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はじかれ者中学生3人が『禁忌の石段』の謎を解くミステリー小説
その石段、通るべからず
背を向けようとする二人に――いや、正確には、兼行に問うた。
「四年前の転落は、事故だったんだよな?」
(ここまでが前回)
織田村は、興味の眼差しを持って振り返る。兼行は、能面を張り付けたような無表情で振り返った。
「俺が知っちょるわけねぇじゃろ?」
言うなり、唇の片側だけを大きく吊り上げる。
「石段を上ろうとした威勢の良さはどこへ行った? 未遠の人に何か言われたんか?」
そもそも聞き取り調査中、兼行はどこへ行っていたのやら。
矢儀は仕方なく、聞き取った内容を要約して話す。
「四年前の転落は事件だったと――少なくともあの二人は、固く信じちょるみたいだ」
「事件?」と、兼行は眉間に皺を寄せて訝る。
軽く頷いた矢儀は、手持ちの二枚の雑巾に目を落として続けた。
「そもそもあの石段では、戦後すぐ、立て続けに、若い男性が二人、落ちて亡くなっちょるらしい。男性は二人とも、石段の上の住人であり、太平洋戦争の帰還兵だった」
ちらりと、兼行を見る。整った顔は、また、能面を張り付けたような無表情になっていた。
「前例があったからだろう。四年前の転落事故の時も、未遠の人は、また上の者が落ちたと思ったらしい。上の“フジヨシさん”が落ちた――と」
一旦、話が途切れたところで、織田村が不可解そうに呟く。
「考えてみたら、変ですよね。どうしてすぐに、フジヨシさんだと決めつけたんでしょう。上には他に、誰も住んでいなかったのかな」
矢儀は、すぐに訂正を入れた。
「いや、最後の住人は、“ミコさん”って話だった」
「だったら、余計に……どうしてフジヨシさんだと、思ったんでしょうか?」
「で? どこが事件なん?」
進まない遣り取りに、兼行が痺れを切らす。
矢儀は「稔さんと美紀さんの話には続きがある」と、核心に迫った。