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はじかれ者中学生3人が『禁忌の石段』の謎を解くミステリー小説
「え? 兼行先輩って園なんですか?」
織田村が、驚いた声を上げる。若干、訝し気な響きが含まれていた。
一番後ろを走る兼行は、白け切った顔で、頷くことすらしない。
今更な質問だが、そもそも兼行は、自分のことをあまり喋らない。なのに、学年も違う織田村を責めては、さすがに気の毒だ。それに、織田村は、今年の春、仁保に越してきたばかり。
矢儀は、冷めた空気を変えるため、道すがら、園地区の事情について説明した。
(☝ここまでが前回)
「園も、今でこそ中学校は廃校になったけど、昔はそれなりに、子供も大人もおったらしいんよ。ただ、昭和五十年頃から、何にもなかった園の南側が住宅地になって、当然、道路も整備された。園の道が綺麗なんは、その延長線上だからだよ。おかげで、仁保からは園経由で町に出やすくなったけどの」
矢儀は、遠く、園の地に目を馳せながら続ける。
「問題は、園が、新興住宅地からも、仁保からも、中途半端な位置にあることじゃろうの。近年は、人口の流出が止まらんらしい。じゃけぇ“寂れている割に道が綺麗”なんよ」
兼行が「へぇ」と感心した声を上げる。自分の住むところなのに、初めて知ったようだ。
織田村は、聞いているのか、いないのか。ひとり、物思いにふけっている。
遠くに、園の風景が見えていた区間は、僅かだった。道は、高野台を迂回するため、カーブが多い。園の風景は、すぐに見えなくなった。途中、木々に覆われた薄暗い道をひた走る。視界が開けたところで、未遠川が見えてきた。橋を渡った先で、道は二手に分かれている。
「ここ、左でええんよの?」
振り返って、一応、兼行に問う。返答はない。なので、間違いなさそうだ。
矢儀は躊躇なく左折し、未遠川に沿ったなだらかな上り道に入った。
少々前太股に圧を掛けながら、自転車をこぐ。
雲一つない秋晴れではあるが、今日は風が強い。行きは向かい風となり、おかげでペダルは一層重かった。振り返ると、織田村は案外ついてきている。兼行は、およそ五十メートル後方を、のらりくらりと来ていた。
石段はどのあたりだろうか。
矢儀は、左手の高台を見上げある。が、斜面を覆う木々がブラインドになり、まったく見当がつかない。