書紹介しましょ。

今回はこちら。


殺戮にいたる病

著)我孫子 武丸 先生



単行本としては1992年9月に発売された作品です。

綾辻行人先生の「十角館の殺人」が1987年9月に発売されていますので、その後の新本格ミステリの時代ですね。


今回もネタバレ無しでご紹介しますが、まず初めに。

この作品は読む人を選びます。

なぜかと言いますと、本作では連続殺人事件が発生しますが、その際にかつてないグロテスク描写等の過激な表現が多用されており、倫理的にアウトな表現もあるからです。

表紙は特大帯の仕様ですが、ここからでもおどろおどろしい内容である事が想像出来ますね。

それでも問題無いという方には是非ともおすすめの作品です。


ちなみに特大の帯を取るとこうなります。

恐らくこっちの表紙の方が多くに知られているかと思います。



さてそろそろ本題に。

今作の構成としましては、いきなりエピローグから入ります。

そしてその結末に至るまでの物語が後に記されていきます。

ですので初めから犯人は分かっている状態からスタートし、その犯人と彼の周囲の他2人の視点をメインに綴られます。


他2人というのは、母親と刑事です。

刑事の視点ではもちろんの事、その犯人が犯す連続殺人事件において犯人を推理し追求、多くの手を使って追っていくパートです。


母親視点では、とある事からもしかすると自分の息子が犯人なのではないかという疑惑を膨らませつつ否定し、それでももしかしたらという念から探りをしていくパートです。


ちなみに犯人視点では、当然のようにその異常性をもって猟奇的な殺人を行い、思うがままに自らを満たしては枯渇、そしてまた満たすという事をひたすらに繰り返す凄惨なパートです。


当然ではありますが、やはり犯人パートで目を背けたくなる人が続出し、途中で読むのを断念される方がいるようです。

それでも読まれる方もいて、曰くグロテスクだけど読んでしまうという感想を持つようです。


私としてはグロテスク表現に耐性があるので、問題なく最後まで読む事が出来ましたが、やはり一般大衆としては最後まで読むのに勇気がいるなと思いましたね。


読了後は、というか終盤を読むにつれて「えっ…待って。どういう事?」という感想が込み上げてきまして、そして最後の最後で「???」という驚きとはたまたしてやられたという多くの感情が入り混じった感想を抱きました。


それで暫くは物語を思い返してみましたが、朧げに「そういえばこうだったかな……」という気持ちになります。


論破王ひろゆきさんが今作を非常におすすめをされていまして、曰く「2回目を読まなかった人はいない」と言っていました。


私もその1人です。

確認のために読み返していました。

実は一度読んだ作品はそうそう読み返す事はないのですが、今作に至っては読み返さざるを得ない、いや、読み返して多くの疑問点を解消したいという衝動に駆られてしまいました。


それで読み返すと全てに納得です。

そして巧妙なトリックや表現方法に感服し、特殊な作品ではありますが、間違いなく名作だと思いました。


表紙にある「これを読まずにミステリーを語るなかれ」の言葉に相応しい作品でした。


殺戮にいたる病。

非常に面白かったです。


では今回はここまでです。

初めに記させて頂いた通り、今作は読む人を選ぶ作品となりますので、グロテスク表現等の過激描写があっても大丈夫という方は是非お手にとってはいかがでしょう。


ではまた。