6者会談 事実を直視した現実的提案が望まれる(上) | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

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さて記事に移ります。

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23日にソウルの峨山(アサン)政策研究院で東アジア地域の安定のための東アジアフォーラムが開かれました。ここには日本から田中均日本国際交流センター専任研究委員が、アメリカからはコリアソサイエティーのエバンス・リビア会長が、中国からは王緝思北京大国際関係学院長が参加しています。韓国からはハン・スンジュ前外相などが参加したと言います。


田中氏が日朝平壌宣言の採択に裏方となって尽力した人物の一人であることから、なんとなく彼の発言が気になり報道を呼んでみたのですが、彼にも基本的認識で間違いがあるようです。もっとも報告の全文を読んだわけではなく、報道だけを見て書いているわけですから、不正確さは免れません。それを前提に読んでくださればと思います。


報道によると彼は報告で、何よりも東アジア安保フォーラム(EASF)の設立の必要性を訴えたようです。田中氏は東アジア安保フォーラムとは環境、自然、エネルギー安保、大量殺傷武器(WMD)非拡散、麻薬密売など非伝統的で、超国家的な脅威に対比して東アジア国家が域内の安全を追及するための構想だと言います。そしてその構成国や域内の全ての当事国がまず強力な二国間安保関係を構築する必要があると主張しています。


これらの主張は今に始まったことではなく、既に以前から多様な方面で主張されてきたものなので特に注目されるものではありませんが、問題はそのためには北朝鮮の核問題の解決が必須であるとし、これが6者会談の目的であることを忘却してはならないと訴え、6者会談が目的を達成するためには次の5つの原則が守られねばならないとしていることです。


田中氏の主張するその5つの原則とは次の通りです。
① 北朝鮮を絶対に核保有国として認めないこと、
② 6者会談参加国間の絶対的結束と政策の連続性が維持されねばならない、
③ 参与している全ての国がより精密な北朝鮮急変事態に備えた計画を立てるべきである
④ 対北朝鮮対話で包括的な接近法を採用すること、
⑤ 両者対話も6者会談の連続的過程として捉え推進すること


しかしはっきりいってこれでは問題を解決することは無理でしょう。なぜならこの5原則は北朝鮮の主張を何一つ考慮していない、いや研究しておらず、加えて根本的問題点に目を瞑っているからです。


まず第一に、北朝鮮が核保有国であることは現実が示しています。北朝鮮自身が世界にそれを立証して見せたのです。核保有国であるという歴然とした事実に目を瞑り、保有国として認められないという前提に基づいた政策に何の意味があるでしょう。北朝鮮が核保有国として認めないからといって核保有国でなくなることはありません。


また核保有国として認めないからといって、北朝鮮が引き続き核武装を強化しないとは決していえません。いや、むしろいっそう核武装強化の道を歩む可能性が強いでしょう。なぜなら北朝鮮は自国の置かれた境遇から、否応なく核保有を決心したからです。


その境遇とは、いまだ戦争状態にある(休戦中ではあるが)米国とその追従国家、そして国連(安保理)の敵対政策が(それは核先制攻撃の対象として北朝鮮をターゲットにあげたり、各国に認められている自由な宇宙開発の権利を踏み躙り、不当な制裁決議を行ったりしていることに象徴的に現れている)、北朝鮮に核武装へと促しているということであり、そうした境遇に変化が無い限り北朝鮮の核武装強化は続く他ないからです。核保有国として認めないということは、核武装をやめさせるということですが、核武装へと促すこうした環境が是正されないことから問題が起きているのです。


第二に、6者会談参加国の絶対的結束と政策の連続性を保障する問題ですが、これも不可能なことです。もともと中国とアメリカの6者会談に対するアプローチには、東アジア地域政治に対する米中の目論見が違うことを解消できないままに、進行してきたという点を前提としてみる必要があります。


また日本は、6者の枠組みによる国際的圧力を利用して対北朝鮮懸案問題を解決しようとしており(日本にとって東アジア地域の安全は従属的な対米外交によって守られるというのが基本的姿勢です)、韓国は言うまでもなく対北優位を確保し、6.4南北共同宣言や10.4宣言を反故にし、制度統一を実現しようと言う目論見が底辺に敷かれています。みな利害関係が違うのです。


もっとも6者会談は維持したいという点では共通項がありますが、だからといって「絶対的な結束」など実現できるはずもなく、「政策の連続性」が維持できるなどとても考えられません。事実日本は6者会談が続けられていた期間中、他国には疎ましい存在としか見られてきませんでした。それにこれまでの経験からすれば、政策の連続性を遮断してきたのは他でもなく米国であり、今もそうした状況を迎えています。


そうした米国の「チェンジ」を止められるのは中ロ日韓のどの国でもなく、まさに米国自身です。つまり6者会談参加国の「結束」や「政策の連続性」は、6者会談が成功するかどうかの鍵を握る米国のエゴを束縛できるかどうかに掛かっているというのが現実です。この現実を無視したいかなる提案も、「結束」や「政策の連続性」をもたらすことなど出来ないでしょう。


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