懲役刑禁錮刑を廃止し、新たに「拘禁刑」を創設する刑法の改正案が、

先週8日に閣議決定されたとの報道がありました。

 

もともと、この改正案が報じられたのは昨年秋で、

一本化したあとの名称についてもすでに「拘禁刑」を軸に検討・・・

と報道されていたので、そのまま決まった格好です。

ただ、このとき刑法の専門家などの有識者に名称について、

聴き取りを行ったらしいのですが、なんと候補案が16もあったそうで。

 

こう聞いてしまうと、他の惜しくも(?)落選した名称案が、

気になってしまうのが私の性格です。

調べてみると、この専門家への聞き取りの記録が政府から公表されていました。

 

「新たな自由刑の名称に関する意見交換会」

昨年令和3年9月27日(月)、午前10時から1時間に渡って開催されていました。

そして、16の名称案、しっかり記録されていました。

それでは、みていきたいと思います。

 

あえて専門家の方々の意見部分は読まずに、

私の初見の短評を勝手ながらつけていきます。

 

①刑務所収容刑

さすがに1番目にくるだけあり、直接的で分かりやすいですね。

ただ文字数が多い気がします。

 

②自由剥奪刑

2番目も分かりやすいですね。

何をされるか、はっきり分かります。

 

③拘居刑

「居」という文字が入って、長く居させられる感じがしてきます。

 

④拘禁刑

もうこれに決まったと分かっているせいか、しっくりきてしまいます。

「拘禁」も、もともとある言葉ですし分かりやすいです。

 

⑤拘置刑

すでに「拘置所」という施設があるので、そこに入れられる刑のように誤解しそうです。

 

⑥収容刑

「収容」という言葉は、「怪我人を病院に収容する」等、使いますので、どうでしょうか。

保護しているような感じがします。

 

⑦自由刑

原点回帰です。自由を奪う刑、自由刑。

ただ、「自由にしていい刑」のように、感じられてしまうかもしれませんね。

 

⑧矯役

⑨矯戒

⑩矯置

「矯正」の「矯」シリーズ3部作です。

あったら怖いですが、就業規則の罰則の章に出てきそうです。

 

ここからは、一気にみていきます。残り6個です。

⑪禁居

⑫拘役

⑬囚戒

⑭囚導

⑮懲治

⑯罰居

「懲」という字、もっと早めに登場するかと思いましたが、15番目です。

自由刑以降は、同じような意味を表す漢字を組み合わせた

二文字熟語大喜利のような印象です。

事実上、前半7つの争いではないでしょうか。

(もう決定していますが)

あらためて、有識者の方々のご意見を拝見いたしましたが、

ほぼ全会一致で「拘禁刑」でした。

 

ところで、現行の「懲役」と「禁錮」、そもそもどちらが重いのでしょうか?

まずは条文の確認です。

 

刑法第9条 (刑の種類)

死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

 

刑法第10条 (刑の軽重)

1 主刑の軽重は、前条に規定する順序による。

ただし、無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑とし、

有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるときも、禁錮を重い刑とする。

2 (略)

3 (略)

 

刑法は、第9条で刑の種類、第10条で刑の軽重を定めています。

第10条第1項の規定により刑の重さは、第9条の並びの順になりますので、

懲役が禁錮より重い事になります。

懲役は労役を科されるのに対し、禁錮は労役がありませんので、一応は納得です。

しかし、但し書きが続きます。

「無期の禁錮と有期の懲役とでは禁錮を重い刑」。

いくら労役を科されないとはいえ、無期となると、

さすがに有期の懲役より重いということですね。

また双方が有期の場合、2倍を超えるときも禁錮が重い刑となります

 

ただし、この禁錮刑。

ただ檻の中にいればよいというわけでは、ないらしいです。

歩き回ることはできず、基本、あぐらか正座、ずっと看守がついているそうです。

結果、ほとんどの受刑者が自ら希望して、労役につくとのこと。

そういうことも今回の一本化の理由の一つだそうです。

 

「懲役2年にしようと思ったけど、可哀そうだから禁錮3年にしといたるわ」と

言われたらかなりショックです。