長田区は神戸市にある区の中で一番面積が小さく(11.36平方キロメートル) 、南側
は特に工場や商業施設が多く住宅地と言うよりは産業区のイメージでした。
 震災前のデータで神戸市長田区には靴関係だけでなく、小さな商店や様々な業種を含め、
約4200の経済活動を行っている事業所が存在していたとされています。
それが震災から10年後には約4200あった様々な会社・事業所・商店が約2200
(52%)約半分にまで減ってしまいました。
この数字は震災直後の年にかなり減ったのも事実であるが、実は年々減少していきこの数
字になりました。
震災だけが全てを失わせた分けではなく、他にもに不幸なタイミングがこの10年間に
重なってしまったのです。
 震災前からバブル経済崩壊による長引く不況、平成9年に実施された消費税増税も大き
な要因でした。
当時、我々のメンバーで当時物流関係をしていた人間は取引先の靴問屋の社長に呼ばれ
「実はウチの取引先の A 社(大手の百貨店)のバイヤーから消費税増税分の2%分を値引
きするセールを行うので仕入れ先のウチにもその分を被れと言ってきている。
j条件を飲まないと取引が危なくなるから、そうしないとならない、そのせいでウチも苦しいから、
そちらもその分運賃を協力して、増税分を上げない様に協力してくれ、協力してくれない
なら他社に乗り換えるぞ。 」と言われたそうです。
確かにその当時、大手スーパーや百貨店などで、増税分は頂きません、価格は 3%分で据え
置きセール等を沢山やっていたのを覚えている方もいらっしゃると思います。
 しかしそのセールの増税分の差額は小売店が全て被っている訳でなく、仕入れ先やその
荷物を運ぶ運送会社にその負担を負わせて成り立っていたのです。
税金を国がサービスしてくれる訳では無いので、その消費税2%の差額はそこに至るま
での人々が売上でなく利益を削っていたのです。
利益の2%では無く価格の2%なので、それぞれの利益率の低下は2%にとどまりません。
仕入れや運賃等は2%増税でコストが上がっているのに、値上げどころか値下げを弱い立
場に強要する、今でこそ社会問題にもなる下請け苛めですが、当時は普通に成り立ってい
たのです。
 このような状況では売上や利益も増える筈が無く、それでなくても震災で疲弊した街の
経済は一層冷え込むことになり、当時、長田地区の殆どのメーカーや問屋が悲鳴を上げ、
嘆いていました。
 こうして増税や不況で経済的ダメージをった街にさらに追い打ちをかける不幸な出来事が
起こります。
それは産業構造の劇的な変化です。