シナ語の標準語、所謂「普通話」における声母の口蓋化は地名に現れる。
Peking>Beijing
Tien Tsin>Tianjin
Chungking>Chongqing
Tsingtao>Qingdao
Sinkiang>Xinjiang
Sihia>Xixia
 
満州の鉄道でSIN KINGとあるとこれはSINK-ING(沈むこと)ではなく「新京」XINJINGの古い綴りで今の長春市である。
シナ語の標準語、所謂「普通話」で「剛」gang1と「強」qiang2を比べた場合、「強」は*kiangのような音節のkが口蓋化した結果であろう。「江」jiang1も同様だ。
朝鮮語では「剛「強」「江」はどれも「강」kang(>gang)である。
「金剛山」は朝鮮語で「금강산」、「豆満江」は「두만강」である。
また、標準シナ語で「上」shang4と「相」xiang1は巻舌(またはそり舌)と平舌の区別であるが、朝鮮語ではどちらも「상」sangになる。
シナ語の場合、「香」xiang1が「相」と同音になっているが、朝鮮語では「香」が「향」hyangであり、hが保存されている。
それは「香氣」がシナ語でxiang1qi4であるのに対し、朝鮮語で「향기」hyang-giである点に表れている。
シナ語の場合「相」xiang1、「想」xiang3に対し「霜」shuang1がある。
また「倉」cang1、「創」chuang4に対し「槍」qiang1もある。
シナ語で区別される「大将」da4jiang4と「隊長」dui4zhang3は、朝鮮語でどちらも「대장」tae-jangとなる。
区別は「大将」の「대」tae-が長い点(つまりtaeh-jangのようになる)くらいだろう。
普通話で「三」san1と「山」shan1は声母のsとshの違いだ。
シナ語でも廣東語では「三」saam1と「山」saan1は韻母の違いだ。
朝鮮語でも漢語語彙の数字では「三」は「삼」samであり、「山」は「산」sanであるから、両者は終声mとnで区別される。「山」の初声sは口蓋化していない。
 
 
の名前にあるように、
シナ語の普通話で人命の「徐」Xu2と「許」Xu3は声調だけの違いである。
日本語の音読みで「徐」は「ジョ」Zyo、「許」は「キョ」Kyoになる。
朝鮮語であれば「徐」は「서」Seo、「許」は「허」Heoである。
北京で「徐」の声母がsかzからxになり、「許」のそれがhからxになったのだろうと類推できる。
なお、「除」Chu2は日本語の音読みで「ヂョ」Dyoであり、 朝鮮語で「제」Jeoになる。

朝鮮語漢語系語彙
香hyang 相sang 商sang 霜sang 双ssang
 
シナ語普通話(北京音)
香xiang 相xiang 商shang 霜shuang 相shuang