ずいぶん放っておいた小説ですが
続きの更新始めます
途中からなので
良かったら
下記☟
”これまで”を
お読み頂けたら
嬉しいです
はじかれ者中学生3人が『禁忌の石段』の謎を解くミステリー小説
「でも、まさか佐内先輩が、こんなに親しみやすくて、話しやすい方だったなんて驚きました。勉強も運動もできて、しかもかっこよくて、ずっと雲の上の存在だと思っていたので」
「なんだ、それ」
佐内は苦笑まじりに話を終える。
「ほれじゃあ、時間取ったの」
コンクリートと上履きの底が擦れる微かな音。
矢儀は慌てた。偶然とはいえ、しっかり盗み聞きはしていたのだから。ここでばったりはさすがにまずい。とにかく――逃げよう!
(☝ここまでが前回)
すぐさま、踵を返す。極限まで足音を消し、階段下まで戻った。少し離れると、冷静さより焦りが全面に出る。
矢儀は脱兎のごとく、階段を掛け上がった。そのまま、賑わう二階の屋上テラスへ出る。暖かい日が続くおかげで、十一月に入った今も、外でくつろぐ生徒は多い。
テラスの真ん中あたりで、矢儀はようやく足を止めた。肩で息をしながら、そっと後ろを振り返る。二人が上がってくる気配はない。まだ下で話をしているのかもしれない。
矢儀はホッと肩を落とす。荒い息はすぐに落ち着いた。しばしその場に佇む。左内の話が、脳裏で何度も繰り返された。
まさか、四年前の転落死を目撃していた人物がいたなんて。それも、こんな身近に、二人も……。
不意の突風に、髪を煽られる。
女生徒の、短い悲鳴が聞こえてきた。と、同時に、紙がコンクリートの上を転がる乾いた音が耳につく。足元を見ると、ピンク色の紐をつけた短冊形のしおりが落ちていた。
「あ、ごめん」と、ベンチに座っていた二人の女生徒のうち、一人が立ち上がる。
矢儀は、近づいてきた女生徒に、しおりを拾って渡した。ぶっきら棒に「ありがと」と言われる。おそらく上級生だろう。ニコリともせず、さっさと矢儀に背を向けて、ベンチに戻る。片手には、例のド派手な、ピンク色の占い本。「大丈夫だって」と、女生徒は、座ったままの友達に声を掛ける。
「そもそも占いなんて、当たるも八卦、当たらぬも八卦って、言うじゃろ」
「まぁね、信じ切って、多恵みたいになりたくないし」
多恵……?
聞き覚えのある名前だ。