アメリカは武器売買は好きでも、「ウェルカム・トゥ・トンマッコル」は嫌い | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

情報公開専門サイトのウィキリークスは25日、中韓米国大使館で作成された外交電文836件を新たに公開しました。これまでに公開されたソウル発の電文が20件に過ぎなかったのと比べ、大規模な暴露と言え、公表されたいくつかの電文を見ると、アメリカが韓国の外交に「やれ柿を出せ、やれ梨を出せ」とやかましく干渉しており、韓国もこうした干渉に甘んじていることがよく分かる内容です。


こうしたアメリカの干渉=指導を良く見せているのが、武器購入における駐韓アメリカ大使の役目です。


兵器購入の際に購入対象国の大使が兵器業を露骨に助け、セールスを行うのはほとんど常識の範疇に入るのですが、対米兵器購入の際に果たす駐韓米大使の役割は格別のようです。例えば2006年11月のEX(空中早期警戒統制機)選定において、駐韓米大使の役割は特徴的です。


2006年3月16日、アレキサンダー・ボシバウ駐韓米大使(当時)によって作成された外交電文は、その冒頭から「EX事業を巡って繰り広げられる競争の最新の現状と関連して今後駐韓米大使館が活用することのできる資源と(活動)提案」が含まれていました。


とくに、こうした売り込みにボシバウ大使が、業者に代わりロビイストとして直接関与したりしていることも明らかになっています。電文は「(ボシバウ)大使が全ての適切な機会に国防、外交部長官など韓国政府の関連高位当局者らに影響力を行使している(engage)と伝えています。


大使館はさらに「今後も韓国政府の核心的当局者らに対しあらゆる機会を使って強力な(ボーイング社)支持の活動を続ける」としながら、△アメリカ政府のボーイング社支持、△早期の決定が防衛事業庁の能力に対する信頼を高め、韓国政府の調達システム改革の意思にも合致する、△ボーイング社はすでにアメリカ政府の輸出許可を得ているなどの論拠をあげながら韓国政府を説得すると報告しています。また「今回は公式の論評やメディアを通じた活動が有効だとは思えず」、「努力の焦点を防衛事業庁(との接触)に置く」と」具体的な売り込み方法にまで言及しています。


このEX選定はボーイング社とイスラエルの「エルタ」が名乗りを上げていたのですが、アメリカ大使館の積極的な売り込み(圧力)によって、去る1月に事業者選定4年9ヶ月ぶりにボーイング社に落札されました。総額1兆5000億ウォン規模の売り買いです。


アメリカ大使館の干渉は何も兵器購入時だけに限られません。民衆への強い影響力を持つ映画製作についてまで、その干渉は及びます。


2006年3月17日の駐韓米大使(ボシバウ)が作成した電文は、「さる10年間、韓国で人気のあった映画の大部分は南北韓の分断を主題にしている」としながら「多数の作品で北朝鮮は誤解されており、同情を呼び起こす分断の同僚犠牲者として描写された」と報告しています。ここで「誤解されている」というのは、北朝鮮が敵ではなく同族であり、理解し和解すべき対象だと描いていることを示しています。


具体的な例を挙げると「2005年に開封された映画『ウェルカム・トゥ・トンマッコル』は、韓国戦争で南北の軍隊が米軍を相手に共同作戦を繰り広げる内容で、行き過ぎだ(went to far)だ」と評価しています。


朝鮮問題深掘りすると? この映画、管理人も見ていますが、良くできた映画だと思います。記憶をたどって内容を簡単にご紹介すると、こうです。


戦争が起きていることも知らずに平和な暮らしを続けていた村で突如、南北の軍部隊が鉢合わせになり、銃を突きつけ合います。村人たちは何が起きたのか判らないまま、両軍の間に入って撃ち合いをするなと説きます。


しかし両軍は銃を突きつけ合ったまま微動だにしません。村人たちの無事を考えて銃を撃つわけにもいかず、かと言って敵の目前で銃を下ろすわけにもいきません。銃を相手に向けたまま雨の降る中、ずぶ濡れになりながらじっとにらみ合っているのですが、一日が過ぎ、腹も減りくたくたになって互いに休戦を約束します。そうしているうちに同族同士で打ち合うことがばかばかしくなり、両者で決まりを作り共同生活を始めます。


ところがに、その村一帯に北の軍隊が進入したという情報を得た米軍が、村めがけて無差別爆撃をするという情報が入ります。そこで両軍は村人を守るために共同で米軍と戦うことを決心し、村を攻撃する米軍と実際に戦う、と言う内容です。


同族愛はイデオロギーを越えるということを訴えた作品です。同族を守るために米軍と戦うというのがアメリカには気に入らなかったのでしょう。


逆に北朝鮮のいわゆる「政治犯収容所」を素材としたミュージカル「ヨドク・ストーリー」は肯定的に評価し、一押ししています。大使館の電文は「われわれはこのミュージカルが(北朝鮮に対する)自覚を呼び起こし、北朝鮮の人権に対する論争を触発させることを希望する」と書いています。この映画、裏話によると(事実は確認していませんが)アメリカ大使館を通じて米国務省関係から資金提供を受けており、日本の拉致家族会も支援したと言われています。こうした映画はOK、ゴー!と言うわけです。


韓国に対するアメリカの干渉は軍事、政治、経済、文化の全てにおいて決定的な威力を発揮します。しかもその干渉は米国務省→駐韓米大使館→韓国外交通商部→韓国政府、米ペンタゴン→米韓連合軍司令官→韓国国防部、米CIA→韓国国家情報院→韓国政府、そして米大統領→韓国大統領のラインを通って貫徹されます。韓国政府が構成されて以来、具体的な部処の名称などは変わっていますが、この基本ラインは引き続き健在です。


そしてこのラインを通じて韓国に加えられるアメリカの影響力(圧力)は絶大です。とくに指揮権を米軍に握られている韓国軍は、まるで植民地軍と呼んでもおかしくない状態です。通商問題でも韓国が自分の意思を通した協定などは一つもありません。ウィキリークスの秘密電文暴露によって表に出たのはこうした米韓関係のごく一部に過ぎません。それでもアメリカの干渉が執拗であり、こまごましたところにまでわたっていることがよく分かります。


そしてそうした干渉は韓国をアメリカの従属国として牛耳り、対北対決政策=分断政策の執行機関として掌握し続けることに向けられます。朝鮮が統一を実現するためには、何よりもまずアメリカの朝鮮半島問題に対する干渉を断ち切らねばならないと一貫して主張しているのもそのためだと言えるでしょう。