日本政府、TV局が日本人著作権者の権利を放棄 「民主朝鮮」論評の背景を探る | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

実は前日の「日本のTV局の著作権侵害を非難、政府機関氏で警告も(上)」の続きにしようと思っていたのですが、日本政府とTV局が日本人著作権者の権利保護を放棄したと言う重大な過ちを指摘するために、今日のブログを(下)とせずに、もっと直接的な表題にしました。そのため(上)で紹介し残した部分を改めて(上)に含め一応(了)という事にしました。もちろん内容的には連載となっていますが、煩わしくなってすみません。


読者の方々が私のブログ記事をコピーして保存、もしくは知人に見せていると言うことですが、たいへん嬉しく思うと同時に、二度手間をかけるようになってしまったことを深く謝ります。


さて前日紹介した「民主朝鮮」紙の論評には、重大な背景があります。それを今から書こうと思います。ひと言で言うと日本が北朝鮮の著作権を認めないと共に、北朝鮮における日本人著作権者の権利を放棄することを明言していると言うことです。


日本は国交がないことを口実に朝鮮の著作権を認めておらず、まさにこの問題では無法地帯となっており、これに対して朝鮮の映画著作権の管理を任されているカナリオ企画の小林正夫氏が、朝鮮映画の原著作権者である朝鮮映画輸出入社と共同原告となってフジTVと日本TVを告訴し、一昨年の12月の知財高裁判決では両TV局の不法行為が認められました。


しかし知財高裁判決は両TV局がベルヌ条約に違反しているということは認めない(従って朝鮮の著作権は日本でも保護されるべきであるということは認めていません)中途半端な判決となっており、朝鮮映画輸出入社と小林氏は最高裁に上告し、判決を待っているところです。


朝鮮も日本もともにベルヌ条約に加盟している同盟国です。にもかかわらず国交がないという口実で同盟国である朝鮮の著作権を認めないというのは理にかないません。
ましてや日本が朝鮮の著作権を認めない以上、日本が持ち出した同じ理由で朝鮮が日本の著作権を認めないということも考えねばなりません。つまり日本国は対北朝鮮に限って日本人著作権者の権利保護義務を放棄したことになります。とんでもないことです。


しかし小林氏の起こした裁判資料を見る限り、日本政府(外務省、文科省)は裁判所に提出した文書で明確に、朝鮮の著作権を認めないこと、また朝鮮が日本人著作権を保護するかどうかは朝鮮当局が判断することであって、日本政府がなんら関与すべき問題ではないことを明らかにしています。つまり朝鮮で仮に日本人著作権者の権利侵害があったとしても、日本政府はこれを黙認すると言うことです。自国民著作権者の権利保護を放棄すると言うことです。そして朝鮮当局は地裁ならびに知財高裁の判決を受けて、これによって仮に朝鮮で日本人著作権者の権利が侵害されても、朝鮮当局がそれを取り締まる法的根拠を失うことになったとの書面を、日テレとフジTVに送りつけています。この書面は原告によって知財高裁にも提出されました。


もちろん管理人が知っている限りでは、朝鮮側は日本のような口実を持って、日本人著作権者の権利を侵害することは「非道徳的行い」だとしており、今のところ朝鮮で日本人の著作権が侵害されたと言う事例はありません。


しかし今回の「民主朝鮮」の論評は、言わば我慢にも限界があることを知るべきだという警告だと考えてもよいと思います。かりに朝鮮が堪忍袋の緒を切り日本と同様の口実をあげ、日本人著作権を侵害することになったときに日本人著作権者が受けることになる損害は計り知れません。それは映画に止まらずゲームソフトから書籍、キャラクターに至るまで実に広範囲にわたります。


つまり日本が朝鮮の著作権を保護することは、日本人著作権者の権利を保護することでもあるのです。最高裁もそのことを十分に考慮すべきでしょう。また元来TV局は著作権問題にもっとも敏感であるべきですが、フジTVや日本TVは馬鹿げた口実を持ち出して、朝鮮の著作権侵害即ち日本人著作権者の権利を侵害すべきではないでしょう。管理人の知るところではTV朝日とTBSは小林氏との交渉を通じて朝鮮の著作権を認めています。正常な思考に立ち戻ったと言うことです。NHKは日本政府のスタンスが変わっていないこともあって、いまだに迷っているようです。


最後に産経新聞などに対する論評の指摘についてひとこと。
論評は日本のマスコミに共通して見られる偏向報道のやり方を痛烈に非難しています。前後の文脈を切り捨て、必要な文章や文言だけを抜き取り、我田引水的に自分の勝手な言い分につなげるやり方です。この手法は日常でも良く使われる手法ですが、これを報道機関が犯した場合、それは世論を捻じ曲げることにつながります。日本人一般が持っている朝鮮は「怖い国」であり「貧しい国」、「普通でない国」といった印象の多くは、こうしたマスメディアによって作為的に作り上げられ加工された「朝鮮像」に過ぎません。朝鮮に一度でも行って来た人の話を聞けば分かることです。


しかしはたして日本のマスコミは、それを丹念に拾い上げ、偏向報道を是正しようという姿勢、努力をどれほど見せてきたでしょうか。今の日本のマスメディアを多くの人々が「マスゴミ」と呼んでいます。管理人も時にはそのように書きます。どちらかと言えば「マスゴミ」の方が実態に近いでしょう。情けない話です。(了)

 

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