どこの町でも見かける夫婦でやっている町の床屋さん。
旅先などで、見知らぬ土地の床屋さんにも行きますが、敷居の高い店が多くて腰がひけます。
馴染みのマスター
30年近くお世話になったマスターが2年前の3月に引退しましたが、この人には大変お世話になりました。マスターは聞き上手でいろいろな話を聞いてくれ、またよく覚えているのでいつ行っても話がつながります。
予約制
電話をかけると、マスターは希望する予約時間の前後の予約を見て返事をします。一時間ほどじっと椅子に座るのでその時間に顔見知りの人に会わないように調整してくれます。調髪の際に話す内容を隣に座る知人に直接伝わらないようにとの配慮でした。黙って座っていると隣の席の人がマスターや奥さんと話しているのが耳に入ってきます。その話の内容が知人だと思わぬ個人情報に触れてしまいます。電車のなかで隣の人が話しているのと同じで、隣が知らない人なら関心がないので聞き流し記憶に残りません。髪型はマスターに一任です。転職するとその業界風にしてくれます。サービス業のときは帝国やオークラのホテルマン風、スポーツ業界のときは短髪といった具合です。
マスターはご自分のことは話しません。いろいろ話をきいてくれます。そして関連する情報を教えてくれます。知人の近況や、縁のある会社の噂などです。髪が薄くなったとか白髪が増えたとかは教えてくれません。年相応の状態だとしか言ってくれません。奥さんがつい口をすべらせると、マスターは奥さんをしかります。反面、知人の髪の状況は良く教えてくれます。奴はすっかり髪がなくなったとか白髪になったとか。
決してご自分のことを話さないかわりに、気に入った人の近況はよく教えてくれました。散髪中に奥さんが缶コーヒーなどを差し入れてくれます。乾燥しているときは飴玉をくれます。マスターが引退の日、子どものいない、きれいな奥さんとは親子ほど年が離れていることを教えてくれました。きっと話せば長いご自分の話題がたくさんあったことでしょう。