冬の悩み
2.冬の悩み
3学期の厳寒期には、簡単に上半身にセーターをはおる事は認めていましたが、大体において半そでシャツ1枚を原則にしていました。
いくら身体を鍛えると言ったって寒さで歯の根も合わない状態で、算数の考え事をしたり、読書をしたりしたって、頭脳の回転もままならないだろうと案じておりました。
どんなに寒くても体育時は薄着して運動場を飛び回り身体を鍛えるのがいいに決まっています。
しかし勉強する時はやはり余計な苦痛で思考が妨げられるのではなくて、自然な姿でやらせた方がいいのではないでしょうか。
もっと人間らしい豊かな雰囲気の中で歌を歌い、楽器を演奏させた方がいいのではないでしょうか。
私は体育が大好きです。
下手ながらも人並みにスポーツを楽しんできました。
しかし体育と言うひとつの分野で知的教材も芸術的教材も全て覆ってしまうと言う不自然さにはどうしても首をかしげざるをえなかったのです。
夏の悩み
こんな優雅なロングスカートも、きまり変更の結果生じたデメリットのひとつでしょう。
しかし私どもにはそんなデメリットを事前に想定してもなお、あえて改める事にふみ切らざるをえなかったいくつかの事情があったのです。
1.夏の悩み
2.冬の悩み
3.子供の人間性抹消の悩み
これなんです。これらについて説明します。
1.夏の悩み
昭和60年度私たちの職員会では何度も子供たちの服装の事が話題にのぼりました。結論を出すまでに私たちはそれなりに大変苦悩したのです。
そんな従来までのやり方を変えると言うことは簡単にはできない。重大な事なのです。
従来のやり方と言うのは子供が在校している時間のすべて、四季を通じて男子は半袖の体育シャツに半ズボン、女子はブルマーと言う事だったのは皆さんご承知の通りです。
夏はじっとしていても汗が出ます。
運動場に出て体育をやるともちろん汗がほとばしり、おまけに砂ぼこりにまみれます。
そのシャツを着たまま、国語も算数も音楽の時間もずっとそのまま着とおすのです。
子供は在校時間、ずっと着っぱなしで便利なため、中には何日も洗わず着つづける子さえ出てきます。
いつしかシャツは黄色に煮しめられ、保健衛生上果たしてこのままでよいのかと、大変疑問がもたれるようになりました。
続く
従来までの服装の決まりの問題点
2.従来までの服装の決まりの問題点
北校舎3階、6年生の教室の前の廊下を通っていると、前の方を長いスカートを優雅に右へ左へとなびかせて歩いているスタイルの良いご婦人が目にとまりました。
はて、誰の母さんだろうと追い越しざま横目で見たとたん、軽く会釈した可愛い瞳ににんまりと笑いかけられました。
昔から美しい女性にはことのほか弱い私ですので一瞬ドキッとしましたが、良く見ると何とそれはいつも見慣れた六年生A子ちゃんだったのです。
ホントに驚きましたよ。そして私たちの身の回りが美しく豊かになり、女性が綺麗になることはいいもんだなあとムードに浸りかけました。しかし、その思いもつかの間、私の頭の中はにわかに職業意識がメラメラと烈しく燃えさかりました。そして岬小の体育服のきまりを変更した事への悔悟の念が私の頭を痛撃したのです。
そしていずれはこの優雅で大人まがいの華美な服装は保護者の協力を得て、何らかの指導の手を打たねばならないだろうなあと、考えさせられた次第です。
学校に限らずどの機関でも同じ事ですが、何か従来までのやり方を少しでも変更しようとする時は、必ず変更した結果生じるメリットとデメリットを想定いたします。
そしてそのメリットがデメリットをはるかに凌駕してあり余るときは思い切って改める方向を選択する物なのです。そしてその結果生じたデメリットを出来るだけ封じ込めるため色々な対策を講じ、そのメリットの効果を最大限に引き出します。
(続く)
岬小学校の教育目標
1.体育服着用のきまり
先日、あるクラス担任の先生が学級PTAを終えて職員室へ来るなり
「校長先生!! 学校の体育シャツの決まりが変わったら変わったと親に知らせてもらわんば準備の都合もあって家庭も困るって父兄からしかられましたよ」
幾分気色ばんで私にこう伝えました。
「やっぱり来たか。こっちも悪かったな。」
私はそうつぶやいて
「はい、さっそくお知らせしましょう」
と返事をしておきました。
実は私も気になっていたのです。私自身にもある学級委員さんからそのことは以前に要求を受けていました。
それがとうとう今日まで延び延びになってしまって申し訳なく思っています。
ではさっそく岬小学校の体育シャツ着用の決まりを申し上げましょう。
「正規の体育の時間には体育シャツに短パン、ブルマーです。それ以外の時間の服装は自由です」
たったこれだけの事を何で早く通知しなかったのかと、お叱りを受けそうですが、私には単純に一片の通知できまりだけを流すのにかなりのためらいがありました。
学校の決まりというものはただ外面的な規制だけ親や子供に知らせて、それに否応無しに従わせて済まされるものではありません。
どの世界でもおなじでしょうが、特に教育に関してはひとつのきまりを作ったり、取りやめたりするにはかなりの熟慮を要します。そしてその熟慮の結果、決断した教育的意図を親にも子供にも知っていただく事がとても大事ではないかと思うのです。
そういうことで、出来れば皆さんに集まっていただいてご理解願うか又は文章に詳しく書いてご協力願うかしなければならないと考え、その機会を色々思案しておりました。
このように学校と家庭の間にはどうしても考え方をわかってもらえる一本のパイプがいります。
そのパイプ役としての機能をこの「西向きの窓から」が果たす事にもなれば、とってもとっても幸せに思います。
では、「西向きの窓から」の初仕事として、さっそく体育服のきまりを変えた学校としての考えを説明いたしましょう。
(続く)
発刊にあたって
各学級の担任からはそれぞれ学級通信なるものが発行され、クラスの動きや、担任の考えなるものが保護者の皆さんに伝えられています。
校長についても同様で、学校全体の動き、或いは教育方針についての校長の考え方についても時々は保護者の皆さんにお知らせをし、また私自身の子育てについての考え方なども語りかける機会があっても宜しいのではないかと考えております。そういうことで筆を起こしてみた次第です。
こういった書き出しで、今から18年前の昭和61年、当時の保護者宛に校長通信なるものを発行しました。
ブログどころかホームページもなかった時代でしたので、当然「紙」での発行でした。
題名を「西向きの窓から」としていましたが、今回18年ぶりにその「紙」の情報を整理し、ブログとしてまとめようと思います。
今更教育論を唱えるのが目的ではなく、「18年前はこんな時代だったな」と思い出していただければ幸いです。

