昨年10月の第2回朝米高位級会談が,「大きな進展を見せた」(朝鮮の金桂冠第1外務次官)後、今まで開催されなかった第3次朝米高位級会談が23日に開催されると言います。当初第3次会談が12月には開かれるだろうと見られていたのですが、キム・ジョンイル国防委員長逝去のために延び延びになっていたものです。21日には金桂冠第1外務次官が平壌から空路北京に到着しました。一方、6カ国協議の日本首席代表、杉山晋輔外務省アジア大洋州局長が中国に滞在していることが分かっています。米国のデービース北朝鮮担当特別代表は24日には韓国入りし、26日には日本に入るとのことです。第3次会談の状況報告と今後の協議のためでしょう。
ところで朝米会談はやはり朝鮮のウラン濃縮問題と6者会談再開問題を巡って論議されるものと思われます。日本の報道ではこの問題がアメリカの対朝鮮食糧支援と北のウラン濃縮作業の中止のトレードでもあるかのように書かれていますが、それは韓国の御用新聞を書き写した程度のもので、問題の本質を見落としています。そこでその点について書こうと思います。
元来、アメリカの対朝鮮食糧提供問題は、2011年の始めにアメリカが2009年に政治とは関係なく50万トンの食料を提供すると公約しておいてそれを途中でボイコットしたことから残った33万トンを、すべて提供するとしたことから始まった問題であって、それが今もって実現していないばかりか、昨年の12月15~16日の北京協議でアメリカは、食料ではなく「栄養補助食品」を基本に毎年2万トンづつ1年かけて総24万トンを提供すると提案したのに対して朝鮮が異議を唱え公約通りに履行すべきだと追及した問題です。これはアメリカの食料提供問題がウラン濃縮問題とトレードの対象にもならないものである事を意味します。
ところが2011年7月のジュネーブ会談でアメリカが突如、政治とは関係の無い人道的支援だとして提案していたこの問題をウラン濃縮の臨時中止(モラトリアム)を始めとする信頼構築措置と関連付け、朝鮮がモラトリアムなど信頼醸成措置を取ったら食料を提供するとアメリカ自身がこの問題を政治問題化したのです。
以前の協議で政治とは関係なく提供すると合意を見、それなりの対価を手に入れたにもかかわらず、約束を不履行し、今度は約束を履行するのでこうしろと話にもならない交渉を仕掛けてきたわけです。ましてや朝鮮にとってはアメリカの対朝鮮食料提供を公約通りに履行するかどうかは、食料提供問題自体よりも、今後のアメリカとの協議においてアメリカの約束が本音なのかどうか,アメリカが信義を守る国かどうかを見極める重要なメルクマールとしています。
朝鮮外務省の代弁人が朝鮮通信社が提起した質問に対する回答の中で、「我々はアメリカに果たして信頼醸成の意思があるのかどうか見守る」とはっきりとした姿勢を見せています。
つまり日本の新聞報道やTV報道は完全にアメリカサイドに立っており、独自の研究や追跡など無くただ韓国のマスゴミの論調をそのまま受けて流しているだけだと言うことです。
ところで韓国にとって,このニュースはあまりありがたくないものです。元来韓国の姿勢は朝米会談に先んじて南北会談を通じた関係改善をいくつか実現することで、6者会談での発言力を高めたいというものでした。またアメリカも「戦略的忍耐」という格好付けのロジックに基づいた対朝鮮戦略を変更するだけの口実が必要でした。そこで朝鮮南北の対話の進展を口実に「戦略的忍耐」から抜け出て朝米会談に臨むと言うのが基本的戦術でした。
ところが韓国の2MB政権は昨年5.24措置を講じ自ら朝鮮北南の一切の対話を遮断し、出口を塞いでしまいました。これに対し朝鮮は2月4日のブログでご紹介したように国防委員会が9つの公開質問状を2MB政権に送り、この質問状に明確な回答が無い限り、一切相手にしないとの最後通告をつたえています。つまりこの時点で南北対話先行論は消え去ったと見た方が良いでしょう。昨年の2回の朝米高位級会談は、2MB政権が一切の対北関係を遮断したその状況下で行われたのです。韓国にとっては身も蓋もない話であり,それが今年に入ってから韓国が突如として選択的に南北対話を主張している原因です。
もちろんアメリカにとってもあまり騒いで欲しくない話です。仮に朝鮮が「食料支援はいらない。しかしウラン濃縮のモラトリアムもない」と言ったらアメリカはそれこそ窮地に立つことになります。はっきり言って今のアメリカにはそれを受けて立つほどの力も余裕もありません。実際そうなるとアメリカは対朝鮮武力威嚇しか道はありませんが、そうなるとイランと朝鮮の二つの戦線を負担しなければなりません。是非避けたいところでしょう。
そこで登場するのが食料とウラン濃縮モラトリアムのトレードです。対朝鮮交渉で再び世界の面前で膝を屈することは出来ないので,アメリカの対朝鮮外交の「合理性」を繕う必要があるのです。しかし、アメリカが朝鮮が要求もしていない50万トンの食料を提供すると進んで公約しながら、それをボイコットしたことについて、朝鮮側からしつこくそれを催促したという話は伝わってきません。つまりあっても良く、なければアメリカの言葉は信じられないと言うことで終わっているのです。これは朝鮮の食糧事情が騒がれるほどに逼迫していないことの今ひとつの証だと見ることができるでしょう。また現在の朝米関係を見る上で大事な点です。完全にアメリカが守勢に回っているということです。
去年の第2回朝米高位級会談が,「大きな進展を見せた」と言われていますが,だとしたら今回の会談でその「大きな進展を見せた問題」の具体的な措置に関する協議が行われる可能性もあります。もっともアメリカとしては朝鮮の最高指導者が変わったことから「探索戦」と位置づけているかも知れません。しかし朝鮮の立場は一貫しており、最高指導者が変わったからと言って対米外交戦術が変わるようなことはまず考えられません。
つまり「探索戦」という認識で会談に臨んだとしたら、朝鮮側のきつい追及に直面することになると思って良いでしょう。そして昨年「大きな進展を見せた」事の再確認と、それに対するアメリカのはっきりした,公式の言動がある事を要求すると思われます。
にもかかわらず、報道されているような見方をしていては,今後の朝米会談の進展について正確に見ることができそうもありません。やはり朝鮮問題(朝鮮の南北関係、朝米関係)は、韓国の御用マスゴミや日本のマスゴミのように,当局発表をなぞっているだけではだめなようです。マスゴミに乗せられず,しっかりと自分の目で確かめながら慎重に相対していくことが望まれます。
