お釈迦様の前世の姿を「本生」といい、
その物語を「本生譚」といいます。
これは本来は特別な形式と内容を
そなえた古い文学作品であり、
漢訳経典では『本生経」として、
パーリ語聖典では『ジャータカ』として
残されています。
内容としては、お釈迦様が最後の生で
仏陀となる前の生において、菩薩として
修行している時代の、生きとし生けるものを
救ったという善行を集めたものです。
お釈迦様は前世では仙人や
様々な動物だった時に身を捨てる捨身を
行い、善行を積むことによって、
輪廻の中で王子ゴータマに生まれ変わり、
ついには仏陀となったというのです。
例えば、法隆寺の玉虫厨子に描かれる捨身飼虎図は、
崖の下で飢えている虎に自らの身を投げて
布施をしたという、菩薩時代の自己犠牲を厭わないで
善行を行ったことを表すもので、
その物語を絵画として描いたものです。
このような物語が文学作品として
たくさん作られました。
これは僧院で出家者たちが求めていた
精神的な世界とは違って、より民衆に親しみが
もたれたのだろうと思われます。
お釈迦様を偉大な救済の神のような存在として
感じ取り、民衆の中で仏教がアジアの広い範囲に
広まっていったのは、お釈迦様を崇拝して
神話を形成した信仰があったからだと
考えられます。
…続きあり…