オバマ政権「核体制報告」(NPR)、核廃絶への道途絶える(中) | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

オバマ政権のNPRは、結局の所オバマがノーベル平和賞を貰うことになったプラは演説がまったくの眉唾物であったことを示しています。オバマは「核なき世界」と述べ、「行動する道義的責任がある」とも言いました。しかし、その一方で核兵器廃絶は「たぶん私が生きている間ではないだろう」とか、核兵器が存続する限り「米国はどんな敵をも抑止するために、安全で確かな効果的兵器庫を維持する」とも言っていました。挙げ句の果ては、「核なき世界」はビジョン(つまり、政策ではない)と断りを入れる始末です。


ですので最初から大きな期待は持てなかったNPRですが、案の定、その通りになってしまいました。もし評価する面があるとするならば、NPT加盟国で非核保有国に対しては核攻撃を行わないと言明した点ぐらいでしょう。しかしそれもまた、NPTに加盟している核保有国の当然の義務であるので、ことさら騒ぐことではないのです。かえって今になってはじめて明文化したことに驚くばかりです。「これまでの歴代政権の核政策と質的に大きな変化はない」と評価することが出来そうです。

さて今後の問題ですが、管理人は何よりも朝鮮がどのような反応を示すのか興味深々です。ですがこれを書いている現在、未だに公式見解が出ていないので後回しにするとして、5月のNPT再検討会議に与える影響について考えてみたいと思います。


オバマ政権がこのNPT再検討会議でもっとも重視しているのは核拡散問題です。つまりはアメリカによる世界的規模での核管理体制の維持・強化に関する問題です。朝鮮の核にしてもアメリカがもっとも問題視しているのは、朝鮮の核武装そのものよりも、核開発の連鎖も含む核の拡散問題(つまり核不拡散体制の綻びが核テロをもたらし、それが自国にまで与える脅威)にあります。5月のNPT再検討会議でもこの問題がクローズアップするはずです。今回のNPRでもそれが強調されています。ところがアメリカの思惑通りにことが運ぶかどうか怪しくなってきました。


それをイランの核開発問題と関連した米中の思惑が違っており、それを未だに調性できないでいることにも見い出せそうです。


たとえば米ホワイトハウスによると、オバマ大統領は1日、中国の胡錦濤国家主席と電話会談を行い、核開発を続けるイランに対し、国際的なルールを順守するよう両国が一致して取り組んでいくことの重要性を強調したと言います。


しかし04月03日付エジプトのアル・アハラーム紙(HP)は、イランの核問題担当主席代表であるサイード・ジャリーリー氏は、「核開発プログラムを理由とする対イラン制裁は有益とは考えられないとの見解でイランと中国が一致した。」と報じています。ところがこれは、バラク・オバマ米大統領が中国の国家主席と長時間の電話会談を行い、物議をかもす核開発活動を頑なに続けるイランには制裁の必要があると説得していた時のことなのですす。


北京で中国外相と会談を行った後、ジャリーリー氏は記者会見で「この協議を通じ、我々は制裁という武器が有効性を失ったと確信した。」と述べ、イランに対する追加制裁の決定に伴う問題において、中国の立場はイランと一致するということを示したといいます。


米中の思惑がすれ違っていると言うことでしょう。既に米中の歩調は違っているのです。イランはNPT再検討会議に参加する模様ですが、当然そこでもこれまでの主張を繰り返すでしょう。となると米中間の相違が浮き彫りになる可能性も考えなければなりません。


他方で、イスラエルのマアリブ、ハアレツ両紙は2日、イスラエル軍諜報機関長のアモス・ヤドリン少佐が最近秘密裏に北京を訪問したと報じています。イスラエル放送によるとヤドリン少佐は中国政府高官を訪問中、イランの核開発プログラムの進捗状況に関する機密情報を提示したといいます。またハアレツ紙によると、軍事計画機関長であるアミール・イーシール少佐も来週同じ目的で中国へ向かうと伝えています。


アメリカへの信頼が薄れる中で中国の協力を求めようと言うことでしょうが、これが事実だとしたらイスラエルのアメリカ離れがじわじわと表面化しつつあるようです。もちろんイスラエルにイランの核開発プログラムについて言及するような資格はありません。仮にイランが秘密裏に核兵器開発に乗り出しているとしても、その点ではイスラエルは大先輩であり、自分のことは棚に上げておいて他人を告発するなど下賤のすることでしょう。イスラエルもここまで落ちたかと言う感じがします。


それにしてもイスラエルの中国接近はアメリカに対する警告でもあるようです。「無下にすると寝返るぞ」と言うこともありうるわけですから。いずれにしてもイスラエルはしたたかです。中国を対米カードに使おうと言うわけですから。日本の外交とは雲泥の差があります。日本も北朝鮮を対米カードに使うというポーズだけでも取れれば、日本の外交も民主党政権になって変わったといえるのですが、何物ねだりのようです。


どちらにしてもNPT再検討会議は揺れそうです。それを「NPT加盟国で、非核保有国に対する核攻撃は行わない」と初めて明文化した今回のNPRで少しでも防げると思っているとしたら、甘すぎるのではないでしょうか。


それに今回のNPRが朝鮮を再度強く刺激したことは明らかです。今回のNPRで朝鮮もオバマ政権に対する最終的評価を下すことになるでしょう。オバマ政権は自分で対朝鮮政策を変更するチャンスを逃がすことになりそうです。


NPRが北朝鮮の行動を抑制できると思ったら大間違いでしょう。北朝鮮はこれまでもアメリカの核先制攻撃の脅威を受けてきたのであり、その防衛を強化してきたのですから。核兵器保有がその結果なのです。アメリカにはまだそれがわかっていないようです。(つづく)


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