63歳のエヴェレスト | Talk Like Climbing

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山男洲鎌猛雄の山・クライミングとそれにまつわるエトセトラのブログです。

なお、いかなる団体、企業とも関係ない一個人のブログです。

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渡邉玉枝著。白水社。

2002年、女性最高齢でのエヴェレスト登頂を成し遂げた著者の本。そこに至るまでの若い時からの話が綴られている。

正直な話、それまでマッキンリー南壁の登攀が印象的だったので、激しい登攀をしてきた人だと思っていたのだが、読んでみると登山は始めたのが27歳、普通の山歩き程度が主体で、38歳でいきなりマッキンリー南壁に行くため岩登りを始めたこと、その後もツアー登山でマッターホルンやキリマンジャロに行った位で、アコンカグア行った後50代半ばでヒマラヤ登山を始め、とうとうエヴェレスト登頂までしたという、一般的な感覚で言うとかなり遅咲きな人。読みながら「あれ、そうだったの?」と思うことも多く、そういう意味でも新鮮だった。

この人の偉いところは、そんな自分をおごらず、淡々とした文章で振り返っていること。そこには目標に向かって艱難辛苦に耐え、という重苦しいものはなく、自然体で山や自分自身に向き合っている姿が垣間見える。そういう肩の力を抜いたスタイルが、順応を主体とする高所登山に向いているのかもしれない。実際パワフルな印象は受けないが、低酸素には強いようにお見受けした。

一つ一つの話があまりに淡々とし過ぎて物足りない気がしないでもないが、人生遅過ぎるということはないと教えられる一冊。よかったらどうぞ。