妄想劇場 完全犯罪? | こもれびの丘

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自然に...ありのままに...

 

 

   第1話 妄想劇場 始まります

   第2話 妄想劇場 美しい人

   第3話 妄想劇場 謎多き隣人

   第4話 妄想劇場 間(ま)って大事

 

 

 

 

   第5話

 

   

   お昼ご飯も済んで、静かな午後のこと

 

 

   4人部屋のドアが開いた

   私のベッドからカーテン越しに足元が見えた

   ニューバランスの黒のスニーカー

   あ!マーくんだ

 

 

   

 

   私のところへ来るのかと思ったら、隣の宇宙人さんのところへ

 

   「いかがですか〜」

   あれ?私への喋り方とちがう

   でも、間違いなくマーくんだ

   「ねぇ、いつまで入院するの?」と宇宙人さんに聞いても分からんだろうに・・・

   マーくんは一方的に話しかけてる

   やさしいね、マーくん

   きっと、宇宙人さんとは打ち解けあってるんだね

   タメグチで声のトーンも明るくて、まるで、おばあちゃんちに遊びに行った孫みたいな雰囲気

   

   それにしても、あの3秒の間はどこ行った?

 

   「ねぇ、何か飲む?」

   備え付けのロッカーや冷蔵庫を開けてるようす

   「なんだ、何にもないじゃない」

   「買ってこようか?」

 

   きっと、宇宙人さんはそれには反応したのだろう

 

 

   

 

   こんな顔で♪

 

   「お茶でいい?他に何か欲しいものある?」

   微かに「ぐっ」という息が漏れたような宇宙人さんの声が聞こえた

   ここで初めて間が空いたと思いきや

   「何これーーーー!かっぱえびせん?」とマーくんの楽しそうな声

 

   ん?どういうこと?私の頭の中がグルグルしだした

   ひょっとして、宇宙人さんは筆談でもしてるの??

 

 

   

 

   絵でも描いちゃってる?

 

   「わかった、かっぱえびせん買ってくるよ」

 

 

   私は、刺繍をしていた手が止まってしまった

   ちょっ、ちょっとそれダメじゃない??

   腎臓内科の食事は、栄養士がその人に適した摂取量を計算して作られている

   (タンパク質・塩分・カリウム・りん、この4つを調整)

   出された食事以外、基本食べちゃいけないんじゃ?

   

   マーくん、院内のコンビニに行ったと思われる

   

   お!戻って来たぞ!

   

   宇宙人さんのところに直行したマーくんは

 

 

   

 

   「はい、かっぱえびせんね、それからイチゴポッキーとルイボスティーも買って来たよ」

 

 

   

 

   「かっぱえびせん、開ける?」

   宇宙人さんの顔が浮かぶ

 

 

   

 

   マーくんは、買って来たものをロッカーや冷蔵庫にしまい

   かっぱえびせんの封を開け

   部屋を去った

   ・・・・・・・・

   再び、病室は4人だけ

   シーンと静まり返った中、やめられないとまらない音だけが響いていた

 

 

   ここでは、毎日個々のゴミ箱のゴミ回収をしてくれる

   パリポリ聞こえなくなった頃、ちょうどいつもの清掃員さんが来た

   ゴミ箱の中のかっぱえびせんの空袋は、見事に消えたのだ

   この間、看護師さんが一度も来なかったのは

   宇宙人さん、あなたは相当ついてるわ!!!

 

 

   

 

   証拠隠滅 完全犯罪?

   

 

   あたしゃ、知〜らねw

   ミカさんも雪女さんも分かってるはず

   だけど、みんな大人です

 

   そうそう、宇宙人さん、本当はお話もできるみたい

   ある時、看護師さんの問いに「ちゃうちゃう」・・って・・違うってこと伝えてたもん

   関西の空からやって来たのかな

 

   あ〜、お顔見たかったな

   私が退院するまでお姿は拝見出来ませんでした

 

  

   それにしても、マーくん!あなたは謎すぎるっ!

   

 

 

 

   次のお話は、ちょっと怖い?

 

   妄想劇場 続きます

 

   chacha