途中からなので
下記☟
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はじかれ者中学生3人が『禁忌の石段』の謎を解くミステリー小説
「それより!」と、織田村はいきなり話題を変える。
「昨日の話に出てきた幽霊部員って、誰のことですか?」
「え? おまえ、知らんの?!」
大仰に兼行が驚く。
「……誰も教えてくれないもんで。他に部員がいたなんて初耳です」
「ふーん」と、兼行は、なんとも気のない返事をして、前を向く。それっきり、話は途絶えた。
(☝ここまでが前回)
中途半端に無視をされて、織田村は、むすっと口を曲げる。
「誰なんですか?」と、矛先を矢儀に向けてきた。
兼行が、前を向いたまま「教えちゃら――ん」と答える。
「なんでですかっ!」
織田村は、前を走る兼行に食ってかかった。
「だって、おまえ、舞い上がりそうじゃから」
振り返った兼行は、口元がいやらしく笑っている。ちらっと視線を寄越し、「想像できるじゃろ?」と、相槌を求めてきた。
「舞い上がりそう」とは、言い得て妙だ。矢儀は「確かに」と、口の端で笑ってしまった。
「何ですか、舞い上がりそうって」
どんな人物が頭をかけ巡っているのか。織田村は、不機嫌な声を上げながらも、半分は上の空だ。
「おまえ、わかりやすいけぇの」と、兼行が吹き出す。
「じゃけど、騙されんなや。俺は、ヤツの本当の顔を知っちょる。実はぶち口が悪いし、根性もひん曲がっちょるんじゃけぇ」
自分だろ、と、矢儀は胸の内で突っ込みを入れる。後が面倒なので、口には出さなかった。
次第に薄くなる青空に気が急く。下り坂のおかげで、上か下かと悩んだ場所までは、すぐに戻れた。ここからは、右手の山際を注意深く目で追う。だが、それらしき脇道は、まったく見当たらない。少し、上まで行き過ぎただろうか。カーブを曲がると、少し視界が開けた。
「あ! いかにもな入り口!」
いきなり、織田村が叫ぶ。遅れて矢儀も気づく。右に大きく弧を描いた道の先に、チラリと見える脇道。山の麓を抉ったような入り口だ。