韓国「日韓協定再交渉」論が全面に登場 | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

4月に予定されている韓国の総選挙に出馬する民主統合党の議員を含めた13人の候補が、1965年の日韓協定の再交渉に出ることを次の総選挙での選挙公約として掲げる事を宣言しました。
昨年11月に韓日協定再交渉国民行動と言う民衆組織が生まれましたが、この組織と共闘を組んで19日に、国会で記者会見を開き,明らかにしました。


1965年の日韓協定は日本の朝鮮植民地支配の懺悔もなく、賠償問題をいわゆる「独立祝賀」として処理し、賠償を財産権にすげ替え、それさえも「独立祝賀金」の名目でわずか3億円を支払うことでけりを付けた、朝鮮人の側から見れば実に屈辱的な協定でした。


この協定によって日本は朝鮮植民地化のあらゆる責任を取らなくてもよく、朝鮮で行った非人間的なあらゆる蛮行に対する謝罪も補償も政府レベルではしなくても良くなったわけです。元従軍慰安婦問題や強性連行・強制労働の問題の裁判で軒並みに被害者らの訴えが退けられたのも最高裁判所がこの協定を根拠にして「すでに処理が終わったもの」だとして退けたのでした。


当時の韓国政権は朴正熙による反共を国是とした親米軍事独裁政権であり、クーデターで政権をかすめ取ったばかりの朴正熙は自分の政権を安定化させ維持するために、なによりも米日をはじめとする支援勢力がどうしても必要だったことから、「日本に復讐を」という民衆の願いを捨て去り、屈辱的な日韓協定に調印したのであり、そのために日本の朝鮮植民地支配の歴史的精算が実現しないまま今日に至っているのです。もし当時の日韓協定がこうした歴史的使命を全うし,日本の朝鮮植民地支配の歴史的精算を実現していたならば、今日のような朝鮮人差別はとうに亡くなっていたかも知れません。


韓国で民主政権が生まれ、日朝国交正常化交渉が始まってからは韓国でも日朝国交正常化交渉の中で過去の歴史が正しく精算されることに期待を寄せていました。管理人の知っている韓国の大学教授はみな、朝鮮が日韓協定のような失敗をして欲しくない,期待をかけていると声をそろえていました。


ところが昨年の8月30日、韓国の憲法裁判所が「日本軍慰安婦と原爆被害者らが韓国政府を相手に訴訟を起こしたが、この事案に対して韓国政府は韓日協定で(過去史問題が)解決されなかったと主張し,日本政府は解決されたと主張するなど相反する解釈をしているのに韓国政府がこれを調整しようとしないのは違憲である」との判断を示したのです。


この判断によって韓国政府がこれ以上この問題に目を瞑るのは違憲だという事になりました。日韓協定再交渉の法的根拠が与えられたのです。逆に言うと日韓協定こそ、朝鮮半島と日本の関係が未だに1945年以前と変わらない、いびつな関係を清算する上で最大の障害物だと言うことです。


実際この協定後日本の資本が一気に韓国に入り込みタイド・ローン(紐付き援助)を通じて莫大な資産を築き上げました。農協をはじめとする様々なツアー客が土足で他人の家にどかどかと入り込むように韓国に行き、キーセン観光(買春観光)に這いずり回りました。韓国に入り込んだ日本人の態度には,過去の植民地支配時代を彷彿とさせる、下僕に対する主人のようなものがありありと見えました。


ところで今や韓国では朴正熙政権はなんら正当性を持たない不法不当な強盗政権だとされています。その強盗政権が行った日韓協定を認めるわけにはいかないという、歴史意識が作用しているのは間違いありません。


4月の総選挙で今のハンナラ党が衰退し、民主統合党や統合進歩党など野党が躍進するのは目に見えています。最大で国会総議席の過半数以上を占める可能性もあります。ハンナラ党がこのまま内部を収拾できず,分党、あるいは解体まで突き進んだ場合、野党が議席の3分の2を越える可能性も考える必要があります。そうなれば「日韓協定再交渉」問題は間違いなく俎上に上り,国会で議決されるでしょう。


はたして日本外務省はこの動きにどう対処するのでしょうか。次回の韓国総選挙には日本も大使館だけではなく,様々な議員団や個別議員を韓国に送り、さまざまな工作をするでしょう。なんとしても「日韓協定再交渉」だけは防がねばならないからです。


それは当然、この問題が日朝国交正常化交渉に影響を与えるためです。もとより朝鮮は最初から日本の朝鮮植民地支配の精算問題(過去史問題)を正面から突きつけており、強硬な立場を維持しています。朝日平壌宣言はこの問題で朝鮮側の柔軟な姿勢を見せましたが、それが現在も続いているとは思わない方が良いでしょう。


つい最近ハマグリさんが中国の瀋陽で朝鮮のソン・イルホさんと会ったと言います。ソンさんは日本の記者のインタビューに朝日交渉は続けるという内容の話をしたと伝えられています。しかし、この言葉を額面通りに受け入れるのはあまりにも幼稚で純朴だと言わねばなりません。


なぜなら日本はすでにこの平壌宣言を大いに踏みにじったからです。いまさらどんな面を下げて「平壌宣言に則って」などと言うつもりでしょう。朝鮮は最早平壌宣言に縛られる必要はありません。日本が投げ捨てたのですから。日本では首相か,首相経験者の誰かが平壌に行くべきだという声も聞こえてきますが、仮に行っても平壌宣言後これまでの日本の態度をどのように言い訳するのでしょう。懺悔でもするつもりでしょうか。いまや第2の平壌宣言が必要なときです。しかも韓国では「日韓協定再交渉」論が正面に出てきています。条件はもっと悪くなるばかりです。日本の代表が平壌に行くにはその覚悟が必要でしょう。