今月8日に最高裁判所第1小法廷(桜井龍子裁判長)で,朝鮮民主主義人民共和国で製作もしくは発行された著作物の日本においての著作権侵害問題に関する判決が下されました。
北朝鮮の記録映画を無断でニュース番組で使用され、著作権を侵害されたとして、北朝鮮の朝鮮映画輸出入社と日本の配給会社が国際著作権条約(ベルヌ条約)に基づき日本テレビとフジテレビに、放送差し止めと損害賠償を求めた訴訟の上告審判決です。
同判決は極めて重大な問題を孕んでおり、国際著作権条約(ベルヌ条約)に加盟している同盟国の中に、日本に対する不信と国際的信義の希薄さを示すことになり、場合によってはベルヌ条約の効力そのものに疑義を持たせることにもなりかねない危険な判決でした。
裁判の争点は、例えベルヌ条約の同盟国ではあっても、日本国が承認していない未承認国との間で国際条約上の権利義務が発生するかという点にあり、同小法廷は、「国際条約に未承認国が加入しても、直ちにその国と権利義務関係が生じるとはいえず、わが国は権利義務関係を発生させるか否かを選択できる」との初判断を示した(8日、産経新聞)のです。
要するに国際条約に基づく相手国の日本国における権利義務を認めるかどうかを国際条約に従って判断するのではなく,日本国の恣意的な判断によって決まると言うとんでもない判決です。こうなっては国際条約も何もないことになってしまいます。国際条約であっても相手国の権利義務を認めるかどうかはひとえに日本国の判断によるというのですから。
しかも問題はそれに止まりません。最高裁はその判断の根拠について、第1に日本政府は朝鮮がベルヌ条約に加盟したことを告示していない、第2に日本外務省と文科省は朝鮮の著作権を守る義務はないとの立場を表明していることを挙げています。つまり日本政府の見解に裁判所が従うということであって、ここには三権分立の原則に基づく司法の独立した姿勢が微塵も見られません。
さらに、ベルヌ条約が相互主義を採用していることを考えねばならないでしょう。つまり朝鮮も日本とまったく同じ姿勢を取ることができると言うことです。すでに朝鮮の著作権事務局は仮に朝鮮で日本人著作権者の権利を侵すような事例があっても,「それを取り締まる法的根拠を失うことになる」との正式見解を裁判所宛に書面で送っています。
つまり朝鮮で日本の著作物を合法的にコピーし、販売することができることになりかねず、またそうした危険性があるということを指摘しつつ、仮にそうしたことがあってもそれを法的に取り締まる根拠がなくなると警告しているのです。何しろ朝鮮での日本の著作物のコピーは最高裁の判決に従った合法的なものになり、日本人著作権者はその取り締まりを法に訴えることが出来ないわけですから。
もちろん朝鮮は社会主義国であり、朝鮮の人々にとって日本の映画やTVドラマやアニメナなどは、大体がくだらない、低質、堕落している、卑猥、人間の世界ではなく動物の世界、吐き気がする、などなど、見たくも聞きたくもないというのが一般的ですから、日本の著作物のコピーが飛ぶように売れることはないでしょう。実際上、いらないものばかりですから。
しかし、参考書や辞書の類いやノウハウ本などはそれなりに売れるかも知れません。またそうでないものでもそれを他国に売ったり、ネットで世界に流したりすることは出来ます。もっとも管理人が知る限り朝鮮政府当局は,ベルヌ条約は守られるべきであり、「そんな非道得的なことは考えていない」との立場だと言います。だが、国民全てが同じ立場だとは考えられません。これを思ってもいなかったビジネスチャンスだと受け止めるかも知れません。そうなると朝鮮でコピーされたものが世界に出回ることは容易に想像できるのであり、それはつまり日本国が日本人著作権者の権利を投げ捨てたことになるのではないでしょうか。
TV局の僅かな利益のために、日本人著作権者の権利を保護すべき日本国がそれを平気で放棄しているような事態を、このまま放置しても良いものでしょうか。禍根が気になります。日本の著作権者らの声を聞きたいものです。
