根本千手観音

 2.四十二臂千手観音

 3.清水寺式千手観音

 

1.は千手をそのまま表現したもので、実際に

唐招提寺や大阪葛井寺などの像では

千の手を有しています。

 

2.は主要な四十二臂のみを代表して表わしたもので、

中央の二手に加えて、周りに四十の手を

もった像です。

なぜ四十なのかについては詳しくわかっていません。

 

3.は2.の四十二臂のうち、二手を頭上に上げ、

化仏を支えた形の像を清水寺のものを代表例として

清水寺式千手観音と呼んでいます。

 

千手観音は、数ある観音菩薩の中でも

非常に大きな力をもつ尊格とされています。

特に密教では、曼荼羅において、

蓮華部というグループに属し、

その中で「蓮華王」と称されるほど、

強力な威力をもつと信じられてきました。

 

京都の三十三間堂には

中央に坐す国宝の本尊の左右に、前後に

10列の階段状の壇上に1000体もの

千手観音立像が置かれ、

合計1001体もの千手観音が安置されています。

 

千手観音も、十一面観音と同じように

広く信仰されてきました。

長谷寺の巨大で荘厳な十一面観音も

一見の価値ある仏像ですが、

三十三間堂の千手観音もまた、

圧巻の仏像といえます。