ある日、息子と逃げる -5ページ目

ある日、息子と逃げる

工学博士が怖くて過干渉な妻から息子とともに脱走する物語です。

美術部の部長だった僕は入学手続きに来る新入生を勧誘するために美術部のブースで座っていた。もともと工学部の男中心の美術部では活性化のために女子部員の獲得が至上命題であり、1年前から僕は「美術部女子部員倍増計画」を立ち上げ、前年は女子部員が大幅に増えるという、なかなかの成果を残していた。

 

そして今年も女子をターゲットにした可愛いビラをばら撒き、さらに女子部員を増やそうと張り切っていた。男は女子が入れば自然に集まってくるので、どうでもよかった。

携帯もインターネットもほとんど普及していない当時、理工系学部の男は研究が始まる4年生以降、大学院や企業の開発部門に進めば、女性との出会いは非常に限られてしまうのだ。

 

数ヶ月前に彼女に振られた僕は、この新入生勧誘に大いに期待していた。(仲間内では彼女がいるというだけで羨望とやっかみの対象だったのだが。)

 

そこに方言丸出しで田舎くさいものの、結構美人な新入生が入部する気満々でやってきた。

その子を見た時、どこかで会ったことがあるような懐かしい感じがして、昔から知っている子のような気がした。

少し前に占い師に、「すぐに新しい女性が現れて、その人とは長く付き合うことになります。」と言われていた僕は、「この子が新しい彼女だ!」と思ってしまった。(僕は頭脳明晰で沈着冷静とよく言われていたが、たまにこうした判断を間違えてしまう….)

 
つづく