ウィーン、ガガガ、キーン

カンカンカンカン


深夜に鳴り響く工事現場の様な音。


これは、カメの開甲手術の音なのです!


ヘルマンリクガメのMちゃんは、

「お尻から何か出ている」ということで来院されました。



これはカメの卵管脱という病気です。

卵管は、哺乳類でいうところの子宮にあたります。


卵巣や卵の病気で異常に力んだりすると、卵管が総排泄孔から飛び出してしまいます。


Mちゃんの場合も飛び出した卵管から出血があり、深刻な状況でしたガーン


麻酔をかけて、甲羅を開けます。

哺乳類だと開腹手術ですが、

カメの場合は開甲手術といいます。


整形外科ドリルで、台形に甲羅を切って行きます


カメの手術は甲羅を開けるのが本当に大変です。

特にリクガメは甲羅が分厚いので、なおさらです。


ようやく開きました!


お腹からたくさんの卵がでてきます


卵巣も摘出します。卵の黄身がたくさん!


小さな体に、こんなに卵と卵巣が詰まっていました。

これでは苦しいはずです。


お腹の手術が終わると、甲羅を元に戻します。

四隅をパテで止めて、手術完了です。


術後食欲が低下することを想定して、食道チューブも設置しました。

このチューブから青汁やウサギの流動食を与えて、体力を回復させます。



手術から1週間後。無事に元気になったMちゃん。

元気に大好きなトマトを食べる様になってくれました。お疲れ様でした!拍手


カメの手術は、頑強な甲羅のおかげで大変です。

しかしその分、手術が上手く行った時の喜びもひとしおです。


最後にお役立ち情報があります!ニコニコ


動物病院で本当に多いのが異物誤飲です!

本当に動物は色々な物を飲み込んでくれます。


異物は、たびたび内視鏡で摘出します。


胃カメラの先端から、様々な鉗子(かんし)を出して異物を取り出します。


一番スタンダードなのが、鰐口鉗子。これはパクっと掴んで来ます。


胃の中の異物です↓


しかし、異物の形状によっては、これらの鉗子で対応できないものがあります。


そんな時に役立つのが、回収ネットと呼ばれる秘密道具です!



これは先端が虫取り網みたいになっており、異物を上手く包み込んでくれます! ニコニコ



実例を紹介しましょう。


コイン状の異物を飲み込んでワンちゃんが来ました。

コインは鰐口鉗子では滑って取れません。



こんな時に回収ネットの出番!

虫取り網のようにコインに被せて、包み込んでしまいます!


このまま口まで連行します。


このような時、

便利な医療器具を開発製造してくださるメーカーさんへの感謝の思いで一杯になります。


最後にお役立ち情報↓

これは絶対に知っておいてくださいね!


「異物を飲み込んだ時の対応、3箇条」注意


①すぐに動物病院に電話をする!

自己判断は危険です。遅くなると手術など大事になります。


②動物病院に行くまで、ご飯を食べさせない!

ご飯を食べると内視鏡が大変です。


③同じ物を持参する!

同じものも持っていくと参考になります。例えば、同形のペットシーツ。飲み込んだピアスの反対側など。これ、とても役立ちます。


モルモットの去勢手術をご紹介します!


モルモットの去勢手術には、犬猫とは異なるコツがあります。




そのコツとは、ずばり、鼠径輪(そけいりん)の封鎖です!上差し


精巣は、鼠径輪を通じて、お腹から陰嚢にぶら下がっています。

下のイラストの緑が鼠径輪という穴です。
この穴を通じて、お腹と陰嚢は繋がっています↓


ところが!モルモットは他の動物に比して、鼠径輪が大きいのです!


去勢手術で精巣を摘出すると、鼠径輪がぽっかり穴になります。


注意術後に陰嚢の中に、腸管が落ちて嵌ってしまうことがあります。これを陰嚢ヘルニア といいます。


陰嚢ヘルニア では腸が締め付けられ、最悪の場合は腸管が壊死して、致命的な状態になります!↓


従って、モルモットの去勢手術では、総鞘膜という精巣を包む膜(イラストの青い膜)を除去します。このようにすると、鼠径輪が封鎖でき、陰嚢ヘルニア になりません。


この鼠径輪の封鎖こそ、モルモット去勢手術の最大のポイントになります!上差し


Pちゃんは去勢手術希望で来院されました。



モルの精巣は体格の割に大きいです


レーザーメスで切開して、精巣を露出します↓


精巣の血管はシーリング装置で閉じます↓



そして最大のポイントがこちらです。

総鞘膜を剥離して、閉じてしまいます↓



手術の傷はこの通り↓


麻酔から覚ましていきます


Pちゃんお疲れ様でした


去勢手術は簡単な手術と思われがちですが、動物種の特性により術式は異なるのですニコニコ