■「毎日湯船に浸かる」が見た目の若さを保つ
多忙な現代において、毎日の入浴を「シャワーだけでサッと済ませてしまう」という人は多いもの。確かに時短ではありますが、血管の若返りやアンチエイジングを本気で考えるのであれば、私は中高年以降はできる限り毎日、湯船に浸かることをおすすめしています。
湯船に浸かる習慣は、体を温めるだけでなく、見た目の若さを保つための「極上のメディカル・トリートメント」だと考えて欲しいのです。
入浴がもたらす若返り効果は、主に次の3つです。
①血管を若返らせる「一酸化窒素(NO)」が溢れ出す
お湯に肩まで浸かると、温熱効果に加えて水圧によって全身の血管が適度に圧迫されます。すると、滞っていた血液が勢いよく心臓に戻り、全身の血流がぐんとよくなります。
このとき、勢いよく流れる血液で血管が拡張し、その内壁の血管内皮細胞から若返りの特効薬である「一酸化窒素(NO)」が大量に分泌されます。
NOには硬くなった血管を柔らかく広げ、内壁の傷を修復する作用があるのは、先に述べた通り。毎日の入浴は、このNOのシャワーで血管を内側からマッサージすることになるわけです。
■夜間の高血圧が心筋梗塞や脳卒中の引き金に
②夜間の血圧を下げる
入浴をすると一時的に血圧が変動しますが、お風呂上がりにはNOの働きで血管が拡張した状態が続くため、就寝中の血圧がスッと下がりやすくなります。
夜間の高血圧(夜間高血圧)が心筋梗塞や脳卒中のリスクを大きく高めるのは、本来休まるべき時間帯に心臓や血管へ過剰な負荷がかかり続けるためです。
通常、人の血圧は睡眠中に日中より10%〜20%ほど低下することで血管や心臓を休ませる仕組みになっています。しかし、夜間も血圧が高いままだと血管に強い圧力がかかり続けることになり、動脈硬化を加速させてしまうことに。また、休む暇がなくなる心臓にも負担が大きくなります。
そのため、夜間の高血圧は心筋梗塞や脳卒中などの引き金となるため、お風呂で血管をリラックスさせておくことは、そのまま血管の寿命を延ばすことに直結します。
■43℃の温浴では水分量が減少して皮膚が乾燥
③肌の水分量アップ&ターンオーバーの正常化
入浴による温熱効果で血行がよくなると、皮膚へ送られる血流量も平常時より格段に増加します。すると、毛細血管から肌の細胞へ届けられるその材料たち――酸素や栄養、水分がたっぷり送られることに。結果、内側から肌が潤い、新陳代謝も正常化され、くすみのない肌に整うでしょう。
実際、愛媛県立医療技術大学の研究によれば、37℃および40℃の10分間の温浴で角層水分量が増加することがわかっています。これは一時的なものではなく、持続してその効果があることも確認されています。
ただし、同研究では「43℃の温浴」では「水分量が減少して皮膚が乾燥した」という真逆の結果が出ています。つまり、肌を潤わせる入浴温度は「37℃および40℃」というぬるめのお湯であることが重要ということ。
熱いお湯につかると逆効果になるので、注意してくださいね。
入浴の持つ若返り効果がわかっていただけたところで、次から具体的な「池谷式若返り入浴法」をご紹介しましょう。
■血管と肌を若々しく保つ「若返り入浴法」
血管と肌を若々しく保つために、私も毎日、入浴時にはお湯に浸かるようにしています。おかげさまで、血管年齢は実年齢よりマイナス26歳、肌を褒められることもしばしば。
しかし、間違った方法での入浴は、前項の通り、肌を乾燥させたり、脳や心臓に負担をかけることも。
せっかくの若返りタイムを台無しにしないため、私が毎日入浴時に実践している方法をお伝えしておきましょう。
若返り入浴ポイント① 就寝2時間前に入る
ぬるめのお湯で深部体温をしっかり上げると、お風呂上がりから90分〜120分後にかけて、体温が急降下します。この「体温の落差」こそが、脳に強力な眠気のスイッチを入れ、血管の修復が行われる「質の高い睡眠」へと導いてくれます。適切なタイミングで入浴すれば、その後の睡眠の質も高まるので、相乗効果で若返る……ということ。
この恩恵を受け取るためにも、夜10時に就寝するなら夜8時頃までに入浴を済ませる……ということを習慣にしてください。
若返り入浴ポイント② 湯温は「37℃~41℃」
41度以上のお湯は、入浴後に肌を乾燥させるのでNGです。先にお伝えした通り、肌を潤わせる「37℃〜41℃」のぬるめのお湯に設定をしましょう。
私がそうアドバイスすると、「熱いお湯に入らないと疲れが取れない」という声もありますが――43℃以上の熱いお湯は交感神経を刺激して血圧を急上昇させる「驚愕反応」を起こしてしまうので、中高年以降はやはりおすすめしません。脳梗塞や心筋梗塞などの事故につながりかねないからです。
熱めのお湯に触れることで、体を戦闘状態にするホルモン「アドレナリン」の分泌も高まり、血圧上昇が加速することがあるため、避けたほうが無難です。
■死亡事故につながる血圧の乱高下を徹底予防
若返り入浴ポイント③ ヒートショック対策を万全に
中高年の入浴において絶対に守っていただきたい注意点が、急激な温度変化による血圧の乱高下、いわゆる「ヒートショック」の予防です。
冬場などに冷え切った脱衣所で服を脱ぐと血圧が急上昇・急降下を起こし、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす危険性が非常に高くなります。
入浴中の死亡事故は年間およそ8000人程度おり、そのうち高齢者が9割を占めているため、中高年になれば他人ごととは言えません(厚生労働省「人口動態統計・令和6年」より)。
事故を防ぐため、まず、入る前には脱衣所を小型の暖房機などでしっかりと温めてほしいのです。気温の低い冬場は、脱衣所で服を脱ぐだけでも血圧が大きく変化することが珍しくありません。
寒さを感じない程度まで十分に温めてから服を脱ぐようにしてください。浴室もお湯を張る際にシャワーを高い位置から出して給湯したり、壁に温かいお湯をかけましょう。
かけ湯をして体をお湯に慣らしたら、いきなり肩まで浸かるのではなく、まずは「みぞおち」の高さまでゆっくりと浸かり、水圧による心臓への急激な負担を避けましょう。体が温まってきてから、徐々に肩まで浸かるようにしてください。
■「湯船から急に立ち上がる」が立ちくらみに
また、長風呂は脱水症状や心臓への負担を招くため、湯船に浸かる時間は「10〜15分以内」にとどめましょう。
最後に、湯船から出るときは、「頭の位置を低く保ちながら、膝と腰を曲げた姿勢で、ゆっくりと立ち上がる」ことを徹底してください。
急に立ち上がるとお湯の水圧から一気に解放されるため、血液が下半身にドッと下がり、脳に血が回らなくなります(脳貧血状態)。
これが浴室での立ちくらみや転倒につながるので注意してください。