「お前ってさ…」
一呼吸置いたので、彼は羽鳥を見た。
「人と関わるのが嫌なわけ?」
一瞬ズキリとしたが、動揺は隠した。
「…あぁ…俺は人間嫌いだ…面倒なんだよ」
軽い牽制をかけたつもりだったのに、コイツは何一つ気にしないんだな。いつものように、勝手に話を続ける。
「…そうかよ…まぁ、嫌いだか面倒だか恐いんだか知らんけど、今日は俺に付き合えや」
やっとき来たビールを潤伍のグラスに当てて、ニカッと笑う。
恐い?ただ単に、本当に面倒なだけだ。人間ってのは何しろ群れたがる。潤伍は以前から面倒ごとにはなるべく首を突っ込まないようにしてきた。
警備員のメンバーである153人も、多くの派閥に絡められている。
彼は無所属だ。なのに、この羽鳥はそんな潤伍を担ぎ上げようと無所属派閥を作ろうとしているかのようだった。
「で?何でポストマンなんだ?しかもアウト」
ポストマンとはまんま郵便屋の事だ。江上議員が昔のハリウッド映画から名付け、なぜかその名が全国区になっていたが、何だか気取っているようで潤伍は好きじゃなかった。
「…探し物が出来たんだ」
羽鳥は、ふ~んと短く返事して【探し物】の中身については言及しなかった。
人にくっついて何でも突っ込んで来るくせに、肝心の部分には絶対に触れてこないのが不思議なとこだ。
だからだろうか、多少の面倒臭さを感じながらも、彼とは5年近くの付き合いになっていた。
スーパーフレアから7年経った今でも、プラズマ粒子の影響は消えず、多少の電力は回復しつつあっても、連絡手段は手紙のみ。インは街中、アウトは街同士での仕事だ。
アウトは【外】という意味ではあるが【死】をも意味しているのだと言われる程に危険な職業だ。
公的な、例えばトップ同士のやり取りとなると3~5人組で、一般でも大概はツーマンで仕事をする。
潤伍は1人を選んだ。探し物がメインだから。
「あいつ、どうすんの?ネコ。俺、預かってやってもいいよ」
「連れて行く」
「はぁ~?死んじまうぞ!置いてけよ!」
店中の視線が一瞬だけ集まった。
この言にはいくつかの意味がある。
通常、外で作業する者は、紫外線防止の制服が支給される。効果の程は分からないが、放射線を防ぐ機能もあるとか何とか。
それでも一般人よりは病気の発生率は高い。
また、1人きりのポストマンというだけで狙われる確率は高くなり、慢性的な物資不足に陥っている外の人間により襲われやすい。彼らにとって貴重なタンパク源を連れているとなれば尚更だ。
「特注のカッパを作ってもらった。傘も。あいつ、結構悪運強いし…まぁ、大丈夫だろ」
左右に首を降って大きなため息を付きつつ、口は何やらニヤついている。
これ以上は突っ込んでこない合図だ。ありがたい。
羽鳥いわく送別会とやらは、比較的平和に終わりを迎えた。
1週間の準備期間を経て、潤伍とハギは7年ぶりに街の外へと出て行く事になる。