衛星発射予告に茫然自失の日本 アメリカは計算の上での対応(上) | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

今回朝鮮が発射すると発表したのは他でもなく衛星探査技術を利用して全地球的範囲であらゆる対象を探索する実用衛星です。つまり、土地、水、山林、地下資源などと地質構造について実時間で観測し、その変化を調査分析するための実用衛星です。


前回の試験衛星発射から僅か3年という短い期間に地球観測実用衛星まで打ち上げるようになった朝鮮の科学技術発展のスピードには驚くばかりです。


最もすでに2009年には宇宙開発の計画と手順について発表していますが,今回もその計画に基づいたもので突然でも何でもありません。事前の計画にしたがった計画的なものです。朝米2.29合意を見据えたものでなく、したがって後ろからアメリカの後頭部を叩くようなものではないと言うことです。


しかも今回の発射は地球の自転,空転の方向を考慮した発射ではなく、北から南方向へ、つまり極軌道に向けて発射すると世界に公表しました。これは朝鮮が任意の方向に向けて高度に敏感な測定設備を搭載した衛星を発射しても、性格に軌道に乗せることの出来る先端科学技術的問題をすでに解決したことを示しています。


朝鮮の衛星発射予告があってからまたも日本のマスメディアがバカ騒ぎしています。その論調は「衛星の発射であってもその技術は弾道ミサイルと同じなので国連安保理決議の違反だ」と言うアメリカの、俺はやっても良いが、お前はだめだという傲慢かつ身勝手な口実をオウム返しするだけのものでした。


自分の論理を立てられないからに他なりません。もっとも別の論理を立てようにも立てようがなく,朝鮮の言い分が何かも分からないまま、ただ「叩く」という無知蒙昧さから脱することも出来ないのですから、そうするしかないわけなのでしょうが。もちろん、それならばそれで口をつぐめば良いことですが,その勇気もないというどうしようもない日本のマスメディアの体たらくを思えば,理解できないこともありません。もちろん、そんな体たらくを許しても良いということでもありません。現実がそうだと言うだけのことです。


ただ、衛星が発射され、朝鮮の言うことが「嘘ではなかった」事がはっきりした暁に,マスメディアがどういう態度を取るのかが関心事だと言うことだけは言っておきます。事前に予測すれば、何もなかったかのように静かに黙っているだけでしょう。その下劣さが日本のマスメディアの本性なのですから。


どだい技術が同じだからミサイルの発射だなどと言った幼稚な判断を堂々と出来る政治家やマスメディアをなんと言えば良いのでしょうか。この論理で行けば調理人の持つ料理包丁もやくざの持つドスの違いも無くなります。こんな味噌も糞も一緒にした論理でしか朝鮮の衛星発射について論評できないのでしたら最早言論は死んだも同じです。その論理でぐちゃぐちゃと舌を動かし吠えまくる政治家らはまたなんと呼べば良いのでしょうか。


彼らが言うように衛星運搬用ロケットも弾道ミサイルも似たような技術で造られます。しかしだからといって衛星運搬ロケットを発射するなと言うのは「包丁一本曝しに撒いて旅に出るのは」警察の取り締まりの対象になるというのと同じです。料理人に向かって包丁も人殺しの道具になるので持つな」と言っているのと同じです。


この論理で言えば日本の種子島は弾道ミサイルの発射基地だという事になります。日本の誇るH2Aは危険極まりない弾道ミサイルになります。また韓国の「ナロ号」(発射に失敗しましたが)は射程距離300キロ以上のミサイルは持てないとした米韓ミサイル協定に違反したと言う事になります。ところがアメリカは日本や韓国の衛星発射には何も文句を付けていません。つまり、朝鮮の衛星運搬ロケットの発射に対するアメリカの態度は完全に2重基準であってそれに便乗している日本の政治家や言論も二枚舌を使っていると言うことです。


しかし真の問題はここにあるのではなく別のところにあります。3月16日付け「ニューヨーク・タイムズ」は記者団の質問にノーランド国務省代弁人は東部時間で15日夕方にニューヨークの国連駐在朝鮮大使館を通じて国務省に知らされたと言っています。つまり朝鮮は衛星発射予告のことを世界がまだ知らなかったときにアメリカだけに知らせたと言うことです。


なぜ朝鮮はアメリカにだけ衛星発射予告を先に知らせたのでしょうか。第2次衛星発射(光明星2号)の時は事前にアメリカに知らせませんでした。朝鮮がアメリカだけに先に知らせたのは、朝鮮と米国の間に再び緊張状態が生まれるのを避けたかったからである事は明白です。朝鮮中央通信が3月17日の報道を通じて発表した計画によれば他国の宇宙科学技術部門の専門家、記者らを招請し衛星発射基地と衛星管制基地などを公開し、発射状況を生放送するとなっていますが、その内容を知らせたのではないかと思われます。アメリカの不信と疑惑を晴らすための積極的な措置だと言えるでしょう。この「他国の宇宙科学技術部門の専門家」には当然アメリカの科学技術者も含まれでしょう。


ここまで透明性を保障すると言うのですから朝鮮が事前にアメリカや韓国、日本の反応を計算していたと言うことです。透明性について言えばここまで透明性を保障した衛星の発射はこれまでどの国もありません。その意味で光明星3号の発射は特別なことです。アメリカはむろん、日本や韓国もそこまではしていません

この透明性の確保は、朝鮮の衛星発射がアメリカや日本、韓国を圧迫する事を目的にしたものではないことを意味するものです。つまり、アメリカや日本、韓国が衛星発射に脅威を感じるようなことでは無いと言う事です。


にもかかわらず、アメリカが騒ぐのはなぜでしょうか。何よりもまず考えられるのは敵対する中でいかに相手が合理的な行動を取ったとしてもそれを認めるわけにはいかず、アメリカの対面を保たねばならないという、苦肉の策として「挑発的」であり、「妥当な国際的義務を遵守することを促す」という糾弾でもなく苦しい国務省声明を発表したわけです。


「ミサイルの発射」とか「挑発的」という刺激的文言が入ってはいますが、ホワイトハウスの声明ではなくランクが下の国務相声明に終わっています。また発表したのが大統領でも国務長官でもない国務省代弁人の名義を使ったものでした。朝鮮の衛星発射に最も強硬に反対していたペンタゴンを見てもペンタゴン代弁人のジョン・カビ-の口を使って「再考する事を望む」「(発射の中止を)促す」だけでした。過去と比べてアメリカの反発が遙かにトーンダウンしているようです。