途中からなので
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はじかれ者中学生3人が『禁忌の石段』の謎を解くミステリー小説
歩きながら、矢儀はふとおかしくなった。自分はどうやら、佐内の話に対して、想像以上に動揺しているらしい。
もやもやを吹っ切るように、視線を上げた時だった。
二階の、二年二組の教室の窓辺に、兼行の姿を見つけ、ドキリとする。遠目にもわかるほど、険しい表情をしていた。腕組みをして、軽く窓枠に寄り掛かっている。視線は、斜め下を見つめたまま。ピクリとも動かない。
いったい何を見ているのだろうか。
(☝ここまでが前回)
視線の先を追うにつれ、手の甲から腕へ、すうっと鳥肌が立った。
テラスにいる矢儀からは見えないが、想像はつく。兼行が鋭い眼差しを向ける先は――一階の教室棟の出入り口。ちょうど、左内と織田村がいた辺りだ。
もちろん、二人がまだ、下で話をしているとしても、声までは聞こえないはず。だが、兼行の表情は、まるですべてを見透かしているかのように、硬く冷たい。
一陣の風が、テラスを吹き上げる。髪を煽られても、矢儀は立ちすくんだまま。
秋の薄れ日が、ひどく寒々しく感じられた。
2
“もう少し上のほうに行けば、他にも上に上がれる道がある”
昨日聞いた話を信じて、郷土史研究部の三人は、柔らかな秋の陽射しの下、今日も未遠へ向かう。もちろん、今回は高野台を通らず、高野台を迂回する道を選んだ。ただ、迂回なので、どうしても遠回りになる。おのずと、ペダルをこぐ足が速まった。
「園方面を眺めた時、いつも思うんですけどぉ」
後方から、織田村の呑気な声が聞こえてくる。
「園って、寂れている割に、道が綺麗ですよね」
「そりゃあ、園地区に住む兼行に対する嫌味か?」
矢儀は、後ろを振り返って問うた。
「え? 兼行先輩って園なんですか?」
織田村が、驚いた声を上げる。若干、訝し気な響きが含まれていた。
一番後ろを走る兼行は、白け切った顔で、頷くことすらしない。
今更な質問だが、そもそも兼行は、自分のことをあまり喋らない。なのに、学年も違う織田村を責めては、さすがに気の毒だ。それに、織田村は、今年の春、仁保に越してきたばかり。
矢儀は、冷めた空気を変えるため、道すがら、園地区の事情について説明した。