「銀河3号」打ち上げ失敗をどう見る(上) | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

朝鮮が「銀河3号」の打ち上げ失敗しました。管理人はこれまでこの問題について触れてきませんでしたが、それはつぎのような理由からでした。第1に「銀河3号」の発射は朝鮮の宇宙開発5カ年計画の一環として準備されてきたものであり、特別な政治的な狙いを持ったものではなかったと言う事、第2にしたがってその成功如何が朝鮮の政治、特に外交政策を大きく作用することは無いと判断されるため、第3に同じ時期に韓国では総選挙が行われ、多くの予想にもかかわらず野党が敗北したと言う点。これは必然的に今後の韓国政局に大きな影響を及ぼすことが考えられることから、日本政府としても大いに関心を持つべき事だと判断される。


以上の理由から、管理人は「銀河3号」の問題よりも韓国での総選挙により強い関心を持っていたので、それについて先に書くことにしたわけです。
おかげで「銀河3号」について書くタイミングを逸したのですが、「朝鮮宇宙空間技術委員会」が19日、「銀河3号」の失敗と関連して談話を発表したので、それにかこつけてこの問題について書こうと思ったしだいです。


さてその前にこの問題と関連して特にTV報道を見ていて何とも情けない思いがしたので、まずその点について簡単に指摘したいと思います。TV報道は判で押したようにまったく同じ視点で、またもや朝鮮バッシングにいそしんでいましたが、、日本政府の情けない対応について非難し、指摘している番組がまったく見られなかったのが本当のところです。メディアがまるで政府の公報の役割を買って出ているのです。


事実産経新聞などは、日本政府の対応について『北朝鮮の「人工衛星」と称する長距離弾道ミサイル発射に際し、政府は国民への情報発信に完全に失敗した。発射をただちに覚知しながら裏付けに手間取り、「発射は未確認」と発表した約20分後に「飛翔(ひしょう)体が発射された」と説明するなど対応は二転三転。Jアラート使用は日本飛来時に限るとの方針を自治体に周知することも怠り、民主党政権の危機管理能力に不安を残した。(千葉倫之)』と書いています。


4月14日(土)7時55分配信の記事は『防衛省は発射直後の午前7時39分、発射の熱源を捕捉する米国の早期警戒衛星情報(SEW)を把握した。ほぼ同時に藤村氏(官房長官)や官邸の危機管理センターに設けられた対策室にもSEWの連絡があった。ところが、対策室が「Em-Net」(エムネット)で全国の自治体に一報を流したのは約20分後の午前8時3分。しかも「わが国としては発射を確認していない」という内容だった。さらに約20分後、田中直紀防衛相が「何らかの飛翔体が発射された」と正反対の内容を発表した。発射失敗で自衛隊レーダーは探知に至らず、その間に外国メディアが「発射」と速報した。』


朝鮮が「銀河3号」を発射すると発表したのを受けて防衛大臣は、「弾道ミサイルの破壊措置を命じることを考えている」と国会で表明し、やがて政府が「破壊措置準備命令」を、引き続き「破壊措置命令」を発して自衛隊の具体的な動きが始まると、マスコミは以下のようなタイトルで報道を開始しました。 「田中防衛相、破壊命令決断へ」「PAC3を首都圏でも配備」「政府"ミサイル"に備え破壊措置命令を発令」「ミサイル迎撃部隊が移動」「PAC3の展開開始 自衛隊が迎撃態勢」「北ミサイル迎撃へ、イージス艦『きりしま』出港」「PAC3搭載の輸送艦出港 呉基地から宮古島へ」「石垣島に自衛官450人 PAC3配備伴い」「PAC3が那覇と宮古島に到着」「石垣島に迎撃用のPAC3到着」


何とも物々しい騒ぎ方です。まるで完璧な対応策を講じたかのようです。ところが実際には日本政府が「銀河3号」発射の情報をキャッチしたのは発射から30分も遅れてでした。実践であったらミサイルが着弾して初めて発射されたことが分かったと言う事になります。


ところがこの体たらくに対し、非難し追及するTV番組は全く目立たなかった(管理人が見た限りでは)のです。実際のところ日本にとって最も大事なことはこの点でしょう。なぜそうなったのか具体的な検証が必要な部分ですが、この点を追及するメディアはありませんでした。メディアが政府公報機関に成り下がっている証左です。まるで御用組織のようです。こんなマスメディアが、国民の意識をミスリードするのであり、そのようなマスメディアに国が危険な道を歩むことに警告を発する事は到底期待できません。


さて国連安保理は例によって議長声明なるものを出しました。しかし何度も指摘しているようにこの議長声明は、前の安保理決議1874号と同じように国際法(宇宙条約)が主権国家に与えている権利を踏みにじる不当なものです。安保理にそのような権利はあたえられていません。安保理の見解によれば日本のH2Aも国際条約違反です。日本は宇宙条約にも大量破壊兵器拡散防止条約にも加盟しています。H2Aもミサイル技術を利用したロケットであり、したがって事実上ミサイルなのですから、日本は堂々とこの国際条約に違反していることになります。ところが安保理はこれを何ら問題にしていません。アメリカも黙っています。これは明らかにダブルスタンダードであり、いかなる正当性も見出すことが出来ません。朝鮮の「銀河」ロケットの発射に対する安保理の決議は、言わば力のごり押しであって不当極まりないものだと言うことです。


あまり良いたとえではありませんが、例えば精神異常者は危険なので隔離する必要があり、その自由も束縛される必要があるとしたら、皆さんは賛成できるでしょうか。まず、精神異常者が「危険」だという判断は正しいでしょうか。それに彼にも人権はあるはずです。精神異常者だからと言ってその人権も制約されるべきだとは誰も言わないでしょう。ところがこうした論理ならぬ論理がまかり通っているのです。この点をじっくりと考える必要がありそうです。


さて朝鮮が「銀河3号」の打ち上げに失敗したことや、安保理議長声明が出たことを持ってはしゃいでいるレイシスト達がいます。政治家にもマスディアにも一般の市民の中にもいます。
だが、はしゃぐ前に失敗した朝鮮の意見、考え方をまず知る必要があるでしょう。それについては次回ご紹介します。(つづく)