木枯やいのちもくそと思へども
【作者】室生犀星
「やわい屋」(朝倉圭一さん)のインスタグラムで紹介されていた『グロリアソサエテ』を見て、すぐに本屋に走りました。夏に著者である朝井まかてさんの『白夜』を読んでいて、日本初のイコン画家山下りんの生きざまに感動したことが頭から離れないというところが大いにありました。それと、新刊の主題が民藝の柳宗悦であり、その資料提供者のなかにお孫さんの柳新一さんがおられたところにも親近感を感じています。柳新一さんとは、大阪日本民芸館の講演でお話を聞き名刺を交換させて頂きました。講演の中で、お父さんの宗理さんのこと、おじい様の宗悦さんのエピソードをお聞きしました。そこらあたりをきちんと取材なさっているので、当然史実に基づいた面白味があるに違いないと思いました。
夏は、朝活の読書タイムで『白夜』を読んだのですが、今回は年末に向かいTVもヘンテコな特番ばかりで面白くないので、読書に充てたいと思います。
昨夜は、早目に家に帰り、赤木明登さんの東京での講演をzoom視聴しました。一番印象に残ったことは、参加者からの輪島塗を伝えていくことの課題として、震災もあり受け継ぐ者が減ってきていることをどう感じているのかという質問に対して、赤木さんの応えは、「経営者がもう一度職人に戻ればよい」という意味のような事を言われたことに共感しました。印章業界も同じだと思いました。技能検定の受検者数減少への対策として、継承現場を充実させるのではなく、目先の試験対策としての促成栽培のような講座を拵えて受検者を増やそうとしただけであり、その後継承現場への充実策はない状態です。また、その受検への呼びかけをしている業界幹部の皆様は受検されない、1級を目指さないという姿も見てきました。自分の親やおじいさん、2代3代前は職人であったという職商人であり成り立つ生業であるという根本を忘れ、経営のみに振り回され、印章を作ることや印章自体から在り方を組み立てることを忘却しているような気がしてなりません。今回の講座には、印章業界の技術者関連の人に参加を呼び掛けたので、受講していただいた方もおられると思いますが、輪島の復興と工藝の在り方を重く受け止めて頂きたいと強く思いました。

