ロシアのメドベージェフ大統領が1日、日本の警告を無視してクリーン列島(北方領土)訪問に踏み切り、ロシアの「領有権」を実力行使で一方的に誇示しました。
メドベージェフ大統領はすでに9月下旬に、クリーン列島を近い日に必ず訪れると断言していました。当事、前原外相は「外交関係に重大な支障が生まれる」と訪問を保留するよう警告めいた要請を行っていますが、完全に無視されたということでしょうか。
ロシアの最高指導者のクリーン列島訪問は旧ソ連時代を含めて今回が初めてです。メドベージェフ大統領の今回の訪問は同列島に対するロシアの実効支配を誇示し、「4島返還」の旗を降ろさない限り実効支配を続け返還要求には決して応じないという意思表示でもあるとした共同通信(11.1)の指摘には賛成できます。
日本のマスメディアは今回のメドベージェフ大統領の訪問について年末の下院議会選挙、2012年の大統領選挙準備であり、プーチン首相並みの強いイメージを持たせるためのパフォーマンスだといった、いわば国内向けの行動だという分析が主流のようですが、この見方には限界があります。まず選挙までにまだ猶予があり、「なぜいま行かなければならなかったのか」という質問に答えることができません。
実際メドベージェフ大統領はベトナム・ハノイでのアセアン頂上会談に参加し、帰国する途中にクリーン列島を訪れたのであり、多者頂上外交の場であるAPECを控えている時期だという点で、別の読み方ができそうです。
また表面的にはロシアが中国と手を結び日本に対して「協攻」を加えるといった見方もできなくもありません。とくに注目されるのは9月27日に、胡錦濤中国国家主席とメドベージェフ大統領が両国間同伴者関係を深め、国際問題で戦略的協力関係を強化するという点で合意している点です。中ロが日本に対して「協攻」を加えるといった見方も有力な見方と言えない事もないでしょう。
さらにロシアは胡錦濤国家主席の働きかけを受けて今年7月、日本が第2次世界大戦の降伏文書に署名した9月2日を「終戦記念日」に制定しています。また9月下旬に訪中した大統領は、首脳会談で「大戦の歴史改ざん」にともに立ち向かう共同声明を出し、ロシアと中国が歴史問題での「共闘」を確認した直後に大統領が北方領土を訪問したことです。
さらに釣魚島(尖閣列島)紛争が実は米中葛藤の「局地戦」、また「代理戦」的性格を持っており、アメリカが最近東北アジアでの影響力が失われるのをなんとしても防ごうとして、韓国や日本など旧冷戦時代の「同盟」の結束を再び強めようとしている状況が進んでいます。こうした一連の流れを読む中で、ロシアも中国との協力を強化するといった姿勢を見せているのではないでしょうか?
もちろんこうしたロシアの姿勢には、最近とみに目立ってきた東アジアでの中国の影響力強化現象によって、地域での影響力が萎縮傾向にあるロシアの存在感を示し、影響力を確保したいといった狙いもあるでしょう。
いま朝中の同盟関係が新時代に入り急速に強化発展している中で、東アジアの新秩序が朝中関係を中心に組み替えられそうな気配が濃厚ななかで、ロシアにも新秩序形成の持分があることを忘れられてはならぬという、ロシアの気概もあるでしょう。
ロシア側は今回の訪問を、「大統領が自国領土を訪れるもので、外国の指図は受けない」(大統領府)と位置づけています。日本の「日露関係に重大な支障が生じる」(前原外相)という警告も、「大統領の国内視察と対日関係には、何の関連もない」(ラブロフ外相)と突っぱね、ロシア外務省筋は1日、日本側の反応について「理解できない」とし、この問題でのロシアの立場に変わりはないと強調した(インタファクス通信)といいます。
しかも現地に住む島民らの大勢は「メドベージェフ大統領がわたしたちの島を訪問したということは、ロシア領土である証明だ」と受け止めているといいます。共同(11.1)によれば1日に歴史上初めて、ロシアの国家元首の訪問を受けた国後島の島民は一様に歓迎したと伝えています。また大統領の国後島訪問に日本国内で反発が上がっていることについて複数の島民は「島では何世代もロシア人が生活してきた。この領土を日本に引き渡すことは絶対にない」と断言したともいいます。島民は自国領土だと騒ぐだけで何一つ島民の生活に有効な対策を立てずにきた日本よりも、インフラの整備や住民の生活改善に積極的に取り組んできたロシア政府のほうが頼りがいがあると判断しているようです。
一方で国後島に向かう大統領機を見守った日本外交官は「日本はなめられているのか」と苦渋の表情を浮かべたといいます。管直人首相も前原外相も黙ってはいませんが、いかんせんロシアのラブロフ外相は1日、メドベージェフ大統領の北方領土訪問に対する日本の抗議は「受け入れられない」と反発し、河野雅治駐ロシア大使をロシア外務省に呼び、ロシア側の立場をあらためて伝える考えを示しています。聞く耳持たぬということのようです。
詳しく書く余裕はありませんが、結局はオバマ政権の強硬なアジア外交政策が眠っていた鬼っ子をたたき起こし、日本の目前に呼び戻した格好ではないでしょうか。
まさに日本はなめられているのでしょう。それが現在の日本の国際的地位のようです。少なくとも東アジアで日本の出る幕はほとんどなくなりつつあるようです。逆に中国とロシアに挟撃されても効果的な手を打てないまま、苦虫をつぶすことぐらいしかできそうもありません。下手をすればアメリカの「お叱り」を受けそうです。
アジア外交の流れを読み込めなかった日本政府の自業自得だといっては酷でしょうか。日本が外交的挽回を実現することのできる唯一の場はどうやら6者会談のようですが、それすらアメリカの顔色を伺っているだけで、日本にはまったく政策がないようです。日本外交を一変させる必要がありそうです。