ドワンゴがニコニコ動画に関する特別損失を計上。連結で赤字決算になるとのIRリリースを出しています。

証券会社からは威勢の良いアナリストレポートも出ているようですが、サービス開始から赤字続きであり、黒字化の目途が不透明なニコニコ動画事業について、監査法人からイエローカードが突き付けられ、修正に応じざるを得なかったというところかもしれません。

プレミアム会員の増加をPRし、ニコニコ動画の明るい未来をアナリストに語ってきたドワンゴ側としては、このタイミングでの減損計上は何としても避けたかったはずです。また、コミュニティサイト間が熾烈な争いを繰り広げる中で、動画、ゲーム、音楽などの独自の強みをアピールしていくことは経営戦略上も重要な意味を持っていたはずです。できればニコニコ動画の未来について冷や水を浴びせるような事態は、後回し後回しにしたかったのではないかと推測されます。

にも関わらず、このタイミングでこのリリースを出したのには、回収可能価額の算定について監査法人から厳しい指摘があり、経営陣も抗しきれなくなったというところでしょう。

それにしても何だか不思議なリリースです。特損の計上に目が行ってしまい、ニコニコ動画の話題に流されがちです。リンク先のインターネットWatchもその話題が中心になっています。

しかしながら、業績予想の修正についても無視できないものがあります。連結売上の修正は▲8.1%とやや大きなマイナスとなっています。絶対値で見ると▲23.3億円です。ニコニコ動画事業の2009年9月期計画では39.3億円の売上を予想していますから、規模の大きくないニコニコ動画の不振だけでは修正額を説明できません。リリースの文面には、ゲーム事業の不振が取り上げられていますので、恐らく連結子会社のゲーム会社が絶不調なのではないでしょうか。

手品で、相手の注意や視線を別のところに移させ、その間に仕掛けをする方法をミスディレクションと言いますが、ニコニコ動画という目立つサービスはミスディレクションにうってつけです。黒字化はまだかと騒がれているニコニコ動画の損失計上はネガティブニュースですが、その話題に注意を移させ、もっと大きなネガティブニュースを目立たなくするというのは、なかなかのテクニックのように思います。それが経営者として誠実かは別として。


ドワンゴ、ニコ動で特別損失11億円計上
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20091110_327946.html

ドワンゴ IRニュース
http://info.dwango.co.jp/ir/news/article/2009/091110.html


 次のインターネット規制は東京都からはじまりそうです。関係者の皆さんは早く声を上げるべきです。

 すでに児童ポルノ問題に関して、非常に先鋭的で合理性を失った議論がこの協議会では展開されていますが、インターネット規制についても合理的な根拠に基づかない主観的な発言が幅を利かせています。

http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/28b8giji.pdf

〇前田部会長
 10月、11月に議論をしてまいるわけですけれども、……草案の作成ということでございますけれども、起草委員ですけれども、……いままでの議論、きょうもご審議いただきましたけれども、固まってきたものに関係して、インターネット、児童ポルノの問題を軸にたたき台をつくっていただく。

 そうしますと、インターネットにお詳しい吉川委員と、児童ポルノの問題にお詳しい後藤委員にぜひ、ご専門の関係もあって、起草していただくのに適任かとこちらで判断いたしまして、お引き受けいただければと思っております。


 吉川氏は警察の出先機関であるインターネットホットラインセンターの副所長を務めており、警察行政とは密接不可分の地位にある人物です。そのような人物を、あたかもインターネット界の識者のように取扱い、民間の表現について答申を出すということが適切でしょうか。彼の人格以前に、形式論としてもおかしな話です。

 しかもこの協議会では規制対象となる当事者に対して、意見聴聞の機会を設けていません。完全に一方的な見解によって協議会が進行しています。児童ポルノ規制反対派だけでなく、表現の自由に対して利害関係を有する一般国民にとっても、このような事態を認めることはあってはならないものと思います。(さらにその議論の内容が悲惨なのですから……)

 実は、この協議会が以前と比べて先鋭化しているという話は聞いていましたが、まさかここまで暴走しているとは思いませんでした。穏健な都官僚の方も、今の協議会はおかしいと嘆いていましたし、周辺にはこのような事態を懸念する声も存在するのだと思います。一刻も早く良識を取り戻させることが我々には必要だと思います。


弁護士山口貴士大いに語る
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2009/09/post-cce7.html

 表現の自由について一顧だにしない、問題発言がてんこもりです。都民以外の方々も是非、ご一読を。

 同感です。都民以外の方にも影響があるひどい内容だと感じます。表現の自由は憲法の中でも最も厳しく守るべき権利の一つです。反対派を精神異常者のように扱い、非合理的な根拠でも規制しうるという話は、良識ある人間にとっても警戒すべき見解です。とても受け入れることはできませんね。


発言抜粋はこちらへ
http://d.hatena.ne.jp/killtheassholes/20091002

著作権侵害訴訟は、訴状を見ないとはっきりとした理由までは分かりません。どういう理由なのか気になるところです。

ただ、少なくとも著作権法というのは、ゲームの仕組みや操作方法、儲け方というものを保護するものではありませんから、グリーは著作物であるゲームやサイト上の画像等の類似性について様々な主張をしているのでしょう。

あたかも、ゲームのコンセプトとして釣りを取り上げたから提訴したかのように捉え、お前もモバゲーのパクりだろうというようなコメントがあちこちで見られるのですが、それはさすがに筋違いというものです。儲け方というのは自然法則であって法律で保護されているものではないのです。こんなものを法で保護したら、自由に商売をすることができなくなります。

このような事件について、一言で「パクり」と表現する人が多いのですが、いかがなものでしょうか。

パクりというのは便利な言い方ですが、何(対象)に対して何をした(行為)のか、判然としない言い方です。何を侵害したのか、何が制約されたのか、法律とその保護法益の関係を理解していませんと言っているようなものです。

八百屋が野菜を売ることに知的財産権が認められるわけがないことは、誰もが理解するところでしょう。儲け方というのは、多くの人が活発に商売をしていく上で当然に自由を認めないといけないものです。その儲け方が似ていたからといって、批判されるべき筋合いのものではありません。

ですから、このような議論の場合、法で保護されているものとそうでないものをきっちりと分けて理解しなければ、場違いな議論に発展しかねないのです。

今回のケースでは、著作権や不正競争防止法で保護された法益を侵害しているかいないかについて議論すべきであって、そもそも保護されないような部分を指して「先にパクっている」などと発言するのは、「私はビジネス知識を欠いています」と自分で言っているようなものだと私は思います。

ドワンゴの偉い人もそのような発言をしているようですが、著作権と密接な仕事をしている以上は、なぜ法律上保護されているエリアとそうでないエリアがあるのか、最初によく理解してから仕事をしてもらいたいものです。


http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20400532,00.htm
グリー、DeNAを提訴--釣りゲームの配信差し止めと賠償金を請求(CNET)

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0909/25/news042.html
グリーがDeNAを提訴へ 釣りゲームの著作権侵害で(ITmedia)
 グリーの決算が発表され、その勢いが注目されていました。しかし、ここでより注目すべきは、業績よりも会員数の凄まじい拡大ぶりだったと思います。

 会員数を1000万人を超えたあたりで、会員数拡大の伸びは大きく鈍化するというのが、mixiやモバゲータウンの傾向でした。ところがGREEでは1000万人近くからその伸びを鈍化させるどころか急激に増大させています。



 今となっては、モバゲータウンの会員数に急速に接近しており、追い越すのは時間の問題となってきました。


きみどりのブログ-純増数推移 2009年6月末

 月ごとの純増数で比較すると、GREEの純増数がどんどん加速していることが分かります。2009年6月には、純増数が100万人を超えており、中上位クラスのサイトが毎月誕生するほどの恐ろしいペースで増加していることが分かります。

きみどりのブログ-400万人突破月からの推移

 GREE、モバゲータウン、mixiの三サイトを同じステージで比較したものです。横軸に月数、縦軸に400万人突破月の数値を分母とするパーセンテージを取っています(突破月の発表数値は必ずしも400万人ぴったりではないため)。会員の伸びが頭打ちになりそうな時期に、逆に勢いを増しています。モバゲータウンが12か月で達成した会員数を、3か月ちょっとで達成しているわけであり、恐るべきものがあります。

 この急増ぶりには大規模なプロモーションによる影響もあるとは思いますが、大規模なプロモーションを行ったのはモバゲータウンも同じであり、同じような成果は残せていません。それどころか、モバゲータウンが急激な勢いで拡大した最盛期を大きく超える急増ぶりであり、かつ、その勢いが持続しています。つまり、1000万人を超えるユーザーを抱えながら、モバゲータウンの成長期を超えるサイト規模の拡大が起きているということになります。単なる広告宣伝効果だけでは説明が付かないように思います。

 この事実はグリーの決算自体よりも重大な意味を示しているように考えられます。

 原因として考えられるのは、これまでコミュニケーションサイト(モバゲータウン、mixi)が相手としてなかったセグメントへの急激な浸透と、利用の拡大が起きているということです。

 事実、グリーの決算説明会資料には、年齢別のユーザー構成が記載されているのですが、30代以上のユーザーの伸びが顕著であり、他サイトとは一線を画する内容となっています。現在4割近いユーザーが30代以上となっているようです。恐らく、釣りゲームなどのソーシャルゲームが強い求心力となって、これまで携帯SNSといったものにそれほど興味を持たなかった多くのユーザーを集めているのでしょう。単にコミュニケーションをすることのみがインセンティブとなっていた、これまでのコミュニケーションサイトとは異なる進化を遂げているように見受けられます。

 一方のモバゲータウンは、今四半期で多くのユーザーを集めたものの、急激な減収となりました。新規ユーザーが多いほど、アバターに落とす金も多くなる事業構造からすれば、極めて異例な事態と言えるでしょう。

 DeNAは、ここ最近広告宣伝を積極的には行っていないようであり、なぜ春頃からユーザーの拡大が続いているのか判然としない部分があります。mixiの純増数もこの時期に増加傾向にありますが、いずれもGREEが勢いを拡大した時点と符合しています。あくまで推測でしかありませんが、GREEの積極的なキャンペーンにつられて入会した人が多数いるのかもしれません。下のデータを見ると、前四半期のモバゲータウンの状況が異常であることがよく分かります。


きみどりのブログ-純増数・売上高増減比較(09年6月末)


 一番下に飛び出した赤い丸が、最新のDeNA・モバゲータウン部門の売上高変化と純増数を示す点です。純増数が比較的多かったにも関わらず、売上が激減しています。過去の分布からしても特異な四半期であったことは間違いありません。モバゲータウンで近年入会したユーザーがあまり金を落とさない存在であるようであり、「GREEつられ入会説」の一つの証拠になる事実でしょう。

 今回の四半期決算で、モバゲータウンにおける急減速が話題になっていましたが、アバター販売もアフィリエイトも広告関連もダウンしており、3Dアバターの買い控えの一言では説明がつかない状態だと思われます(アバター販売のみに影響するはず)。優良顧客がGREEに逃げているということや、広告営業においてGREEとの競争が熾烈なものになっていることも一因なのではないでしょうか。

 グリーについて見てみると、売上の伸びがメディア等で取り上げられていましたが、純増数と比較するとまだまだ控え目の伸びとも言えます。これまでとは違ったセグメントのユーザーが増えることで、儲け方にも徐々に変化が生じているものと思われますが、逆に言えばまだまだ改良をしていく余地がありそうです。プロモーション費用は莫大なものになることから、儲け方の仕組みを先に整えてから、宣伝をしていくことも当然考えられるところでしょう。あえてそうしないのは、ユーザーを急激に囲い込み、営業上の優位性を確立することで、追撃するDeNAとの間で決定的な差を作るステージだと考えているのようにも見えます。

 もちろん広告宣伝費用ばかり浪費し、新規ユーザーには支持されず、結果としてサイト全体の求心力を失う事態は避けなければなりません。サイト規模の拡大を図りつつ、新しいセグメントのユーザーにも支持されうるコンテンツを開発し、収益化していくという難しい舵取りを迫られることになります。これに失敗すれば一気に頭打ちになってしまう恐れもあります。

 DeNAは、無料ゲームを集客の餌にして、最終的にアバター販売で収益を得るというビジネスモデルのまま今日に至っており、3Dアバターを強調している点からしても、その路線に大きな変化は無いようです。アバターは、コミュニケーションに付随するアイテムでしかなく、「アバターするならモバゲー」と銘打ってもそのサイトへ行こうとは思わないでしょう。つまり主力商品であるはずのアバターが、集客の道具として使えないという点で、キラーコンテンツを抱えるGREEに比べて大きなハンデがあります。

 3Dアバターを導入したところで短期的な業績の改善はあったとしても、中長期的にはグリーに対する優位性にはつながりそうになく、先の問題は残り続けます。両者の成長の差を縮める要素に乏しく、このままでは若年層向けのマイナーサイトに転落する恐れもあるでしょう。グリーには無いコマース向けのサイトやシステムを保有しているにも関わらず、モバゲータウンの抱えるユーザー層やユーザーの行動パターンが噛み合わないのは如何ともしがたく、このあたりは抜本的なM&Aをしない限りは短期的には解決しないかもしれません。


http://japan.cnet.com/news/biz/story/0,2000056020,20397412,00.htm
DeNAが減収減益、「モバゲー」3Dアバター導入の遅れで (CNET Japan)

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0907/29/news078.html
グリーが破格の急成長、前期営業益は8倍・83億円 今期はPCサイト刷新(IT media)
中学生閲覧制限36% 携帯フィルタリング、親へ協力要請--警視庁調査

 ブラックリスト方式の場合、警視庁が「実態として異性との交際の場になっている」と警戒を強める「ミクシィ」などの交流サイトへの接続が可能で、警視庁少年育成課は「ホワイトリスト方式を選んでほしい」と話している。


http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090407dde041040024000c.html
(毎日新聞)


 ホワイトリスト方式は、「安全なサイトを選んでいる」との携帯電話事業者の謳い文句の下、低年齢層がアクセスするフィルタリング方式として推奨されることが多いです。しかし、実際はどうでしょうか。

 子どもにとって安全という観点から選別したというのは間違いです。携帯電話会社が、課金方式や認証方式など面で様々な条件を飲んだサイトを「公式サイト」として認め、その中から特定ジャンルのサイトへアクセス可能としたものに過ぎないのです。

 インターネット業界にいる方にはこのあたりの話をご存知の方も多いとは思いますが、あえてご存知でない方に向けてお話しますと、「公式サイト」というのは、子どもへの安全性を中心とするモノサシで選んだものではなく、経済的・営利的側面などの切り口を中心とするモノサシによって選ばれたサイトと言ってもいいでしょう。

 公式サイトとなれば、携帯電話ユーザーに対して極めて簡単に課金をすることができます。その一方で公式サイトを外れれば、民間の電子マネー業者と提携をして、ユーザーからお金を払ってもらう環境づくりをしなければなりません。ですから、民間のサイト業者は、携帯電話会社の無理な条件を飲んででも必死になって公式サイト化を目指すことになります。当然、携帯電話会社も、安全性を審査の中心にするのではなく、サイトの持つ経済的側面が審査が中心となるのです。

 GREEがKDDIの公式サイトとして飛躍した一方で、モバゲータウンが携帯電話会社との提携を行わなかったのは、携帯電話会社が定める安全性の基準を嫌ったからではないはずです。なぜなら安全性についての公式サイト基準は、モバゲータウンのようなサイトの水準からすれば、それほど難しいものではないからです。それでも公式サイトになろうとしなかったのは、携帯電話の様々な干渉が、課金のメリットを上回るほど、経営の大きな障害となると認識していたからだと思います。

 つまり、公式サイトであるかどうかは、安全性以外の面によって致命的な影響を与えることもあるのです。

 しかも、誰もが認める優良サイトであっても、公式サイトでなければホワイトリストには選ばれません。検証したことはないのですが、恐らく警察が用意しているケータイ向けサイトにもアクセスできないのではないでしょうか。このように、携帯電話会社の一方的な裁量の下で運用されているのがホワイトリスト方式なのです。

 そのような極めて独占的な地位にある者が選別したサイトを、安全なリストだと銘打って警察が推奨することが適切なのでしょうか?

 一般市民があるサービスを選ぶに当たって、警察がどれを選ぶべきと指定することは正常なことではありません。対象が表現そのものであるなら尚更です。

 表現の自由は、その表現そのものを保護するだけではなく、自由な表現を基盤になされる民主的プロセスを保護するものでもあるため、様々な自由権の中でも最も重く保護される権利とされており、実際に最高裁判所による違憲性の審査でも、重く判断されている分野です。

 警察は、行政機関の中でも権利を制約する強力な実力を持つ機関ですから、例え法的な強制力が無かったとしても、表現に対する援助、助長、圧迫、干渉に対しては慎重であることが望まれます。

 子ども達の安全のためには、結果として特定の事業者を援助することとなったとしても、強制しているわけではないのだから法的に妥当だとの反論もあるでしょう。私が言いたいのはこの推奨行為が違法だとか違憲だというレベル感までを言っているのではありません。あくまで警察が啓発活動の名を借りて、不適切な勧奨行為を行うことへの妥当性の問題です。

 そもそもホワイトリストを推奨すること自体が、今回のニュースにあるような中学生向け説明として妥当とはいい難いでしょう。

 ホワイトリストの問題点については、総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」の中間とりまとめ(P.19)がこのように書いています。

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/2008/080425_6.html

 携帯電話のフィルタリングサービスの現状モデルは、あるべきフィルタリングからは距離があり、むしろ「画一性・非選択性」を特徴としている。(中略)

 このことは、利用者にとって望ましくないだけではなく、コンテンツ事業者等の情報発信者
にとっても望ましい状態ではない。なぜなら、フィルタリングでアクセス制限すべきコンテンツの選択が利用者ではなく、その利用者との間に介在する携帯電話事業者及びフィルタリングリスト提供会社によって決定されてしまうからである。

 具体的には、ホワイトリスト方式の場合は、携帯電話事業者の「公式サイト」の選別から漏
れた場合には、利用者に選択される可能性は絶たれてしまうこととなる。また、ブラックリストの場合は、携帯電話事業者が青少年にとって有害な可能性があるものとして選別したカテゴリに、フィルタリングリスト提供会社によって分類された場合には、利用者に選択される可能性は絶たれてしまうこととなる。

 このような現状モデルの「画一性・非選択性」を緩和し、「多様性・選択性」を備えたモデル
に改善することで、本来あるべきフィルタリングに近づけていくことが重要である。


 そして、この部分のベースとなった第5回の会合では、ホワイトリスト方式は小学生には推奨しうるとの議論がなされたと報じられています。

ホワイトリスト方式は行き過ぎ、ただし小学生に推奨するのは妥当

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/04/02/19059.html#

 ①有識者の議論を通じて、中学生であっても推奨できるもので無いとの結論が出ており、かつ②表現の自由に重く配慮すべき場面であるにも関わらず、啓発活動に名を借りてあえて推奨するというのは、やはり妥当でないと言うしかありません。



異性交際の場か否かが基準なのか?

 最後にこの記事で気になった点があります。
 
 コミュニケーションサイトが「異性の交際の場となっている」として、それを排除すべくこの警視庁の人はホワイトリストの使用をアドバイスしています。しかし、出会い系サイト規制法の立法目的は、ネット上での異性との恋愛を統制することではないのです。1条が定めているように、児童買春その他の犯罪から児童を守ることが出会い系サイト規制法の立法目的なのです。今回の啓発活動の最終的な目的も同様でしょう。

 ここで再び記事に戻ると、「異性の交際の場になっている」という警察庁の指摘は、コミュニケーションサイトが、性犯罪に結びついていることを示すのではなく、恋愛道徳観の点からの適切性をアドバイスすることにしかなっていません。警察がそのような理由で、特定サイトを排除するようなサービスを推奨するのは不適切の極みでしょう。そこにいると、恋愛が出来てしまうからダメだという理由は、表現を圧迫しうる勧奨行為の正当性として、妥当では無いのです。

 以上の点から、このアドバイスは極めて不適切であると私は考えています。

 警察の対応は、法で定められた範囲を超えて表現の自由を圧迫する方向に大きく動いています。警察の不適切な行為については、しっかりウォッチしていくことが必要だと思います。


■推奨記事

Z会、添削の雄が集客法で大決断 DM廃止、SNSで囲い込む
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/JIREI/20070326/266354/

プロフィール、日記、コミュニティーなどへの書き込みは、すべて事務局が事前にチェックし、承認したものだけを公開する。個人情報や試験問題、著作権侵害 にかかわる書き込みは公開されず、事務局からユーザーに注意を送る。「学び」に無関係なコミュニティーの乱立を防ぐため、コミュニティーの設立は事務局が行い、ユーザーには権限を与えない。メール機能も付けず、ユーザー同士の個人情報交換を禁止する

というコミュニケーションサイトとして最も強度の高い管理方式をとっているにも関わらず、コミュニケーションであるが故に(←アクセス制限対象のジャンルだから)ホワイトリストから漏れてしまうわけです。「交流サイトは買春の温床」として、ジャンルそのものを否定するようなやり方は、学習の新しい場を創造することすら奪いかねないものだと感じます。