哲学は死の学びだと云われますが、芸術こそそうなのではないでしょうか。あの世は、外国のようなもの。行ってしまえば、最初の感動は勿論ありますが、ああこんなものか、という気持に落ち着きます。行かないうちは、いろいろな情報で想像したり期待を高まらせたりしますが、現地経験には勿論及びません。そして帰って来ると、夢だったように現実感が残らないのも同じです。様々な芸術は、あの世からインスピレーションをもらって作られる、あの世の疑似経験で、だからあの世に行ってしまった芸術家は、もともとあの世を志向して創作することに生きてきたので、もうこの世に戻る動機を持たないと云われます。

 

行ったことのない外国だと思って楽しみに待つのがよいにではないでしょうか。