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新潟県庁の要請は中国語の「新潟」の表記を「新潟」にしてほしいと言っているだけである。
つまり、新潟の「潟」を「泻(←LINK 先は Wik字典=Wiktionary、以下同様)」、つまり「さんずい」+大陸式「写」)で書くことを「誤り」とし、「新潟」と表記してほしいということであって、日本語の「新潟」の「泻」(=「さんずい」+日本式「写」)にしていることには、直接には言及していない。

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朝日新聞の「ことば相談室」で「新潟」の表記を扱ったときも、大陸の「新 シ」と日本式の「新 シ」を別にして、最後に「北京五輪をきっかけにして両国の漢字について理解を深めよう」という薬にも毒にもならない平凡な結論になっている。

日本と中国で手書きの俗字を活字に採用したことの誤りや、日中の漢字簡略化そのものへの疑問、日中で略字が異なることなどに議論が發展してもよさそうなのに、そうなっていない。

こういう日本と中国、朝鮮の漢字については、いつも漢字簡略化への批判まではいかず、「ことばとは難しいものだ」「どこでもことばは揺れている」などという、結論にならない結論で終わる場合が多い。

「一瀉千里」は大陸で「一千里」yíxièqiānlĭ になる。

「新潟」の形」は画数が多い。手書きでは「新潟」を「新」と書くほうが便利である。「」の字の下の横棒が右に突き出ても突き出なくても、その点は同じだ。
しかし、パソコンで漢字を打ち出す場合は違う。

日本語用のパソコンで「にいがた」と打って変換すると「新潟」が一瞬で出るし、「いっしゃせんり」と打てば「一瀉千里」が出る。一方、「」は日本語用のパソコンではむしろ、面倒で、「」という字を探さないといけない。

一方、中国大陸のパソコンではおそらく話が逆であろう。
「潟」と「瀉」で書いたように、小学館の『中日辞典』を観ると、「瀉」の略字「」にはGB(国家標準)のコードが割り当てられているが、「潟」にはGBコードの表記がない。
「新」はよく使う漢字なので、もちろん、GBコードはある。
もし、GBコードが「潟」にないとすると、中国大陸製のパソコンで漢字を打ち出す場合、xin で「新」を、xie で「」を出すのは造作もないことであるのに対し、xi で「潟」を出すのは難しいのではなかろうか。場合によっては不可能であろう(注釋)。
つまり、中国大陸の場合は手書きでもパソコンでも「新潟」より「新」のほうが書きやすいのではなかろうか。

すると、日本で新潟を「新(右下が突き出る)」にしていた略字が使われなくなる一方で、中国大陸で「新(右下が突き出ない)」が一般的になっているのは、両国の漢字政策の違いと、コンピュータのソフトウェアの違いも影響しているのかも知れない。
Google 新潟 さんずい 写 中国語

「写」の簡体字が正しく表示されない?! Chinese Station
1:07 - 2015年1月4日:Twitterで表示された日時(推定18:07)


前後一覧
2009年3/7前後

関連語句
新潟県 さんずい+写 新潟県 シ写 新潟 瀉 新潟 新瀉
新潟の「潟」 さんずい 写 新潟 さんずい 写 中国語


注釋
場合によっては不可能であろう
手持ちのパソコンでピンイン中文入力モードにして、 xi で変換したら「潟」が出た。
中国大陸で中国人が使う簡体字用のパソコンでは、必要な漢字だけが打ち出せるようになっている。日本の人名に多い「咲」は「笑」xiào の異体字なので、大陸簡体字專用のパソコンでは「咲」を打ち出すことはできない。「笑」があれば「咲」はいらないからだ。また、「昇」shēng は「升」に、「葉」yè は「叶」になっているので、簡体字だけのパソコンでは「昇」と「葉」は入力できない。名刺を作る会社、店では繁体字を打ちこむソフトもあるので「昇」と「葉」は繁体字として打つことになる。


参照
新潟と新泻、横浜と横滨
2009年3月5日~27日