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はじかれ者中学生3人が『禁忌の石段』の謎を解くミステリー小説
その石段、通るべからず
矢儀も織田村も、豪快な拭きっぷりに思わず目が向く。
だが、兼行は、注がれる視線にまるで気づかない。どこか上の空で、二枚目の雑巾に手を伸ばす。と同時に、ようやく我に返ったらしい。
「なんだよ?」と、とびきり不機嫌な顔で睨んできた。
「いや、しっかり拭いちょけよ」
矢儀は、笑顔で伝える。
「風邪なんか引いちょられんぞ。明日も未遠に行くんじゃけぇ」
「はぁ?!」と、兼行は、批判色の強い頓狂な声を上げた。
「部活は火、金じゃろーが! 明日は水曜日だ」
「そうですよ。行くなら、部長一人で行ってください」
織田村も、噛みつかんばかりの勢いで反対してくる。
矢儀は「ほぉ」と、眼鏡までずぶ濡れの織田村を、チラリと見た。
「臨時の部活動は、部長が決めるんじゃったよの。なのに、部長一人で行けとは……」
机の上のボロ雑巾を一枚手に取りながら、矢儀は、穏やかな口調で続ける。
「まぁ、部活動はたいして内申には響かんけど。だだ、教師は案外見ちょるからの」
水滴が滴るシャツの裾に雑巾を被せて、ギュッと絞ってみる。思った以上に、水気が取れた。繰り返し絞りながら、矢儀は、さらに独り言を続ける。
「”実は陰じゃあ不真面目な生徒”なんて烙印を押されちゃあ、何かにつけ、教師から色眼鏡で見られるかもなぁ。内申なんて、所詮、教師目線の採点じゃし。ちなみに、最近の受験は、成績と同じくらい内申も重要視されるらしいぞ。もちろん――」
一拍置いて、矢儀は笑顔で織田村に向き合う。
「俺は、いちいち教師に告げ口なんて、子供じみた真似はせんけどの」
織田村の顔に、勃然たる色が浮かぶ。
最後に取って付けた ”内申”の一言は、絶大な効果だったらしい。
「行きますよ! 行けばいいんでしょ!」
織田村は、鼻の穴を膨らませ、激高する。