大型犬の飼い主さんへ。

胃捻転胃拡張(GDV)という病気はご存知ですか?

そして最近では腹腔鏡手術により、負担の少ない予防手術ができるのを知っていますか?

 

<胃拡張胃捻転(GDV)って?>

 

胃が捻れてガスがパンパンに溜まる病気です。

年齢に関係なく発症しますが、圧倒的に大型犬に多い病気です。

緊急手術を受けないと数時間で死亡する非常に恐ろしい病気です!

 

症状は急性の吐き気や、腹部膨満です。

あれよあれよとういう間にぐったりしてしまいます。

 

飼い主さんに知識があれば緊急手術で助かります。

しかし受診が遅ければ、、、数時間でショック死しますえーん

 

参考記事

 

 

 

<GDVの予防手術!その名は胃固定!>

 

非常に恐ろしいGDVですが、実は予防法があります。

 

それが「胃固定」という手術です!

 

胃固定は、「胃の一部を腹壁(お腹の壁)に縫い付けて、胃が捻れないよう固定してしまう」という手術法です。

胃固定はGDVの唯一の予防法で、予防効果も非常に高いです。

 

しかし!ここで問題があります。

従来の胃固定はお腹を大きく開ける手術でした。(20cm以上は切開します。)えーん

怖いGDVの為とはいえ、お腹を大きく開けて胃を固定することは飼い主さん心理としてはなかなか許容できないものでした。したがってその普及率は高いとは言えませんでした。

 

<大型犬に福音!腹腔鏡手術で負担の少ない胃固定を!>

 

近年では、胃固定が腹腔鏡でできるようになりました!!

これは非常に大きな進歩です。

 

何故なら、5ミリの小さな穴を3つ開けるだけで胃固定手術できるからです拍手

 

この方法なら、飼い主さんからの了承も得られやすく、ワンちゃんにも非常に優しい手術ですニコニコ

最近では、避妊手術や去勢手術の際に一緒に胃固定手術をお勧めしています。

 

腹腔鏡下胃固定手術は、このようなイメージです↓

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腹壁に胃を縫い付けてしまいます↓

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実際の手術をしている光景です↓

お腹に3つの穴を開けて、カメラや器具を挿入し手術します。

 

 

 

お腹の中はこのようなイメージです↓

 

完成図です。胃が腹壁に固定されました↓

 

男の子の傷はこんな感じ↓

緑丸は胃固定の傷口で、青丸は去勢手術の傷口です。

 

頑張りました拍手

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女の子の傷口はこんな感じ↓

胃固定のための傷口を使用して、子宮卵巣摘出(避妊手術)も済ませてしまうので、一石二鳥です!

 

頑張りました拍手

 

 

個人的には、最も力を入れている手術なだけに、長々と語ってしまいました。

 

いつの日か胃固定がもっと普及して、GDVで苦しむ動物と飼い主さんがいなくなるのを願っています!

ペットが何かを飲み込んだら、すぐ病院へ連絡!

 

これは飼い主さんが心に刻むべき、絶対法則です。

 

すぐに連絡いただければ、大事に至らない確率が上がります。

 

早い連絡であれば、まだ異物は胃の中にあるかもしれません。

 

胃の中であれば、内視鏡摘出(胃カメラで摘出)が可能です。

 

しかし時間が経って、異物が胃から腸へ流れてしまうと、、、最悪の場合、手術になります。

 

動物と人間が一緒に暮らしていたら、誤飲はつきものです。

誤飲自体は仕方のないことだと私は思います。

しかし、何かを飲み込んでしまったら、すぐに病院へ連絡してくださいね!

 

<実例紹介>

フレブルのLちゃんは、普段とてもお利口さんです。

 

しかし、別の病気の診察でレントゲン撮影を行ったところ、胃の中に異物がみつかりました。

 

内視鏡(胃カメラ)にて摘出していくことになりました。

 

胃の中には、平べったいゴム状のものがありました↓

 

今回はワニグチ鉗子という器具で摘出します。

その名の通り、ワニの口のようなギザギザしています。


 異物の端っこを掴めたので、そのまま引っ張り出します。

 

・・・誰??

 

飼い主さんに尋ねたところ、特に心当たりはなく、散歩中に拾い食いしたのではないか?とのことでした。

 

アニメや流行のものに疎い私。

どなたか、このキャラクターの正体を教えてくれませんか?気になって仕方ありません。

 

参考までに、過去のブログ記事です。内視鏡異物除去を詳しく説明しています↓

内視鏡で異物除去No.1(解説) | 木場きたむら動物病院のブログ (ameblo.jp)


内視鏡で異物除去(フレブルちゃんで実例紹介) | 木場きたむら動物病院のブログ (ameblo.jp)

 

私が避妊手術を勧める動物は、犬・猫・ウサギです。

 

これらの動物の共通点は、下記の2点です。

 

①避妊手術のリスクが比較的低くいこと

②避妊手術を受けない場合、将来的に婦人科疾患のリスクが高いこと

 

避妊手術を受けない場合、犬では子宮蓄膿症、猫では乳がん、ウサギでは子宮がん、が頻発します。

 

これらの動物は絶対的に避妊手術を受けられることをお勧めします。

 

そして、避妊手術を勧める動物に、新たに加わりそうなのが、ハリネズミです!ハリネズミハリネズミハリネズミ

 

<ハリネズミは婦人科疾患が多い!>

 

ハリネズミは高齢になると、乳がんや子宮がんがかなり多い動物です。

 

中年以降のハリネズミの女の子が、血尿で来院された場合、ほとんどは子宮がんと言っても過言ではありません。

 

一方で、避妊手術は慣れれば難しくありません。

そしてハリネズミは経験的には麻酔リスクは低い動物です。

 

今までは子宮疾患になったハリネズミの手術をすることが多かったです。

しかし今後は、若くて健康な内に避妊手術を推奨していこうかと考えています。

 

<実例紹介>

ハリネズミのAちゃんは、飼い主様の希望で早期避妊手術を受けてくれました。

 

手術自体は犬猫のそれとほとんど変わりありません。

 

医療機器も、人間のお医者さんが使うものを使用しています。

(まさか医療機器さんもハリネズミに使われるとは思ってなかっただろうな)

 

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摘出した子宮と卵巣です。

多くの動物で子宮はVの字型ですが、ハリネズミはまるで羊の角のような形をしています↓

 

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手術後の傷口です。2.5cmほどです。

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Aちゃんも元気に退院していきました。

この姿をみると、やはり若いうちに避妊手術を受けて、将来の心配を無くすのは良いことだと思います。

 

現在ハリネズミは人気急上昇中で、飼育人口も増えています。

今後、ハリネズミの避妊手術が普及するかもしれませんね!