★繁盛しない鉄道は”排除”しかない時代になってしまった

鉄道と言うのは、人々の夢と希望を運ぶ乗り物だ。鉄道が出来るまでにいろんなドラマがあって、鉄道が出来てからもいろんな人やモノが移動する目的で日常的に使う。移動する車中でもこれまたいろんなドラマが展開されて、我々は一生残る思い出となる。

しかし、お店が繁盛する・繁盛しないと同じように、鉄道路線にも繁盛する・繁盛しないが出てきているのも実際の所だ。国鉄末期には地方の繁盛していない路線(=赤字路線)を”排除”させた。”排除”された路線は地元が鉄道orバスの転換の選択を要求されて、鉄道の残した地域は「第三セクター」と言う特殊な経営形態による新会社を興して、なんとか鉄道を維持させた。

まだこの選択肢があると言うのはなんともうらやましいと思う。今や鉄道の廃止=「強制終了」で、新会社による鉄道は残らず強制的にバス転換(BRTも含む)となるのが、JR時代の繁盛していない路線の”排除”方法かとも思う。

JR西日本 宇都井駅 INAKAイルミ@おおなん

↑島根県の江津から江の川に沿って進む鉄道がある。三江線だ。広島県の三次までの108kmの路線であるが、1987年に458人/日の輸送密度(1日1キロ平均の利用者数)があったが、2016年に83人/日まで低下してしまった。
簡単に表現すれば、「車内はいつもガラガラ。空席も多数。ボックス席の1人占めも容易」・・・と言うのが三江線であった。
しかし、2016年9月にJR西日本が三江線廃止を決定してから「サヨナラ乗車」したい人が全国から殺到。一転してこれを商売にしてしまう「廃線特需」とか「廃線バブル」なる言葉も登場した。恐らく2017年の輸送密度は100人/日以上の利用がある事は確実だ。

「三江線はなぜ廃止しないといけないのか?」
この事を改めてしっかりと考えてみたいと思う。結論から言ってしまえば、「お客さんが極端に少なく、全然繁盛していないので、JR西日本も必要な費用を出せなくなった」。
改めて、過去に書いた当ブログ記事から三江線廃止の理由を探ってみたい。



JR三江線 田津~川戸

↑三江線からの車窓。田津~川戸。廃止になれば見られなくなる。

『地元は・・・
①バス転換
②自ら鉄道会社を発足
・・・いずれかを選択する事になる。
だが、②を選択した場合も現状から申し上げて、利益が出ない極めて厳しい経営になることは確実だ。
三江線廃止後は①のバス転換が決定。路線設定が細かい事が特徴で、三江線代替路線はナント17にも及ぶ。特に三次~石見都賀については路線数が多い。

★三江線の厳しい現状

「【三江線廃止の厳しい現状と尾関山駅へ】WESTJAPANを乗りつぶせ!2016 ⑫」(2016年4月28日の当ブログ)

「【三江線422D三次→浜原】WESTJAPANを乗りつぶせ!2016 ⑬」(2016年4月30日当ブログ)

「【三江線422D浜原→江津】WESTJAPANを乗りつぶせ!2016 ⑭」(2016年5月2日当ブログ)

↑この記事は2016年3月に三江線に乗車した時の報告だ。
以下記事の一部を再掲載する。

現状としては厳しい「数字」を示さないとならない。
三江線の距離は108km。
1日1キロあたりの平均乗車人数(輸送密度)は50人。(2015年の数字)
2010年の災害が原因で廃止になった岩手県の岩泉線とほぼ同じ数字である。
(中略)
三江線では、「残そう運動」があちらこちらで行われている。この努力は素晴らしい。
しかし、廃止を撤回するほどの「数字」(実績)が出ていないのも事実で、現実問題として廃止の方向に進んでいるのは残念だ。

金額ベースの収支では、年間2,300万円の収入に対して、維持費は10億円かかる。大赤字だ。営業係数は公式には公表されていないが、専門家の試算では800円前後としている。JR北海道の路線では1,000円超過もあるが、これを除いて本州のJR線ではワーストワンの不名誉な数字である。
三江線はたびたび廃止になるウワサがあった。山間部を通る路線のため、自然災害が非常に多い。大雨による土砂流入、土砂崩れ、橋脚流出、冬になれば大雪で除雪に時間がかかる事、通年にわたり倒木や落石が発生しやすいロケーションである。2016年度少なくてもこれが原因とする輸送障害が少なくても13件あった。他線と比較しても突出して多い。
被害を受けるたびに、10億円以上の費用をかけて復旧してきた事実があるため、JR西日本はそう簡単に三江線を止める意志がなかったはずだ。

しかし、後術するが少子高齢化で鉄道の利用が減少してきている。
各路線の赤字を少なくするために、さまざまな合理化(ワンマン運転、利用実態に合わせた運行本数や両 数の設定等)を実施しているが、これはサービスダウンとなるため、どんどんお客が離れている。さらに過疎化やマイカー社会も拍車をかける。
JR西日本と言う民間企業の経営努力だけでは、ついに耐えられなくなってきた。
数年前かなりの数のローカル線に対して水面下で廃止の打診をしたが、各地から強い反対を受けて事実上撤回している。
三江線については、「今すぐにでも廃止したい」と言うのがJR西日本の本音。
「2017年9月頃までに」と言う具体的な時期を示している事、その時期までの時間が短いため、経営的には非常にヤバい事になっているのだろう。”待ったなし”が現実だ。

「残そう運動」がいろいろ展開されているが、それが一時的では意味がない。長期的かつ継続的にお客が乗ってもらわないと、廃止を避ける事は出来ない。
乗ってわかったのが、三江線が走る所が必ずしも人がいるとは限らない事。江の川と並走するが、人が住んでいるのは三江線の対岸。江の川を渡る橋は必ずしも駅近くとは限らない。駅に行く事さえ大変だ。
もし、対岸に三江線があったら廃止の議論はなかっただろう。もっとお客が多かったに違いない。
マイカーから三江線での移動促進は容易ではない。本数が少ない、駅に行く事が大変等不便すぎる事が、”元凶”となってしまっている。ロケーションの悪さも、お客が少ない理由の1つである。』

「【無念】三江線2018年3月に廃止」(2016年9月4日の当ブログ)

↑こちらのブログから一部加筆編集の上で再公開した。

★「引き際」を探っていたJR西日本。ちょうど今が廃止する良いタイミングか・・・と。ローカル線は沿線の過疎化を打破できないと”第二の三江線”が再び生まれてしまう・・・

鉄道利用者は、長距離利用か短距離利用かで区別できる。特急や新快速のような速達列車があれば前者も期待出来るが、それがないと後者主体となる。
三江線は陰陽連絡の役目を果たすと考える事も出来るが、実際には遠回りの線形で速達列車であっても全線を通り抜けるだけで3時間かかる。陰陽連絡の優等列車と考えれば、広島~浜田と言う区間になるが、三江線経由の場合最短でも5~6時間は見ておかないといけない。一方で広島~浜田には高速バスが毎時1本運行されており、最速で2時間。余程三江線や鉄道が好きでない限り、高速バスを選択しない理由が見つからない。

ならば後者と言う事になるが・・・・・・

JR西日本 式敷駅 近くの江の川付近 JR西日本 式敷駅 近くの江の川付近 JR西日本 式敷駅 JR西日本 式敷駅

↑列車交換もできる式敷駅周辺の様子。見た感じ建物があってクルマも多数あるが、よく見てみると「人が住んでいる気配が感じられない」。
建物だけが残っている「空き家」で、三江線の駅周辺ではこれが目立つ事。
私が聴いた話によれば、三江線沿線の過疎化率は全国トップクラスとの事。今後人口が増える要因はなくて、三江線を引き続き営業しても、列車に乗る人が増える事も期待出来ない。JR西日本にとっては「引き際」を探っていたと思われ、遂に輸送密度が50人を切ったタイミングで廃止する事を決断した。

三江線に乗車すると、地元の人が乗る事が期待出来ない現実が伝わる。列車はダイヤに従い忠実に各駅に停車してドアを開けるが、人が動く事はほとんどない。宇都井のような観光客に人気のある駅は別としても、それ以外の地元の人しか使わない駅で地元の人が乗り降りする姿はほとんど見ない。
三次・江津発の最終となる19時台の三江線列車は5人も乗らない事が珍しくない。観光客は相手にしない列車。実質的に「地元の人専用列車」と言う感があるが、これが三江線の現実だ。

「公共交通としては完全に役目を終えた」

前回2017年11月に乗車していて真面目にそう思った。
とにかく地元の人が日常的な移動手段として使わない。使わないならば鉄道として残す意味がない。
クルマにシフトした事も大きいが、そもそも三江線沿線に人がいない。遠くから人を呼ぶ力も乏しい。今は廃線になるから人が殺到しているが、廃線にならなかったら、遠くから人がたくさん来る事はなかっただろう。

日本は今後、本格的な少子高齢化時代に突入する。鉄道がある所であっても人が居なくなる地方は今でさえも多いが、今後もっと増えれば、連鎖的に鉄道を消して、商店を消して・・・となると集落自体が消滅してしまう。都市に人が集中し、田舎は過疎が進んで誰もいなくなる・・・・・・・・・とても考えたくない。
地域の過疎をなくして、多くの人に住んでもらわないと、そもそも鉄道利用は増えない。
三江線を廃止しないといけない理由は、沿線に人が居ない事。「秘境」とは言い難いが、移動手段として選択されていない事も加わっている。これは全国共通で言える最重要課題である。

・・・私は上記のように考えるが、みなさんはどう考えるだろうか?
三江線を廃止しないといけない理由に対する考え方は、みなさんそれぞれで違うはずだ。この点をコメントで披露されるとありがたい。

次回以降は、三江線に実際に乗車した時の様子や「駅」の様子を改めて書きたいと思う。

三江線最終運転日まで残り51日。
三江線88年の軌跡 (RM LIBRARY222)/ネコ・パブリッシング
¥価格不明
Amazon.co.jp

ありがとう三江線 スペシャルパッケージ 前面展望と紅葉の秋を走ったSL江の川号・キハ120形の.../ビコム株式会社
¥5,400
Amazon.co.jp

ありがとう三江線 スペシャルパッケージ 前面展望と紅葉の秋を走ったSL江の川号・キハ120形の.../ビコム株式会社
¥5,076
Amazon.co.jp

三江線写真集/今井印刷
¥価格不明
Amazon.co.jp

三江線の過去・現在・未来―地域の持続可能性とローカル線の役割 (山陰研究ブックレット)/今井印刷
¥価格不明
Amazon.co.jp