現状を経験しながら許すということはできない。許すとは、あるいは問題にしなくなるのは、現状から動くことによってである。すなわち自分自身への退却。これほど能動的な行動はないのだ。この行動によって、現状が距離をとって客観視され、許すも許さないも問題でなくなる。これが人間に可能な許すという仕方であって、人間はこれ以上のことはけっしてできない。 ぼくの言うゆとりとは、自己への退却という最も能動的な行動のことである。