途中からなので
下記☟
”これまで”を
お読み頂けたら
嬉しいです
はじかれ者中学生3人が『禁忌の石段』の謎を解くミステリー小説
☟前回文末部分
調子よく喋っていた老女は、そこでふと、話し相手が中学生と思い出したらしい。
「いや、まぁ」と、幾分恥ずかしそうに、手をひらひらと振って、ひとり盛り上がる。
「もちろん、私ゃあ、何も見んかった振りをして、通り過ぎようとしたんよ。じゃけど、女の子のほうが、急に苦しそうな呻き声を上げ出してねぇ。最初は具合が悪うなったんかと思うちょったら、急に豹変したんよ。雄叫びを上げたり、ケラケラ笑ったり。かと思うたら、いきなり泣き出したり。結局、相手の男が、女の子を引きずるように連れて帰ったけどね。まーぁ、とにかくたまげたわ」
老女は、若干曲がった背中を精一杯仰け反らせ、驚いてみせた。
☝ここまでが前回でした
一端火のついたお喋りは、勢いを増す。
「子供の頃から、上にゃあおかしい者が多いと、聞かされちゃあおったけどねぇ。それでも、私ゃあ半信半疑じゃったんよ。じゃけど、実際、目の当たりにするとねぇ」
いかにも当惑した風に眉根を寄せる。これ見よがしな溜息の後「まぁ、ほれでも」と、老女は眉間の皺を僅かに緩ませた。
「昔からようけ余所者が上を訪ねて行っちょったわりには、よう犠牲者が一人で済んだいーね」
矢儀は、一瞬、老女のぼやきの意味が分からなかった。どもりながら、慌てて聞き返す。
「そ、そんなに、余所から上を訪ねて行く人が、いたんですか? いったい、何のために?」
「そりゃあ、上にゃあミコがおったからねぇ」
当然とばかりに、老女は答える。
ミコ……聞き覚えのある名前だ。
矢儀は急いで記憶を巻き戻す。そう――稔や美紀の話では〝ミコさん〟は、上の最後の住人の名前。抑揚のないイントネーションからして、名字かと思っていたが……。
老女は、矢儀の困惑ぶりを可笑しそうに眺めながら、補足する。
「神様の”神”に、子供の”子”で神子」
空中に字を書いた老女は、軽蔑の薄ら笑いを頬に浮かべる。
〜続く〜