自分ではどうにもし難い状況が、人生には度々起こります。


その一つが、自分の、或いは自分にとりまして大切な人の死が有るでしょう。


その為、癌の様に致死的な病気と分かりますと、人は衝撃を受けるものだと思います。


私もちょうど一年前、大腸癌である事が分かりまして、

「9月は迎えられない」

とお医者さんから言われました時は、頭が真っ白になりました。


先週、こんなニュースを目にしました。


現在は患者自身が主体的に治療方法を選ぶ時代ですので、主治医の説明をしっかりと聞いた上で理解をし、自分で決めなければいけません。


そして私は、標準医療を選択しました。


日本の病院で勧められております標準治療は、現段階で最も治癒可能性が高いというエビデンスがベースになっている治療法です。


とはいえ、人は自身の選択を好む傾向に有ります。


 主治医に「根治できるのは手術だけ」と言われましても、複数の方法から自分が最善と思える方法を選びたくなるものです。

(私の場合、それが標準医療だったという話です)


しかも、手術や抗がん剤などの治療は、自分の努力が及びにくい方法です。


状況を自分でコントロールしたい、コントロールできるはずという意識が働きまして、標準治療以外の方法を選択する人は、残念ながら存在します。


これがコントロール可能性の認知、或いはコントロール幻想バイアスと呼ばれるものです。


自分自身では状況に影響を与える事ができない事柄につきまして、自分が、或いは自分が所属する集団がコントロールできるという思い込みですね。


僅かな可能性しかない場合に於きましても、その可能性を高く見積もるというプロスペクト理論が働きます。


標準治療をやめまして民間治療に賭ける事のリスクは、あまりにも大きいものです。


スティーブ・ジョブズ氏はすい臓癌が見つかりました時、手術を断固拒否しまして代替療法を選択し、食事療法などの多くの方法を試しましたが、その結果、他の臓器に癌が転移しまして56歳でこの世を去りました。


己の道を切り拓き、状況を自分自身で統制ができた人ほど、このバイアスは強く出る様です。


ポジティブな人は、リスクを正確に判断する力が、ネガティブな人よりも低いそうです。


そもそも、経済学の原点は、

「誰かを喜ばせた対価として、お金を受け取る事」

と“経済学の父”と呼ばれておりますアダム・スミスが提唱した事にあります。


付加価値がキチンと価格に乗っておりましたら、多少値段が高くてもお客様は喜んでお金を払って戴けます。


これは、良い金儲けです。


しかし、人の弱みに突け込んで価格を吊り上げました価格に、お客様の喜びは着いて来ません。


つまり、これは悪い金儲けです。


とはいえ、現実にインチキ医療やインチキサプリメントといった、人の弱みに突け込んで儲ける輩が存在している訳です。


自分はカモられていないか?


カモられない為にも、エビデンスの確認が大切になって来る訳ですね。