老人はゆっくりと猟銃を持って立ち上がるものだから、潤伍もハンドガンを持って続く。
「お前達はそこに居ろ」
先程までの穏やかさは無く、険しい声が少年と猫を留めた。
ここは中立地帯で、小動物かもしれないのにこの緊張感はどうだろう。
「近頃じゃな、中立って言葉を知らんバカ者が増えてる」
~そういう事か。
警戒を強めて畑を覗くと、案の定、人影を認めた。
老人は猟銃を構えると、潤伍に回り込むように無言で合図する。
「出ていけ!ここは中立だぞ!」
村内の恫喝に顔を上げた人影は2つ。
~あれ?あの2人は…。
「知ってるよ!くそじじぃとガキだけじゃ食いきれないだろ!腐る前に俺らが片付けてやるよぉ!…お?」
叫んだ男の後頭部に銃口を突きつける。
「俺が買い取った所だ」
「お、お前…猫の!」
~やっぱり2日前の2人組。そしてやっぱりアホだ。
「中立って言葉を教えてやるのも面倒だなぁ」
安全装置をわざとゆっくり外す。
「わ、悪かったよ…もう、しない」
確か2日前にも同じセリフを聞いた。これはまたやって来るな。腕の1~2本でも折っておくか、と思った時。
「郵便屋!骨を2~3本折っといてやれ!」
~…過激な爺さんだ。
脚を踏み出したとたんに、2人は逃げ出した。潤伍はあえて追わなかった。
「少し甘いな…」
村内は猟銃を下ろすと、小さく息を吐く。
「村内さん、1週間の滞在は可能ですか?」
「…構わんが、どうした?」
「あの連中、またやって来るかもしれない。暫く様子見を」
警備員としての癖が抜けないのか、本来はポストマンの仕事ではないだろうが、潤伍には放っておくことが出来なかった。
老人は近づく潤伍に向き合い、その進行を妨げるように立つ。
「1つ頼みがある」
なんとなく嫌な予感がする。
「孫を…大地を一緒に連れて行ってくれんか」
~…は?
その時、玄関のドアからハギを抱えた大地が飛び出して来る。
「またお爺ちゃんそんなこと言って!断られるに決まってるだろ」
表層的に見たら、孫を安全な街に連れていって欲しいが、当の孫はここを離れたがらないというところだろうか。
「村内さん、どういう事ですか?」
「おじちゃん、気にしないで。最近お爺ちゃん、誰にでもすぐ言うんだ」
「お前にはいろんな可能性がある。旅はきっと楽しいぞ」
「何処かの街に親類が?」
老人は左右に首を振る。いきなり初対面の少年の未来を託されても困る。
「お分かりかと思うが、これは旅行ではない」
苦悶の表情を浮かべる村内。何か訳があるのか?
「猫で手一杯だ。その件は他を当たって欲しい」
「人を視る眼はあるつもりだ。お前さんが適任だと思った」
「何を根拠に」
「勘だ」
一番困る回答だ。猫が居るだけでも見立つのに、子供まで連れていたら危険は倍増だ。
「可愛い孫には旅をさせろと言うだろ…大地にはいろんな世界を見てもらいたいんだ」
~少し違う。
潤伍はあからさまに迷惑そうに瞳を細めた。
「…分かった…この話はまたにしよう」
~またあるのか。
潤伍は小さくため息を吐くと、家屋に入っていった。
「お前達はそこに居ろ」
先程までの穏やかさは無く、険しい声が少年と猫を留めた。
ここは中立地帯で、小動物かもしれないのにこの緊張感はどうだろう。
「近頃じゃな、中立って言葉を知らんバカ者が増えてる」
~そういう事か。
警戒を強めて畑を覗くと、案の定、人影を認めた。
老人は猟銃を構えると、潤伍に回り込むように無言で合図する。
「出ていけ!ここは中立だぞ!」
村内の恫喝に顔を上げた人影は2つ。
~あれ?あの2人は…。
「知ってるよ!くそじじぃとガキだけじゃ食いきれないだろ!腐る前に俺らが片付けてやるよぉ!…お?」
叫んだ男の後頭部に銃口を突きつける。
「俺が買い取った所だ」
「お、お前…猫の!」
~やっぱり2日前の2人組。そしてやっぱりアホだ。
「中立って言葉を教えてやるのも面倒だなぁ」
安全装置をわざとゆっくり外す。
「わ、悪かったよ…もう、しない」
確か2日前にも同じセリフを聞いた。これはまたやって来るな。腕の1~2本でも折っておくか、と思った時。
「郵便屋!骨を2~3本折っといてやれ!」
~…過激な爺さんだ。
脚を踏み出したとたんに、2人は逃げ出した。潤伍はあえて追わなかった。
「少し甘いな…」
村内は猟銃を下ろすと、小さく息を吐く。
「村内さん、1週間の滞在は可能ですか?」
「…構わんが、どうした?」
「あの連中、またやって来るかもしれない。暫く様子見を」
警備員としての癖が抜けないのか、本来はポストマンの仕事ではないだろうが、潤伍には放っておくことが出来なかった。
老人は近づく潤伍に向き合い、その進行を妨げるように立つ。
「1つ頼みがある」
なんとなく嫌な予感がする。
「孫を…大地を一緒に連れて行ってくれんか」
~…は?
その時、玄関のドアからハギを抱えた大地が飛び出して来る。
「またお爺ちゃんそんなこと言って!断られるに決まってるだろ」
表層的に見たら、孫を安全な街に連れていって欲しいが、当の孫はここを離れたがらないというところだろうか。
「村内さん、どういう事ですか?」
「おじちゃん、気にしないで。最近お爺ちゃん、誰にでもすぐ言うんだ」
「お前にはいろんな可能性がある。旅はきっと楽しいぞ」
「何処かの街に親類が?」
老人は左右に首を振る。いきなり初対面の少年の未来を託されても困る。
「お分かりかと思うが、これは旅行ではない」
苦悶の表情を浮かべる村内。何か訳があるのか?
「猫で手一杯だ。その件は他を当たって欲しい」
「人を視る眼はあるつもりだ。お前さんが適任だと思った」
「何を根拠に」
「勘だ」
一番困る回答だ。猫が居るだけでも見立つのに、子供まで連れていたら危険は倍増だ。
「可愛い孫には旅をさせろと言うだろ…大地にはいろんな世界を見てもらいたいんだ」
~少し違う。
潤伍はあからさまに迷惑そうに瞳を細めた。
「…分かった…この話はまたにしよう」
~またあるのか。
潤伍は小さくため息を吐くと、家屋に入っていった。