背徳者の精神 -8ページ目

略奪愛の果て

その日、私はこのまま家に帰るのが怖かった。

なんとなく「聡の言動」が気になっていたからだ。

ここで気を緩めてはいけないような気がした。

その場ですぐゆきに電話し私達は会うことになった。


ゆきの家は美容室の二階でこじんまりとはしているが

ゆきらしい配慮の利いたお洒落なつくりになっていた。

「こんばんは」

私が玄関のチャイムを押すとしばらくしてゆきが出てきた。

「亜希子~いきなり電話してきて会いたいだなんて

言うからびっくりしたわよ。どうかしたの?」

ゆきはエプロン姿で私を家の中に迎えてくれた。

「…ちょっとね。それより、ゆきのほうは大丈夫なの?」

「ああ…旦那のことね。」

ゆきはゆっくりとソファーに腰掛けると呟いた。

そして心配そうに尋ねる私に苦笑いしながら続けた。

「一度や二度のことじゃないから…

もう慣れたつもりでいたけど…やっぱり駄目ね。

元々私が旦那と出会った時も彼女がいたし

いずれこういう風になることも予想してたけど…」

「………もしかして略奪愛…ってやつ?」

「そうそう、うちの旦那、誰にでも優しいから誤解されちゃう。」

「それで、旦那さんは戻ってきたの?」

「あの日の夜、遅くなってから帰ってきて、旦那と色々話をしたわ。

なんでも相手の女は私と出会う前に付き合ってた人らしいの…

別れてからもずっと忘れられずに旦那を追い回していて

私は知らないけど、何度か自殺未遂したりもしてて

その度にうちの旦那が病院に呼ばれて行ってたみたい。」

「ゆき…これからどうするの?」

「………コーヒーしかないけど飲む?」

そう言うとゆきは話を遮るように席を立った。

とても悲しそうな横顔だった。

私は黙って頷いた。

しばらくしてキッチンからすすり泣くような声が聞こえてきた。

「ゆき!?」

「ごめんね…私、母親ひとりしかいないでしょ…

だから誰にも相談できなくって…母さんにも心配かけたくないし

本当にどうすればいいか…悩んでるんだ…。

亜希子がきてくれてなんだか少しホッとしちゃったのかな…」

そして涙を拭きながら私にコーヒーを差し出した。

ゆきの旦那は今まで何度か浮気はあったみたいだ

だが今度の浮気はただごとではない…私はそう確信した。

…言葉に詰まる。

ゆきは感情を押し殺したままコーヒーを飲んでいる。

そしてふっと笑いながらひとことこう言った。

「本当…私が死なないとあの人にはわからないかもね…」

「ゆき…何言ってんのよ…

死ぬだなんてそんなこと口にしないでよ…。」

私は驚いてゆきの顔を見た。

「冗談よ、冗談…でもそれくらいの覚悟が必要だってこと」

ゆきは淋しそうに笑うと遠い目で窓の外を眺めていた。

なんて言っていいのかわからない…私は黙っていた。

その後、ゆきは旦那との結婚式の写真を見せてくれた。

それがどういう意味を持つものか私には理解できなかった。

幸せそうな顔をして写真を眺めるゆきの姿に

私はなんの疑問も持たずゆきの家をあとにした。


…でもそれが私が見たゆきの最後の姿になるだなんて。

嫌な約束

仕事が終わり、帰宅途中の公衆電話に立ち寄る。

嫌な約束だが聡に電話しなければいけない。

いや、そうしないとまた嫌がらせをされるに違いない。

私はメモを見ながらゆっくりと聡の携帯番号を押した。

「もしもし」

聡は機嫌よさそうに電話にでた。

「……もしもし、約束どおり電話したから。」

私は一言だけ告げるとそのまま黙りこくった。

「嬉しいよ、本当に藤田さんが電話してくれるなんて!

でもなんで家の電話じゃないわけ?」

「今、ちょっと出かけているから…」

(聡~誰から電話なんだよ!俺にも紹介してくれよ。)

彼の電話の後ろで男の声が聞こえる。

「うるさいなぁ…彼女だよ!」

聡が男に向かって話しかけている。

「ごめんごめん、今、友達のところに遊びにきてるんだよね。

でさ、今、友達がさ藤田さんと話したいって言うから代わるね」

「…ちょ、ちょっと…」

私が断る暇もなく聡は友達のひとりと電話を代わった。

「こんにちは~♪」

かなり軽薄そうな男の声。

「あの、私これから用事があるので…電話切りますね」

「ちょっと~まだ話し始めたばっかりじゃん!」

「でも…」

「聡ってさ、結構しつこい奴だからさ気をつけたほうがいいよ。

なんならさ、聡と別れて俺と付き合わない?」

「あの…私、付き合ってませんからご心配なく…」

「でもさ、本当は付きまとわれて困ってんじゃないの?」

「………!!!」

その友達の言葉を聞いてか聡は慌てて携帯を取り返すと

「余計なこというなよ!」とふざけたように友達に話し

「ごめんな。」と私に謝った。

聡はかなり上機嫌になっていた。

こんな時しかはっきり言えないかもしれない…そう思った。

「あの…お願いがあるんですけど…」

「何?」

「もう職場には電話しないでください。

用事があるときは私から電話しますから…」

「わかった、わかったから…じゃあね!」

初めて聡から電話を切った。

私はゆっくり胸を撫で下ろすと大きく深呼吸した。

迷惑

功輔に「恋人のふり」をしてもらうことになってから

数日間…聡からはなんの音沙汰もなかった。

できればずっとこのままでいたかった。

職場でも何事もなく聡のことを忘れかけていたある日。

同じ職場のナースから私宛に電話が入っていると伝えられた。

(母親だろうか…何か急なこととかあったのかも知れない)

私はそう考えると急いで電話口に立ち保留ボタンを解除した。

「もしもし…」

「こんにちは…誰だかわかる?」

聡の声だった。

「………一体どういうつもり?」

私は周りに聞こえないように小声で話した。

「だって家にかけても留守電になってるだろうし

直接、話をするならこっちのほうが手っ取り早いしね。」

「今、忙しいから…」

私は聡からの電話を切ると仕事に戻った…。

だが…それから数分後、また私宛の電話がきた。

「もしもし…」

「なんで電話切っちゃうんだよ!」

「用件は何?!」

苛立つ気持ちを抑えながら私は聡に問いかけた。

「テーブルに置いたメモ見たんでしょ?

なんで藤田さんから連絡してくれないの?」

聡の話はあの時、私が丸めて捨てた携帯番号のことだった。

「……なんで私があなたに電話しなくちゃいけないの?

もういい加減にしてください…迷惑です。」

再び私が電話を切ろうとした瞬間、聡は急いでこう言った。

「電話を切っても無駄だよ。またすぐに電話するから…」

周りのナースが私を見ながらひそひそと話をしている。

「じゃあ、どうすればいいの?」

「仕事が終わったら俺に電話してよ。」

「でも、電話番号書いたメモ…なくしちゃったから…」

(捨てたとは言えなかった。聡を逆上させてはいけない…)

その言葉を聞いて聡は少し呆れたように続けた。

「じゃあ、今からまた番号言うから今度はなくさないでよ!」

私は仕方なくポケットからメモ帳を取り出すと

聡に言われるまま番号を記入し仕事が終わったら

電話することを約束してどうにか電話を切った。

すぐに師長が私に近づいてきて静かにこう言った。

「藤田さん……

なるべく仕事中は私用の電話は受けないように。

相手にもそう話したほうがいいんじゃないかしら?」

「はい…すみませんでした。」

私はそう謝るとそれ以上何も言わなかった。

きっと周りのナースには恋人からの電話だと誤解されている。

でもここで理由を話しても誰にも何も信じてもらえない。

聡だってそうだ。私の迷惑になると知ってやっているのか

それとも知らないでやっているのか全く検討がつかない。

だが「迷惑だからやめてほしい」と言っても

やめるような人間ではないことだけは知っている。

了承

薄暗い部屋の中で留守電のあかりが赤く点滅している。

恐る恐る再生してみると一件…功輔からの伝言だった。

「功輔です。出かけてるのかな?帰ったら連絡ください。」

まだあまり遅くない時間だ。

私はすぐに功輔に電話した。

「もしもし…亜希子です。」

「亜希子さん…あれからまた連絡とか嫌がらせはない?」

功輔は心配したように私に話しかけてくる。

「昨日、また家にきました…けど仕事だって言ったら帰りました」

私は聡を家の中に入れてしまったことを隠して功輔に話した。

「昨夜、たまたま車で通りかかって部屋の灯りがついていたから

いるのかな?と思って電話したんですけど…仕事だったんですね。」

私は自分の脈が速くなるのを感じながら平静を装って答えた。

「はい…あの…無用心なので灯りをつけたまま仕事に行きました」

「それで…昨日の留守電はきいてくれた?」

「え…?」

(もしかしたら聡は電話がかかってきた相手を確認して電話に出たり

私に聞かせたくないものは留守電に残さず消去していたのだろう。)

「すみません…時々、この電話調子悪くなるんです…。

ごめんなさい。もう一度その内容を教えてもらえますか?」

功輔は少し考え込むとこう言った。

「亜希子さん…前に僕が言ったこと覚えていますか?」

私は「3つの提案」を思い出し申し訳なさそうに功輔に答えた。

「いえ…この場所は離れたくないし…仕事も今のまま続けたいです。」

「やっぱりそうですか…」

落胆したような声の後、功輔はあらたまってこう切り出した。

「あの…恋人のふりの件なんですけど…僕でよければいいですよ。」

功輔はあの場では快い返事をくれなかったが

ずっとこのことを考えていたと話してくれた。

「でも、恋人のふり…って一体どうすればいい?」

功輔が尋ねてくる。

私は漠然とだがきっぱり答えた。

聡に功輔の口から私の恋人だと告げて欲しいと…。

余計なプライド

似たようで全く逆のことをさっきゆきから言われた。

私はどう返事をしていいのかわからなかった。

かずえはその雰囲気を察してか今度は私に話をふってきた。

「ねぇそういえば亜希子はその後功輔さんとどうなのよ?」

「功輔さんって誰?」

ゆきが身を乗り出しかずえに尋ねる。

「ちょっと前なんだけど、私が亜希子に紹介した男の人」

「ねぇ~それってもしかして…昨日、電話に出た人?」

ゆきが私に問いかける。

「いや…違うけど…」

私がしどろもどろになって答える。

「どういうこと!亜希子、もしかして二股かけてる?」

かずえが少し怒ったような表情で私を見つめた。

「ただの知り合いってだけでなんにもないから安心して…」

「でも、亜希子のこと愛してるって言ってたよね~」

ゆきが面白おかしく付け加える。

「だから…そんな感情、私にはないって!」

「ふうん…でもそれって功輔さんが聞いたらどう思うかな?」

「かずえ…このこと…功輔さんには内緒にしててお願い。」

功輔は聡とのことは知っている。

でも家の中に入れてしまったことだけは知られたくなかった。


親友には聡とのことは話せなかった。

いや、親友だからこそ話せない。

心配をかけたくないというよりも3人の中で一番しっかりもの

だった私が今ストーカーに付きまとわれて困っていることは

親友にだけは知られたくないというプライドがあったように思う。

その後、私達はそれぞれの思いを胸に秘めたまま帰路についた。

思えばあの時、親友に自分をさらけ出しすべてを話してしまえたら

もしかしたらこんなことにまではならなかったのかもしれない…

近況報告

その日の夜、ゆきの提案で親友3人で会うことにした。

思い起こせば三人で会うのは一年ぶりくらい…。

でも会えばまたいつものように楽しく話せるはずだった。

私達はかずえのお勧めの居酒屋で待ち合わせた。

先に店に着いていたゆきは私を見つけると

大きな声で私を呼んで手招きした。そして

「旦那が浮気していること…かずえには内緒ね」と

一呼吸おいてから念を押すように耳元で囁いた。

待ち合わせの時間に少し遅れてかずえがやってきた。

「ごめんごめん待った?中々髪型決まんなくってさ

今度、ゆきの旦那さんの美容室でやってもらおうかな?」

いきなりの先制パンチ…ゆきの顔が少しこわばっている。

私はいそいで話題をかえるようにかずえに尋ねた。

「かずえは最近なんか変わったこととかあった?」

私達の会話はいつもお互いの近況報告から始まる。

「これといってはないんだけどね…」

そしてかずえは少し考えこむと続けてこう言った。

「うちの旦那がさ…」

またいつもの「のろけ話」かと思ったが今回はそうではないらしい。

かずえは看護師になって早々に今の旦那と付き合ったが

結婚まではあまり考えていなかったことは知っていた。

子供が出来て結婚することになり同居している義両親の

強い希望で産休後の職場復帰を断念したことも…。

そして今、子供もようやく手が離れる年齢になり

かずえはまた看護師として働きたいと思っていた。

だが旦那はそれに反対しまた子供が欲しいと切望している。


私は思う。二十代ってとっても貴重な時間。

その時間を費やして結婚し子供を産み育てることも大切なことだが

かずえには仕事以外でももっともっとやりたいことがあったように思う。



かずえは最後にポツリと言った。

「愛されて結婚して幸せになれると思ったけど意外と窮屈…」

そして私の顔を見て真剣にこう話した。

「亜希子は自分が愛する人と結婚したほうがいいよ。」

ゆきは黙ってうつむいていた。






仮面

「その…昨日の電話のこと聞いてないの?」

ゆきはちょっとためらいがちに話し始めた。

「聞いてないけど…なんかあったの?」

「実はね………」

ゆきがぽつりぽつりと話し始めた。

自分の旦那が浮気をしていること。

「その日はね…夜勤じゃなかったんだけど

交代したって嘘ついて家を出たんだ…」

話の概要はこうだった。

しばらく経って旦那が経営している美容室に行って見たら

見知らぬ女性とゆきの旦那さんが熱い抱擁をしていた。

どうしようかと迷ったけれどドアを開けて店内に入った。

でも、ゆきが怒る前に旦那が「夜勤だって嘘ついた!」って

逆ギレしてその女の人と店を飛び出していった。

そしてその後、私の家に電話をして聡と色々な話をしたらしい。


「でもさ…」ゆきは続けてこう言った。

「私は旦那がすごく好きで結婚して一生懸命働いてお店買って

欲しい車があるって言えば買ってあげてゴルフにも行かせて

一体、何だったんだろう…子供ができなくても幸せだったのに…」

ゆきは子供が出来ない体だった…原因は話してくれなかったが

私も特にそのことに関して今まで触れたことはなかった。

そんな負い目もあってか旦那には普通以上に尽くしてきた。

そしてこうも続けた。

「昨日、電話に出た人…亜希子のこと愛してるって言ってたよ

それで私にもきっと旦那さんは私のところに戻ってくるから

信じて待ってなさいって慰めてくれたの。いい人なのね…。

亜希子が羨ましいわ。やっぱり女は愛するより愛されたほうが

幸せになるっていうから…亜希子も愛されて結婚したほうがいいよ」

私は言葉を失った。

聡は一体いくつの仮面を持っているのだろう?

誤解

机の上に一枚の紙切れにメモがしてあった。

(今日はありがとう。090-…紙谷聡)

短い文章のあとには携帯電話の番号と

聡の名前が書かれていた。

私はその紙を丸めてゴミ箱に捨てた。

今日のことはなかったことにしたかった。

そして遅い夕食をとると仕事の疲れからか

すぐに深い眠りについてしまった。



翌日、晴れ渡るような青空が続いている。

私は久しぶりに親友のゆきに電話した。

今日は旦那さんの美容室も定休日だし

ゆきも休暇願いをとっているだろうと考えたからだ。

「もしもし…」

「あっ、亜希子!ちょっと~!

ずっと彼氏いないって言ってたのにどういうことよ」

「えっ?」

「昨日、久しぶりに亜希子のところに電話したら

彼がでて亜希子は仕事に行ってますって言うから

びっくりしたわよ~!もう、いつの間に~」

「…!!!」

(聡だ…あれほど電話にはでなくていいって言ったのに)

「あれは違うんだって…話せば長くなるけど彼じゃないから」

「ふうん…でも亜希子がいない時に家にいるっているのは

やっぱり特別な仲なんじゃないの?」

「全然っ!そんなことないから!」

「まぁいいけどね…」

「で…その人となんか話したの?」

ゆきはしばらく黙ったままだった。

漠然

気になって何度か職場から自宅に電話してみる。

留守番電話になったままで誰も電話にでない。

(もう帰ったのかな…)

自分の甘さを責めてはみたが

こうする以外あの場所ではどうにもできなかった。

こんなことになってしまうなんて…

功輔に話したらなんて言われるだろう。

このことは功輔には話さないでおこうと思った。

深夜、仕事が終わりタクシーで家に向かう。

マンションの自室には灯りがともっていない。

郵便受けにはちゃんとスペアキーが入っていた。

部屋の中も特に荒らされたりした様子はない。

とりあえず私は安堵した。

もしかしたら聡がまだ部屋にいて

このままずっと居座られたらと考えていたからだ。

(本当に友達と喧嘩していたのかもしれない。

やり方はどうであれちゃんと鍵は返してくれたし

意外といい奴なのかもしれない)と漠然と思い

(やっぱり違う)と首を横に振り払った。

スペアキー

あくる日、私は準夜勤務だった。

夕方になりそろそろ家をでようと玄関の鍵を開けると

廊下に聡が座っていた。私は無視して鍵を閉めた。

「これから仕事?」

聡が馴れ馴れしく話しかけてくる。

それでも私はその言葉を無視して立ち去ろうとした。

「ねぇ…お願いがあるんだけど…」

聡が私の行く手を阻んで話しかけてくる。

「仕事終わって帰ってくるまででいいから部屋貸してよ」

「???」

「実はさ、前にも言ったと思うけど一緒に住んでる友達とさ

喧嘩しちゃってどこにも行くところがないんだよね。」

相手にしないつもりだったが聡の突拍子もない言動に

私もつい言葉を返してしまった。

「車があるでしょ?」

「車もさ…ガソリン入ってなくって…

俺、金も持たずに飛び出してきちゃったんだよね」

「私には関係ない…」

私がそう冷たく突き放すと聡はニヤリと笑った。

「じゃあ、藤田さんを仕事に行かせないから」

「どういう意味?!」

そういうと聡はフロアに置いてある椅子を持ってきた。

「どうするつもり?!」

「これで窓を壊して中に入る…」

「やめてください…!」

「じゃあ家の鍵貸してよ。」

「部屋を貸すのは無理!」

私は急いで財布から5千円札を出すと聡に渡した。

「これでどこか行けるでしょ?!」

聡は差し出したお金を私の胸元に押し返した。

「俺は金が欲しくて言ってるんじゃない!」

「どうすればいいの?」

「大丈夫、2~3時間でちゃんと帰るからさ…

それよりもこのままだと仕事遅れちゃうね。

それともいっそのこと休んじゃう?」

時計を見る…いつもならもう着替えている時間だ。

私は家に戻るとスペアキーを聡に渡した。

2~3時間という約束で…

帰るときは必ず郵便受けに鍵を入れていくように

また電話がなっても絶対に出ないようにと

何度も念を押して急いで職場に向かった。