産経 久保田記者はいつまで続けるのか? | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

いつかは出るだろうと思っていたが、やはり出た。9月23日(18:00)のMSN産経の「朝鮮半島ウォッチ」は、北朝鮮が「映画界の立て直し」を図るとして、「国家映画委員会」を発足させたこと、朝鮮労働党内に「映画部」を発足したと「思われる」などと、またも3流推理小説並みの憶測記事を載せたのだ。


「国家映画委員会」は今年最高人民会議の決定に従って発足したことが確認されているが、「映画部」が朝鮮労働党中央委員会に設置されたことは正式に確認されていない。たぶん韓国のNIS(国家情報院=前国家安全企画部=元KCIA)か、北朝鮮「民主化」を叫ぶ反北右翼団体から出た謀略情報だろう。そうでないのなら、なぜ「思われる」というのか根拠を示す必要があるのではないのか。自ら確認できない情報であれば、出所くらいは明らかにすべきだと言うのは、報道人としての最低限の常識だろう。


記事の内容は一層ふるっている。例えば次のセンテンス。
「『伝記映画』は記録映画『世界に輝く軍事優先太陽』。すでに2部まで完成している。誕生から青年期までの1部『朝鮮を輝かせて』は8月24日に国内向けテレビで放映されたが、時期がクリントン元米大統領や韓国財閥会長との面談など金正日総書記の対外活動再開の直後だったため、なぜいま「引退」を示唆するような一代記なのか、と関心が高まった。
 進捗(しんちょく)は順調なようで、9月7日には2部完成を発表。10月にも2部の放映が予想され、金正日総書記への世襲が決まった70年代がテーマになる。」


まず、管理者はすでに韓国のサイトを通じて(1)を見ている。ちなみに表題は「世界に輝く先軍太陽」だ。記録映画には一部、二部の表示はなくただ1,2の表示しかない。久保田るり子記者はこの記録映画を見ていないようである。


となると映画を見もせずにいい加減に書いたということになるが、なるほど(2)はすでに放映されており、やはり韓国のサイトを通じてみた(2)の内容は、「革命伝統」を守ることにいかに尽力したかを描いているもので、久保田記者の言っているのとはまったく関係のない内容であった。また映像には衛星放送のマークが出ていたので、久保田記者の言う「国内向け放送」に限定しているわけでもないことも確認できる。


久保田記者にはわからないようなのでついでに言えば、北朝鮮の報道を見ていると「遭難」、「私の見た国第2,3部」が今年すでに制作され上映が始まり、大人気を博していると言う。原作者、監督、主演女優らによる座談会も放映され、映画を見た人々による感想討論会なども行われたようだ。


久保田記者の次の記事も問題である。
「『映画文献庫』に1万5千本を収集、視察先にはどこでも映写室があり、『映画で世界を学んだ』とされる金総書記にとって、映画は支配手段のひとつ。金ファミリーの宣伝映画をつくる『白頭山創作団』には『最上の待遇』を受ける特権集団の監督・俳優が約300人いるとされる。映画は『領導芸術』『映画革命』とも呼ばれている。」


久保田は「映画文献」という意味をまったくわかっていないようであり、白頭山創作団についても分かっておらず、「領導芸術」や「映画革命」についてもまったくわかっていないようだ。北朝鮮について書くならば、こうした基礎的な文言について事前にしっかりと勉強すべきであろう。


くわえて「しかし10年前から本格化した韓国などからのビデオやDVDの流入で、特権層や富裕層の“西側汚染”は拡大の一途。」というのはまったくの憶測であり、しかも「脱北者の情報」や韓国のNSPから出た謀略宣伝情報の類から仕入れたもののようだ。


もちろん管理者はそれを証明するような客観的証拠を握っているわけではないが、心象としてそうだと言うことだ。そしてそうした心象を持つようになる原因は、産経の記事になったこの種の報道のほとんどは、後にまったくでっち上げであったことが明らかになっており、また「記録映画」の記事に見るように、あまりにもでたらめな報道が多すぎる(いちいちあげては一冊の本になろう)という経験則から生まれている。つまり管理者がそうした心象を受ける原因についての客観的証拠はあるということになろう。


しかしあんまりと言えばあんまりである。北朝鮮で発行されている辞典や、百科事典、政治用語辞典(全て東京で購入できる)などを見れば即座にわかることだが、久保田記者はそういった基礎的作業さえもしないで、あたかもオーソリティーのような振る舞いをいつまで続けるつもりなのだろうか。これで「北朝鮮ウォッチ」というから酷すぎる。久保田記者もいいかげんに報道人としての良心を自ら問うべきではないのか。産経新聞の読者の方には紙面を飾る北朝鮮関係報道には重々注意を促したい。